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19 隣国第3王子

ついに、長期休暇が終わり、最終学年だ。

今年は私の社交界デビューもあるし、忙しくなる。

隣国の王子の留学もあるが、私はなるべく近づかないように言われている。


「あれから、ジェイク様とは会えなかったわね…。王子を迎え入れる準備で忙しいのでしょうけど、寂しいわ。」

「また、すぐ会いに来てくださいますよ。」

「そうね。仕事で学園に来る機会も増えると言うし、遠くからでも姿が拝見できるのを楽しみにしましょう。」

「遠くからでございますか?」

「仕事の邪魔をする訳にはいかないし、隣国の王子に近づく訳にもいかないからね。」

「そうでございましたね。」





学園が始まり、1ヶ月程経った

隣国第3王子リカルド様の留学初日…


「今日よね?隣国の第3王子リカルド様がいらっしゃるの。」

「クレマは歓迎会に出たのでしたっけ?」

「えぇ。誕生日の直後だったから、社交界デビューが歓迎会になったわ。」

「ジェイク様は格好良かった?女の方に言い寄られたりはしていなかった?私はまだ行けないから、気になるのよ…。」

「そこ?普通はリカルド殿下の話ではなくて?」

「うーん、ジェイク様のことの方が気になるわ。」

「はいはい。…あ、噂をすれば。」


クレマが見ている方に視線を向けると、遠くにジェイク様が見える。

ジェイク様の他にも数人の騎士がおり、おそらくはリカルド殿下の護衛なのだろう。


「クレマ、私は席を外すわ。」

「婚約者に挨拶?」

「違うの。…お花を摘みに?」

「…早く行ってらっしゃい。」

「行ってきます。」


私はその場から離れた。


「ここまで来れば大丈夫ね。…ライラ、見た?騎士服のジェイク様、やっぱり格好良かった。久しぶりの騎士服だったのに…。もっと見ていたかったわ。」

「プルメリア様…。」


ライラが呆れているのが声で分かる。


「それにしても、こちらの方向に来そうだったから逃げたけど。ここまでする必要あるかしら。」

「念には念を、です。」

「お父様もお兄様も考え過ぎではないかしら。」


そう、これはふたりから言われていた、近づかないようにという事に沿った行動だった。


「考え過ぎではないと思います。プルメリア様は美しいのですから、見初められでもしたら…。」

「身内の欲目って知っている?」


自分で言うのもなんだが、確かに今世の私は美女に育った。しかし、周りもそれ以上に、顔が整っているのだ。


「まぁ、心配をかけたくないし、言うとおりにするわ。ただ…」

「ただ?」

「ジェイク様の騎士姿を近くで見れない事が、辛い…。」

「…」


そこにネーロが姿を表した。


「プルメリア様、もうお戻りになっても安全です。」

「安全って…。ありがとう、ネーロ。ライラ、クレマの所へ戻りましょう。」

「はい。」


今、ネーロとノアはリカルド殿下の動向を監視しており、私が気付かず近づいたりしないよう報告してくれることになっている。


「クレマ、お待たせ。」

「プルメリア、そろそろ時間よ。」

「ええ。ライラ、行ってくるわね。」

「行ってらっしゃいませ。」


侍従侍女は、授業中いつも控室で待つことになっている。


なんか大切な事を忘れているような…。


それは、教室に行って思い出した。


そうよ。リカルド殿下、同じクラスじゃないの…。


クラスは、身分によって分けられていた。

席は自由の為、目立たないよう人影に隠れて座る。


皆が席についた頃、リカルド殿下は先生に連れられてやって来た。


「今日から一緒に学園生活を送るリカルド殿下です。」

「リカルドです。よろしく。」

「殿下。席は自由なので、空いているところへ座ってください。」

「はい。分かりました。」


休憩時間に入ると、各々リカルド殿下へ挨拶に行く姿が見える。


挨拶に行かなくてはならないわよね…。

サクッと、終わらせましょう。


人が減るのを待つ。しかし、一向に減る気配はない。というよりも、増えている。


「挨拶しなくて良いかしら?」

「それはまずいでしょう。婚約者が護衛責任者なんだし。」

「…そうよね。」

「一緒に行きましょうか。」

「ええ、ありがとう。」


クレマが先に向かい、その後を付いていく形になったが、人が多くリカルド殿下へ近づく事は出来なかった。


「…無理ね。また次の機会にしましょう。」

「そうしましょう。」


その機会は、帰りにやってきた。

帰る殿下が私達の横を通ろうとした隙をみて、声をかける。


「リカルド殿下。」

「ん?君は確か歓迎会の時にいたかな?」

「はい。クレマ·アメシストでございます。同じクラスになれた事嬉しく思います。」

「ああ、よろしく頼む。…そちらは、初めてかな?」

「はい。初めてお目にかかります。オパール家長女プルメリアでございます。」

「よろしく頼む。」

「こちらこそよろしくお願い致します。」


私とクレマが頭を下げている間に、リカルド殿下は教室を出ていった。



人が少なくなり私達も教室を出ると、ライラとクレマの侍女マルタが待っていた。


「お待たせ。」

「プルメリア様、こちらエメラルド様からのお手紙です。」

「まぁ、ジェイク様はなんて?」

「プルメリア様のご様子を聞かれました。」

「そう。…会いたいけれど、難しいわね。」

「何故?」

「仕事中だもの。殿下の授業がある間は、休憩も取れるそうだけれど…。」

「殿下の授業があるときは、私達も授業だものね。」

「そう言う事。」


私は部屋に帰り、すぐに手紙を読んだ。

そこには、調子を伺う文面と近況が書かれている。

最後は『あの日のリアを胸に頑張るよ。』と締めくくられていた。


読みながら、顔が赤くなる。


「ジェイク様…。ライラ、ジェイク様は明日はこちらかしら?何か言っていた?」

「いえ。」

「そう。どうしようかしら…。うーん…。そうだ!ライラに手紙を預けるから、いらしたら渡して。いらっしゃらなかったら、私に返してほしいの。手間をかけてしまうけれど、良いかしら。」

「それくらい手間でも何でもありません。」

「ありがとう。」


ジェイク様は、リカルド殿下の護衛責任者ではあるが、毎日付いているわけではない。

なんでも、レオン殿下とリカルド殿下の護衛兼任なのだそうだ。


「早速、返事を書くわ。それからこれを…。」

「それは、授業で作ったものですか?」

「そうよ。刺繍の授業で作ったの。中々の出来でしょ?」


学園では刺繍の授業もあり、以前の授業でハンカチに刺繍を施していた。題材は自由だったので、我が家とエメラルド家の家紋を選んだのだ。


「渡すタイミングが無くて、どうしようか考えていたのよね。」

「遠乗りで渡さなかったのですか?」

「お弁当作りに夢中になっていたし、バタバタしていて…。」

「忘れていたんですね。」

「…はい。」

「お預かり致します。」

「ちょっと待って。袋に入れるわ。手紙もすぐに書くから。」

「急がなくても、よろしいのでは…?」

「…そうだったわね。」


そして、私は手紙を書き、ハンカチをラッピングした。ラッピングといっても、小袋に入れただけだが…。


「はい。お願い。」

「改めて、お預かり致します。」

「喜んでくれるかしら…。」

「もちろんです。プルメリア様からのプレゼントを、喜ばないはずございません。」

「そうだと良いのだけれど。」


私は机にあるダリアの栞に視線を落とした。

それを見ると、心が穏やかになる。


プルメリアは小さく微笑んだ。




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