ジェイクside
プルメリアから求婚の返事をもらった日。
「親父。オパール嬢との婚約話を進めてくれ。」
「お?返事をもらえたのか?」
「ああ。良い返事を貰えた。」
「そうか。良かった、良かった。さてと、ウェルと話して、陛下のところか。」
「よろしく頼む。」
「任せとけ。」
親父は色々準備をして、後日出かけていった。
帰宅後…
「ただいま。」
「おかえり、どうだった?」
「婚約の件だが言質をとった。詳しく話すから、部屋にこい。」
「ああ。」
俺は親父と執務室に移動した。
「陛下は少し難色を示したが、納得させた。まあ、駄目な理由があったとしても、うちとオパール家を同時に敵に回すことは、適切では無いしな。」
「そうか。」
「……記憶持ちだそうだな。」
「……あぁ。」
「陛下は、そこが引っかかるようだな。うちが力を持ちすぎるのでは無いかと。」
「……」
「かと言って、ライアン殿下の婚約者にするにはいろんな意味で不安が大きい。本当はレオン殿下の伴侶にするのが一番良いが、今更婚約者を変えたら大きな問題になるからな。結果、王家の血筋である我が家ならと落ち着いた。」
「そうか。良かった。」
「あの娘は強くなったが、色々危うい。……守れよ。」
「言われなくても。」
こうして、俺とオパール嬢の婚約が成立した。
それからは、仕事の休みの日や合間にオパール嬢に会いに行った。
「今日の訪問はなくなった。このあとは何もないし、お前らも好きにしていていいぞ。」
レオン殿下のその言葉を聞き、すぐにオパール嬢が思い浮かんだ。
「殿下、少し出てきてもよろしいですか?」
「ん?おお。やる事があるなら、もう帰ってこなくても大丈夫だぞ。」
「スターチス、オパール嬢は在宅か?」
「え?えぇ、今日は友人とお茶会をすると言っていましたが、もう大丈夫だと思いますよ。」
「そうか。では、殿下失礼します。」
俺は頭を下げてから、退室した。
「………まさかこんなに変わるとはな。以前はいいと言っても、ずっとくっついていたのにな。」
「はい。相手が、妹というのが複雑です。」
何か手土産でも持っていくか……。
…………………何が良い?
考えていると、同僚のグレイが目に入った。
「グレイ。女性は何を喜ぶ?」
「は?女性?どうした?」
「今から婚約者に会いに行くから、土産をと思ってな。」
グレイは、ポカンと口を開けた。
「おい、なんだその顔は。」
「いや、お前が女性に土産とか言うから驚いたんだよ。今まで、そういうの無かっただろう。」
「そうか?……そうかもな。オパール嬢には笑顔になってほしいからな。」
「!!」
グレイは、今度も口を開けて、さらに目を丸くしている。
「で?何か思いつくか?」
「ああ、そういうのは自分で考えないと……。でも、まぁ一般的には花とか?」
「花か…。見てみる。じゃあな。」
「あぁ。」
花屋に行くと、悩みに悩んだ。
オパール嬢には、青い花の方が合うようにも見えるが……。こっちも似合うだろうな…。いや、こっちか。
きっと顔も険しくなっていただろう。
「あ、あの…、な、なにかお探しですか?」
店員が、恐る恐る声をかけてきた。
「婚約者に土産をな。」
「そ、それなら……こちらはどうですか?」
選ばれたのは、ピンクの花の小さなブーケ。
……これも良いな。
「では、それを。」
オパール家へ着くと、客間に通された。まだ、友人とお茶を飲んでいたようだ。
「先触れもなく、来てしまって申し訳ない。」
「いえ、どうか致しました?」
「もうすぐ休みも終わるだろう?会えるときに会いたいと思ってな。仕事で急に空きが出たものだから、来てしまった。これは土産だ。」
「まぁ!可愛らしいお花!」
ニコッと笑うオパール嬢。
………………綺麗だな。
「女性に花など送ったことが無かったから、店員に任せてしまったが、どうだろう。」
「そうなのですね。これはこれで嬉しいですが、今度はジェイク様が私らしいと思う花を選んでくれると、もっと嬉しいと思います。」
「オパール嬢らしい?」
やはり、青か…。いや、白も…。
「ところで、ジェイク様。婚約もしたのですし、オパール嬢というのは………。」
!!
………いいのか?どうする?
「そ、そうか?では、プルメリアと………。いや、リアと呼んでも?」
「はい。もちろんでございます。」
そうして、リアと呼ぶことになった。
俺のこともジェイクと呼んでほしいが、リア呼びに舞い上がり、伝えるのを忘れた。
様をとってもらうのは、後々でもいいか…。
その後は、お茶をしながらゆったりとした二人の時間を過ごした。
◇
今日はリアの学園への出発の日。
俺は、仕事前にオパール家へよって、見送りをした。
その日の休憩中…
「ジェイクさん、お手紙が届きました。」
「手紙?誰からだ?」
後輩の騎士が手紙を届けてくれた。
俺は、差出人を確認する。
「差出人は……リア?」
今朝あったばかりなのだが、何かあったのだろうか?
俺は手紙を読んでよろけた。
『ジェイク様、無事に学園へ着きました。以前頂いたガーベラを、押し花にして大切にしております。寂しくなっても、ジェイク様がそばにいてくれるように感じて、頑張れそうです。』
なんてことだ。
美しいだけでなく、可愛いとは…。
「ジェイクさん!大丈夫ですか!?」
「あぁ、問題無い。うちの婚約者が可愛いだけだ。」
「………………………………………は?」
後輩騎士は目を丸くし、周りにいた騎士達はざわついた。
“今なんて言った?”
“婚約者が可愛いと。”
“まさか、あのジェイクさんが。”
“惚気…。”
「また、その反応か。」
「また?」
「まあ、良い。手紙、確かに。」
「あ、はい。失礼します。」
さて、早々に、手紙の返事を書かなくては。
こうして、恋愛に興味がなく硬派で通っていたジェイクに婚約者ができ、そして、その婚約者に惚れている事が、騎士団全体に伝わっていくのだった。




