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21 生徒交流会事件

今日からジェイクはレオン殿下の所へ行っている。そして、学園では、いつも通りの時間が過ぎて行くと思っていた。

事件はジェイクがいなくなって、2日目に起こった。


私達のクラスは今、生徒同士の交流会と言う名の授業(お茶会)をしている。


外で行っている為、護衛騎士も授業の邪魔にならぬよう離れてはいるが、周りに待機している。


リカルド殿下はクラスメイト達に囲まれ、お茶を飲んでいたが、何故か椅子から立ち上がり、私とクレマのテーブルへやって来た。

私たちは立ち上がり、礼の姿勢をとる。


「楽にしてくれ」


姿勢を直すと、リカルド殿下は続けた。


「こちらへ座っても?」


私とクレマは顔を見合わせてから、視線をリカルド殿下に向ける。


「「どうぞ。」」


椅子に座ったところで、私は遠くから視線を感じた。見ると、何かが光った。


「殿下!伏せて!」


私はリカルド殿下を伏せさせる。

リカルド殿下に向かう矢を、騎士が剣で打ち落とし、騎士達はリカルド殿下を守る体勢をとる。矢は一本のみだったが、念の為テーブルの下へ誘導する。

ライラがこちらへ駆けてきた。


私はテーブルの下から出て、目を見開き、音を聞き、周りの状況を探ることに集中した。


…姿は見えないし、視線も感じない。


「何!?」

「矢よ!」

「何があったの?」

「大丈夫なの!?」


何事か分からなかった離れたテーブルにいた他の生徒たちが、矢をみて騒ぎたてた。


「動かないでください!」


騎士が叫ぶと、静かになる。

クレマは呆然としていた。


「ライラ、クレマを皆の所へ。」

「はい。」

「…プルメリア?」

「大丈夫よ。」


ライラ、クレマは他の生徒たちと合流する。


「ノア、ネーロ。」

「「はい。」」


どこからともなく、姿を表したふたりにリカルド殿下は驚いたようだ。目を丸くしている。


「状況は?」

「殿下に付いていたスターチス様の影が、犯人を追いました。」

「この近くには、他に怪しい者はいません。」

「そうなのね。ありがとう。…騎士様。」


戦闘体勢を解き、他の騎士に指示を出し、私には頭を下げた。


「殿下、建物の中へ入りましょう。情報、感謝いたします。落ち着きましたら、改めてお礼に伺います。」

「オパール嬢、失礼する。」

「はい。お気をつけて。」

「皆、すまない。迷惑をかけた。」


リカルド殿下は、他の生徒たちにも声をかけてから、その場を離れた。


先生もすぐに、他の生徒たちも部屋に戻るよう促した。


「なぜ、学園に入り込めたのかしら。お兄様の影達も警戒していたのに。…内部に手引をしたものが?…まさかね。」


そのすぐ後、自害した状態の男性が、お兄様の影により見つかった。

この男性の身元は、即刻判明した。学園の用務員で、長期休暇の間に採用した者だそうだ。


この話はすぐに陛下、レオン殿下、関係者に伝えられた。


その日のうちに、レオン殿下、ジェイク、お兄様が学園を訪れた。


一番先に着いたのは、お兄様だった。

その後少しして、レオン殿下とジェイクも到着した様だった。

3人にはまだ会ってはいないが、ノアが教えてくれた。


少しして、私が部屋で過ごしていると、呼び出しがかかったので、準備をして、応接室に向かった。


トントントン


騎士により、ドアが開かれる。


部屋の中には、レオン殿下、お兄様、ひとりの騎士、そしてジェイクがいる。

私はジェイクから視線が外せなくなり、くっつきたい気持ちになる。


ジェイクの横に行きたいなぁ…。


ジッと見ていると、レオン殿下から声をかけられる。


「ゴホン。…プルメリア嬢。呼び出してすまないね。」

「レオン殿下。…失礼致しました。お久しぶりでございます。」

「ここには、私達しかいないから改まることはない。」


改めて部屋の中を見ると、学園の者や侍従、侍女等の姿はなかった。


「此度は協力ありがとう。」

「あれは、協力というのでしょうか…」

「うん。グレイ、話があったのだろう?」


レオン殿下は、騎士に話を振った。部屋にいた騎士はグレイという名の様だ。


「はい。先程はオパール様のお陰で、早い対応ができました。ありがとうございました。」

「いえ、あれは…えーとグレイ様とお呼びしても?」

「俺、平民なので様はちょっと…。」

「では、グレイさん?」

「えーと…。」


グレイさんは周りを見た。

ジェイクはそれを見て、少し笑って言った。


「ククッ。グレイさんでいいと思うぞ。」


何かおかしい?

んー、とりあえずジェイクが良いというのなら良いのかしら?


悩んで、首を傾げていると、


「グレイさんで良いです。」


グレイさんが私から目線をそらしながら、早口で言った。


「そうですか?それなら…。あれは、グレイさんが矢を打ち落としてくれたお陰で怪我人が出なかったのですよ?お礼はいりません。」

「しかし、オパール様の声で早く気づけました。それに、その後も情報を頂きましたし。」

「…では、今回は私達がいて切り抜けられたと言うことで。」

「だそうだ。この話はこれで終わりだな。さて今後の事を、プルメリア嬢にも話しておこうと思ってな。」


今後の説明を受けると、お兄様が言った。


「リア、例の件でリカルド殿下に近づかないよう話したが、そうは言っていられなくなった。必要以上に近づく事はないが、気にかけておいてくれ。」

「そもそも同じクラスですから、近づかないというのは無理でしたし、必要以上に近づかなくて良いのであれば、今とそう変わりませんね。」

「…うん、ごめん。そうだね。それから、緊急事態にはリアの指示で、私の影も動かせる様にしておくからね。」

「え?私の指示でですか?」

「うん。リアなら大丈夫でしょ?」

「お兄様…。私、指示するより自分でうご、」

「「それは、駄目だ!」」


私の話の途中で、お兄様とジェイクの声が揃う。


「…はい。」

「では、そういうことで宜しく頼むよ。私とスターチスは帰るから、ジェイクはプルメリア嬢を送った後に帰ること。」

「はい。」

「お心遣い感謝します。」


レオン殿下にお礼を言った後、私とジェイクは、顔を見合わせ微笑みあった。


私はジェイクに送られて、寮に向かう。少し離れてライラが付いてくる。近くにはノアとネーロもいるのだろう。


「もう少し、良いか?」

「もちろんです。」


ジェイクからの誘いに嬉しくなる。

そして、途中のベンチに座った。


「大変だったな。リアも怪我がなくて良かった。」

「矢は一本でしたしね。…あの状況で狙うってどういうつもりだったのでしょうね。」

「機会がなく、焦ったのか。様子見か。警告か。犯人ももういないし、分からんな。」

「…本当にあの人が犯人なのかしら。」

「それは、さっきの話でも出ていたな。…何にしても気をつけるに越したことはない。明日も予定通りレオン殿下の護衛だが、大丈夫か?」

「ん?大丈夫ですよ?この状況で予定通りという事は、グレイさんは優秀な人なのでしょう?」

「何故、グレイ?」

「だって、ジェイクが信頼し認めていないと、副隊長に任命しないですよね?」

「副隊長だと話したか?」

「いいえ。見ていれば分かります。」

「そうか。…なんか寂しいな。」

「寂しい?」

「俺も頼りにされたい…。」


垂れた犬の耳と、しっぽが見える!

ジェイク、可愛い!!


「頼りにしてますよ。ジェイクがそばにいてくれた方が、安心なのは当たり前です。でも、仕事の邪魔になるような事は、言いたくありませんし、今回狙われているのは私ではありませんから。」

「それでも、また巻き込まれるかもしれないだろう?」


まあ、そうよね。今回も巻き込まれたし、心配にもなるか…。

ん?


「ジェイク。今日も心配してくれたのですか?」

「当たり前だろう。レオン殿下の護衛に集中するのに苦労した。こんな事は初めてだ。」

「…レオン殿下には悪いですが、ジェイクの心の中を乱すことができるのが嬉しいです。」

「嬉しい?」

「はい。私を愛してくれていると分かるから。でも…、」


仕事に支障をきたすのはいけないこと。

しかし、嬉しいと思ってしまう。


私、駄目ね…。


「でも?」

「仕事に集中してくださいね!」

「…気をつける。」


私は、シュンとしたジェイクの腕に手を乗せた。


「私は、大丈夫ですよ。何があっても必ず無事にジェイクの所に戻りますから。だから、ジェイクもしっかりお仕事して、私の元に帰ってきてくださいね。」

「…戻るに、帰ってくる、か。…ククッ。気が早くないか?」

「?」


おかしい事を言っただろうか?

なんか今日はこんな感じばかりのような気が…。


私が不思議そうにしていると、ジェイクが教えてくれる。


「夫婦の約束のようだと思ったんだ。」

「!」


確かに、戻るとか帰るとか、一緒に住んでそうな言い方になってる…?


顔がカァーと赤くなってくる。


「すみません!そこまで考えていませんでした。私は大丈夫だから、心配せず仕事に集中してと言いたかっただけで!」


焦って早口になってしまう。


「分かっている。…仕事はしっかりする。しかし、心配はさせてくれ。リアはひとりしかいないんだ。」

「ジェイク…。」


私達は見つめ合う。

そして、顔が近づき…


「ゴホン。…プルメリア様、失礼致します。」

「「!」」


寸前の所で、声をかけられる。


「ここは広場です。それ以上は…。」

「そ、そうよね。」


ここが何処か忘れていたわ。…恥ずかしい。


「…リア。そろそろ、行こうか?」


私達は立ち上がり、再度寮に向かって歩いた。




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