2 幼児
「おぎゃー!!! «まぶしい!!!» 」
一瞬強い光を感じ、思わず声を出す。
ん?おぎゃー??……そうか、赤ちゃん…まだ話せないか…
「◇♡◇■♢○!」
「▲◀♤♢♢!!」
「♡❖☆♧♡♢△◇!!!」
何か話してるけど、分からない。
…不安になってきたけど、しょうがないか。こちらで生きると決めたからにはやるしかない!まず、言葉の理解から頑張ろう!!!
◇
それから…
生まれて3年が過ぎようとしている。
私はここで生活をしていく上で、困らない語力を身に付けた。そして、私の家族の事も分かってきた。
まず、私の名前はプルメリア·オパール。家族は父ウェルク、母ミディア、兄スターチス。
お父様は銀の髪に青い目。忙しそうで、朝の食事と見送りの時に顔を合わせる程度。
お母様は金の髪に緑の目。私に甘々で、怖くなるくらい。前世の記憶が無かったら、ダメ人間まっしぐらな気がする…。流れにまかせてしまっては駄目絶対!
お兄様は5歳上で銀の髪に緑の目。勉強も頑張っているけれど、剣の訓練のほうが好きみたい。
ちなみに私は金の髪に青い目。
そして、なんと!みんな顔が整っています!
前世では、平凡顔のぽっちゃり主婦だったから、体型維持は意識しよっと!
前世でも思ってた。小さい頃に今の記憶があったら、こんなにデブらなかったのではと…。運動は苦手だったけど、嫌いでは無かったんだよね。
侯爵家なので使用人もたくさんいるが、私には主に、お母様と同年代のジューンと、10代のメイ、カルアの3人が付いてくれている。
他と比べると少ないらしく、増やそうという母からの話もあるが断り続けている。前世の記憶がある私には十分過ぎる人数だからだ。
人がたくさんいても落ち着かないし…。
3人だと仕事の負担が大きいので、そこは心配したが、本人たちから了承を得ており、給金も少しばかり手当が付いているらしい。
これはメイから聞いた話。
「ねぇ、メイ。私のわがままで、少ない人数で仕事を回してもらっているけれど、負担になってない?大丈夫かしら?」
「大丈夫ですよ。プルメリア様は、3歳なのに自分の事はほとんど自分でなさってしまいますし。ほんとに3歳か疑うくらいです。」
「………」
「それに内緒ですけど、手当も出して頂いております。」
「そう、良かった。それはお父様から?」
「はい。以前、執務室に私達3人が呼ばれた際に、旦那様がお話しくださいました。」
お父様ありがとう!
ほとんど交流がないから、どういう人かいまいち分からず、不安だったけど。ナイスフォロー!
無理やり人数を増やす事もないし、裏でフォローもしてくださる。できる男!!
今度、きちんと話をしてみよう!
◇
私はお父様と話をするべく、帰宅を待った。しかし、挑戦したすべての日で、眠気に負けてしまった。
私はまだ3歳…年齢には勝てないわ…
よし!休日を狙おう!!…あれ…でも、お父様が休んでいる日って…。
「ジューン、お父様のお休みの日ってあるのかしら?」
「旦那様は休日もお仕事されていますよ。何かございましたら、ロバートに言伝を頼みますか?」
「それは休日とは言わないのでは…。」
「そうでございますね。旦那様も、もう少し身体を労って頂けると良いのですが。」
ジューンはお父様が結婚する前から、うちで 働いてくれており、ロバートと結婚している。ロバートは、うちの使用人の中で執事長を務めており、非常時にはお父様の指示なく、判断·行動する事も許可されている。お父様の腹心の部下と言う感じだ。
「ロバートには伝えなくていいわ。重要な事柄ではないもの。」
「分かりました。何かありましたらすぐに仰ってくださいね。」
「ありがとう。」
トントントン
朝の支度をしながらそんな話をしていると、ノックがされお母様が入ってきた。
「おはよう、リア!声がしたから、いると思って。食堂まで一緒に行こうかと声をかけたのよ。今日も可愛いわね。でも、お洋服はもっとリボンやフリルが多くても良いのではないかしら。私が選んであげるわ。ビオラ、クローゼットを開けて。」
ビオラは、お母様付きで侍女長でもある。
ちなみに、リアは私の愛称だ。
「プルメリア様、よろしいですか?」
「良いわよね?もっと、可愛くなるわよ!」
お母様はこちらの話を聞かず、続けていく。悪気はないと分かっているのだが、こういう所は苦手だ。
「どうぞ。」
こういう時、何を言っても無駄なのはこの3年で分かったので、ため息をつきそうになりながら了承する。
ビオラがクローゼットのドアを開けて、お母様が中に入り、周りを見回す。
「これが良いわ!」
選んだのは、ピンクのフリフリ。某お人形さんが着ているような物。
あれは、好みじゃなくて奥に入れておいてもらったのに…目ざとい…
私好みのシンプル寄りなドレスには、目をくれず奥から引っ張り出させるなんて……
シンプルと言っても、数少ないがリボンやフリルが付いている。だから、シンプル寄り。
まだ3歳だし、可愛さは求めるさ!でも、やり過ぎは好みじゃないの!
「もう!可愛い服が奥になっているわ。手前にして。ジューンよろしくね。それから…これは処分して、新しい物を買いましょうね!」
お母様が示したのは、私の好みの服たち。
なんてこった!!
「お母様!!!」
大きめの声で呼ぶと、お母様は私の方を見た。
「それは、今までお母様が選んだドレス(と一緒に持ってきてもらった)、大切な物ですよ。…忘れてしまったのですか?」
目に涙をため、上目遣いでお母様に顔を向ける。
もちろん、演技です!!!
ドレスは仕立て屋さんにお願いして、お母様が選んだものと一緒に、私好みの物も用意してもらいました。
もったいないと思いますが、一度作る事を断ったら着飾る事も貴族の仕事だと諭されました。だからって、できる限り無駄遣いはしません。着ない服はある程度たまったら、寄付しています。
「リア、泣かないで。そうよね。そのドレス、リボンもフリルも付いているし、可愛いわよね。何を着ても似合うわね!」
暴走する事はあるけれど、結局は私に甘いのよね。
「さあ、早く用意をして。朝ごはんを頂きに行きましょうか。」
「はい。」
私はお母様の後ろをついていった。