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3 父との会話

食堂にいくと、お父様とお兄様は既に席に着いていた。


「お待たせいたしました、ウェル様。おはよう、チス。」

「あぁ、おはよう。」

「お母様、おはようございます。リア、今日も可愛いね。」


お父様は無表情で返しているが、お兄様(愛称、チス)は、可愛いと褒めてくれる。

兄妹仲は良いと思う。勉強が忙しく、相手をしてくれる事は少ないが、時間が空くと本を読んだりお話をしたりしてくれる。


「おはようございます。お父様、お兄様。お母様がドレスを選んでくれました。」

「そうみたいだね。リアは何を着ても似合うから、選び放題だね。」


おっと、甘い!お兄様も私に甘いのだ。しかし、お母様と違って、ダメな事はダメと叱ってくれる。前世の記憶があっても、この世界の常識は分からない。ドレスを着飾る事は貴族の仕事だ、と話してくれたのもお兄様だ。

ドレスを作るのにたくさんの人手がいる。そう、仕事が…就職口ができるのだ。


お兄様、8歳なのに聡明なのよ。


「そうなのよ!だからね!」

「そろそろ食事にしないか。」

「あっ、ウェル様すみません。つい…」


無表情のお父様の一声で食事が運ばれてくる。


「今日も全てに感謝して、「「「いただきます。」」」」


これは、私が思わず言ってしまったのを聞いていたお父様が採用した。本来は何も言わず、家長が手を付けたら、みんなも食べ始める。

どこで覚えたか聞かれたけど、夢で見たと話しておいた。色んな動植物が出てきた夢だったと。その命を頂くのだと。

お父様は、納得がいっていなかったと思うけれど、その後何も言われなかったから、そのままにしておいた。


食事が始まり、少しするとお父様が口を開いた。


「今日は、昼過ぎに帰る。」

「「!!」」


お兄様も私もびっくりして、目を見開きお父様を見た。


「まぁ!仕事は大丈夫ですの?」

「区切りがついたからな。問題ない。」

「昼食はどうなさいますか?」

「家で食べる。」

「分かりました。一緒に頂ける事を楽しみにしておりますわ。」


食事が終わり、お父様は仕事のために出かけていった。


「びっくりだね。お父様が昼で帰ってくるなんて、ここ数年無かったよ。」

「私が記憶している限り、初めてです。」


これはお父様と、ゆっくり話すチャンス!

でも…タイミングが良すぎるのは気のせいかしら…。


そして、お父様は約束通り昼過ぎに帰宅した。


「ウェル様、おかえりなさい。お仕事お疲れ様でした。」

「あぁ、ただいま。」

「今日の昼食はウェル様の好物ですよ。」

「それは、楽しみだ。」

「お父様、おかえりなさい。」

「おかえりなさい。」


みんなで出迎える。お父様は顔は無表情だが、声は穏やかだ。


昼食を食べ終えると、何故か私だけ執務室に呼ばれた。


トントントン


「プルメリアです。」

「入りなさい。」

「失礼します。」


少し緊張してドアを開け中に入る。


「座りなさい。」

「はい。」

「…」

「…」


いっこうに話が始まらない。


「あの…お父様。お話とは?」

「話があるのは、プルメリアの方ではないのか?」

「え?」

「何か気にしていたと耳に入ったが。」

「もしかして、そのために今日早く帰ってくださったのですか?お仕事は本当に大丈夫なのですか?」


ジューン…良いといったのに…気を利かせてくれたのね。


「ちょうど、区切りがついたのは本当だ。それに、いつも余裕を持って仕事をしているから問題ない。…それで?」

「私付きの侍女たちの事です。手当をつけてくださっているそうで、お礼を言いたかったのです。」

「何だそんな事か、子どもが気にする事ではない。彼女たちを雇っているのは私だからな。」

「それでも、お礼を言いたかったのです。それと…お父様ともお話をしたかったの」


声が段々小さくなってしまう。


「ゔっ…」


お父様は、唸って顔に手をやり、口元を隠した。


「お父様?」

「いや、すまん。…話だな、何を話そうか。」

「…お仕事、忙しそうですね。」

「そうだな。ここの所、周りの国が物騒でな。陛下に言われて動く事も多くて。」

「陛下?お父様は何をなさっているのですか?」

「うーん…なんでも屋みたいなものかな。詳しくは言えなくてすまんな。」

「いえ、陛下からのお話を言えなくて当たり前です。しかしお父様、大変なのは分かりましたが、お休みも取れないくらいなのですか?」

「休みは取っているぞ。」

「でも、お休みにも仕事をしていると聞きました。」

「領地の事の確認なんかもあるから、それをしているんだ。」

「それはお休みとは言いません!」

「…」

「身体を壊さないか心配です。」

「そうか…心配してくれてありがとう。これからは少し気をつけてみるよ。」

「はい。」

「ところで、プルメリア。」

「はい。」

「私もリアと呼んでいいかな?」

「??お父様は私のお父様なのだから、許可など必要ないと思いますが??」

「…嫌われたくなくてな。」

「え?」


聞き間違いかしら…


「お父様、私を愛称呼びすると嫌われると思っていたのですか?」

「仕事で忙しくしていて、交流も少ないのに呼ぶタイミングも分からなかったのだ。」

「もしかして、お兄様をスターチス呼びなのも?」

「…そうだ。」


ヘタレか!!!


「お兄様もお呼びしましょう!」

「え?」

「私達親子には会話が足りません!」


話を聞いたロバートによって、お兄様はすぐに連れてこられた。

お兄様は私の隣に座り、小声で話しかけてきた。


「なんで呼ばれたんだ?」

「今から話があると思います。」

「…」

「…」

「お父様、お兄様にも!」

「…スターチス、お前をチスと呼んでもいいか?」

「………は?」

「駄目ならいいのだ。今まで通りスターチスと呼ぶことにする。」

「いえ、失礼しました。別にいいのですが、どうしたのですか急に。」

「呼ぶタイミングが分からなかったそうです。私も先程、リア呼びになりました。」

「………そう。」


そこから、私達は色んな話をした。最近の出来事、勉強や剣術の事、本の事。

お父様は、無表情というか感情が顔に出にくいだけで、優しく感情豊かだという事が分かった。


やっぱり話してみないと分からないね!


時間が経つのも忘れ話していると、話し声を聞いたお母様がやってきた。


「私は除け者ですか!?大切な話をしているのかと思ったら…私も混ぜてくださいませ!」


この日は、会話が途切れる事が無く、誰かしらが何かしらの話をしていた。



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