オパール、エメラルド両家side
-----オパール家 ウェルク-----
ある日、家で仕事をしていると、人の気配がした。
「誰だ?」
「失礼します。プルメリア様からお手紙を預かってまいりました。」
「お前はリアに付いている影だな?」
「はい。」
「まだ、学園初日だと思うのだが、何かあったのか?」
手紙を受け取り、目を通す。
「……………はああああああああ!?」
屋敷中に声が響き渡る。
「ウェル様、どうなさったの?」
「旦那様、どうなさいましたか?」
声を聞いた妻のミディアと、ロバートが慌ててやってきた。
「これを見てみてくれ!」
『お父様、急のお手紙申し訳ありません。実は本日、ライアン殿下にお会いしました。その際に、私が婚約者だと言われました。
さらに、仲良くしてくださる方達にも質問されたのです。
私はジェイク様と婚約致しましたよね?
質問してくださった方には訂正しましたが、ライアン殿下はこちらの話を聞いてもくれません。取り急ぎ連絡を。
PS.噂の出処や、裏側を調べてもらっています。学園の外はどうなっているかも知りたいのですが、助けて頂けますか?』
「ウェル様、どういう事ですの?」
「分からない。リアの、状況を詳しく話せるか?」
「はい。」
リアの影は見たことすべてを話してくれた。
「こちらも影たちを動かす。それから、ロバート。私は返事を書いたら、ジェイソンの所へ行く。騎士団に先触れを。」
「畏まりました。」
「謁見願いも出す。」
「ではそのように、ご用意します。」
ロバートは部屋を出て行った。
「ウェル様。」
「心配しないで、任せてくれ。」
ミディアを抱きしめる。その後、彼女は部屋に戻っていった。
クソ殿下め!
私は、急いで手紙を書く。
「影。誰かいるか。」
「はい。」
「リアの影と連携出来るようにしておいてくれ。早急に今回の事を調べてほしい。学園内だけならまだ良いのだが、そんな事はないだろう。」
「畏まりました。」
「リアの。そういう事だ。よろしく頼む。」
そう言い、リアの影に手紙を渡した。
「はい。尽力致します。」
そう言い残し、影は消えた。
「さて、忙しくなるぞ。」
「私共もすぐに調査に入ります。」
「あぁ、頼んだ。」
私の影も消える。その後すぐにロバートが部屋に戻ってきて出発の準備をした。
「さあ、行こう。」
そうして、騎士団に向かった。
-----騎士団 ジェイソン-----
「団長!オパール侯爵がいらっしゃるそうです!」
「ん?そうか。分かった。」
随分、急だな。何かあったか……。
先触れから間もなく、ウェルはやって来た。
「どうした?」
「実は…」
ウェルから話を聞いて驚いた。
「は?」
「ですから、」
「それは、分かってんだよ!何でそんなことになってんだ?」
「調べてます。」
「そうか、そうだよな。……ジェイクにも伝えておくか。」
「そうですね。耳には入れておいたほうがいいでしょう。今、騎士団に?」
「いや、アイツはレオン殿下の所だ。こちらに来るのは休憩時間だけだが…。」
「……そうですか。」
「こちらに来たら、俺のところに来るよう言伝だけでもしておく。」
俺は部下を呼び、言伝を頼んだ。
「さてと、陛下のところへ行くんだろ?」
「……何故。」
「ライアン殿下の話は通しておかないと行けないだろ。」
「その通りです。謁見願いも提出済みです。」
「返事は?」
「まだです。」
「俺も行くぞ。」
「はい?」
「可愛いウチの嫁の事だ。ひと脅ししとかないと。」
「では、一緒に。」
トントントントン
ノックがされる。
「空いてる。」
「失礼します。こちらにオパール侯爵がいらっしゃるとお聞きしました。」
「あぁ、いるぞ。」
「謁見の許可がおりました。」
「だとよ。」
「それでは、行きましょうかね。」
俺は部下を呼び、席を外すことを伝え、ウェルと一緒に謁見室へと向かった。
その途中、ジェイクに会ったので、簡単に事情説明をした。すると、顔が険しくなり自分も一緒にと言い出した。
流石にそれは難しいので、宥めて止めさせた。
「分かった。しかし、後できちんと教えてくれ。」
「もちろんだ。」
ジェイクを残し、謁見室まで歩くと、ドアの前にいる騎士が陛下へ声をかける。
「エメラルド騎士団長とオパール侯爵がいらっしゃいました!」
そして、ドアを開けた。
謁見室は、公のときに使う広間よりも小さい部屋だ。それでも、一番奥の陛下までは30メートルほどあるだろうか。
「失礼致します。」
「近くへ。」
「はい。」
椅子に座った陛下から声がかかる。陛下のななめ後方には宰相の姿も見えた。
「ジェイソンもいたのか。二人揃ってどうしたのだ?大事か?」
「ライアン殿下の事で、お話がございます。」
「!!何かあったのか?」
ウェルクが口を開くと、陛下の顔色が変わる。
「ライアン殿下は本日より復学されました。」
「ああ。」
思っていた答えと違うのだろう。不思議そうな顔に変わった。
ウチの陛下は表情が変わり過ぎではないか?
まぁ、陛下とここにいる3人は側近として昔なじみなので、気を抜いているのだろうが…。
「謹慎中は何をされていたのですか?」
「勉学に励んでいたと思うが?………場所を変えるか。お前たち、今から移動するが、こ奴らと一緒だ。付いてこんでいい。」
陛下は護衛に声をかけ、自分の執務室に移動した。
「さてと、ここなら気にせず話せる。遠回しに言わずにはっきり言え。何があった?」
「それでは遠慮なく…。今日、リアから手紙が来ました。これがその手紙です。」
「見ていいのか?」
「どうぞ。」
陛下が手紙を開き、それを覗き込む形で宰相も手紙を読む。
すると、ふたりは青ざめた。
「これは…。」
「私は何もしていないぞ!知らないことだ!」
「言いたいことはそれだけではないのですよ、陛下。我が家の使用人達は優秀でしてね。」
ウェルクの背後に黒い何かがあるように見える。
おお!相当怒っているな。
ゴクリ
陛下はウェルクの迫力に息を呑む。
どちらが国の頭だか……。
「オパール家の皆が優秀なのは、知っている…。」
「その手紙を持ってきた影が言うのです。ライアン殿下がリアの話も聞かず、『野蛮だとか気にするな。その見た目なら野蛮なことには目を瞑る。公の場で醜態を晒すような事はするなよ。』と言ってのけたと。」
宰相は目を見開き驚いている。
「なんてことを…。」
陛下は頭を抱えた。
「陛下。貴方は殿下の謹慎中、何を教えていたのですか?」
「反省と、上に立つ者としての心構えを話したつもりだったが、理解していなかったようだ…。」
「つもりでは困るのですよ!人の可愛い娘を野蛮だ野蛮だと!醜態?どの口が言う!うちの娘は作法も完璧だ!」
「す、すまん。再教育する!」
「もちろんです。……そうだ!再教育、我が家で請け負いましょうか。そうしましょう。」
ウェルクはいい考えだとばかりに手を叩いた。
「い、いや、それはどうだろう。なぁ、宰相。」
陛下は震えて宰相に助けを求める。
「無表情で仮面の侯爵と言われたウェルを変えた娘に、手を出したライアン殿下が悪いのでは?」
「宰相!?」
助けは却下された。
「団長!」
「陛下、ウェルの手前黙っていますが、俺も頭にきてますよ。うちの可愛い嫁なんですから。」
「本当に、すまん。」
肩を落とした陛下を見て、ウェルクが話を切り替える。
「はぁ。とりあえずライアン殿下の抗議はここまでとして、噂の出処です。」
「許してくれるのか!」
「許しませんよ!」
「陛下、話を蒸し返すのはやめたほうが。」
「国民がこの姿を見たら、誰が国を動かしているのか疑問になるな。」
シーン
やべ。口が滑った。
「………出来損ないでごめん。」
「団長!こうなった陛下は面倒くさいの知っているでしょう。どうするんですか!」
陛下は周りの意見にも耳を傾けるし、決断力もある。しかし、一度落ち込むとマイナス思考になるのが欠点だ。
「こうしている間にも可愛いリアが心を痛めているのですよ。いい加減にしてください。」
またウェルクの後ろから黒い物が出てきた…ように見える。
「「「すみません。」」」
「それでは、噂の出処ですが、考えられるのは…」
「それなんだが、ジェイクとプルメリアの婚約話の時、ドアの近くに誰か居たよな?」
「ええ、気配がありましたね。あの時は二人の婚約を言いふらして貰おうと放っておきましたが。」
「あの時、影をつけていなかったか?」
外に漏らしたくない話の時は、オパール家の影が周りに配置され、見張る。
「それは、記憶持ちの話のときだけですね。他の話のときには、敢えて付けませんでした。」
「そうか。気配があったなら、教えてほしかったな。な、宰相。」
「そうですね。私と陛下には二人のような特殊能力はございませんから…。」
「悪い。殺気とかでは無かったから何も言わなかった。」
「で?その誰かがどうしたのですか?」
「そいつらが言いふらしたのでは無いか?」
「しかし、ここで話していたのはお前たちの子の話だったぞ?」
「………」
ウェルクは何も言わずに考えている。そして、少しの間の後、口を開いた。
「………考えようによっては無くはない。」
「そうですね。中途半端に話を聞いたのだとすれば…。」
宰相も思い至ったようだ。
「その話を、ライアン殿下の耳に入れた者は…。」
「謹慎中、ライアンの部屋には教師しか出入りを許可していない。」
「教師ですか。…調べますよ?」
「ああ。」
こうして、この場は終わった。




