12 婚約
私の気持ちとか、前世の記憶持ちだという事を話すタイミングとか、考えていたが答えは出ないまま、次の会う機会になった。というか、ジェイク様がやってきた。
家族で出迎えたのに、挨拶して早々に私の前へ。
「急に来てしまってすみません。」
「いや、先触れも貰えたし大丈夫だよ。」
「失礼します。……相変わらず美しいな。会いたかった。」
「!!!」
なんと!…………みんなの前で、恥ずかしいんですけど。
「……すごいね。ジェイクさんがそんな事言うようになるなんて。」
「もう、自覚したし、遠慮はしない。」
「……まぁ、とりあえず客間に行こうか。」
「それが良いわ。お茶を用意させるわ。」
「ありがとうございます。」
お父様とお母様がジェイク様を、客間に誘導してくれてる間、私は何も言えずに後ろをついていく。
どうしよう。今日、言う?…早いほうがいいよね。話し始めはええっと………。
「それじゃあ、私達は失礼するわね。」
「え?そうなのか?」
「ウェル様。」
「……………………はい。」
お父様…………。
「オパール侯爵…。印象が違うな。」
「家族に関してヘタレなのです…。」
「ヘタレ…………。俺はスターチスに、ポンコツだと言われたな。」
「え?…………ジェイク様がですか?」
「ああ。」
お兄様………。何がどうなって、ポンコツ発言になったのかしら…?
「今日は、急に来てしまってすまなかったな。まだ返事も貰ってないのに、顔を見たくなってしまって…。」
「!!!そうですか……。」
顔がどんどん赤くなる。
もう、なんだろう、この人……。
ここまで思ってくれる人は、そういないのではないかしら。
ドツボにハマる前に、話しておいた方が良いのかも…。
「…あの、ジェイク様。」
「ん?どうした?」
「……お話があります。」
そう言い、私が姿勢を正すと、ジェイク様も姿勢をただし、息を呑んだ。
「すみません。返事ではないのですが…」
「そうなのか。改まるから返事かと。」
「その前に聞いてほしい事があるのです。…皆、ジェイク様とふたりにしてくれる?」
控えていたジューンと、カルアに声をかける。
「しかし…」
「分かっているわ。バルコニーで話すから、心配なら外から見えるようにしておく。ジェイク様、よろしいですか?」
「あぁ。構わない。」
この世界、令嬢は夫や婚約者でない男性とふたりでいる事を良しとされない。
とりあえず、皆は納得したのか部屋を出ていった。
「すみません。こちらへ。」
バルコニーに行くと、ふぅと息を吐いた。
「どうしたんだ?」
「ジェイク様。実は私は…」
私は、前世の記憶持ちである事、前の家族を思い出す事、エメラルド家に面倒事を持ち込んでしまう事を話した。
どういう反応をされるのか、心臓がドキドキする…。
「分かった。記憶持ちに関してはそれも含めオパール嬢なのだから、俺は気にしない。そんな別れ方をしたのなら、前の家族を気にするのも当然だと思う。それから、エメラルド家の事だが、何とかなるだろう。オパール嬢に求婚した時点で色々考えている。何せあのオパール家のお嬢様を貰おうというのだから。」
ジェイク様はニコッと笑った。
ゔっ!
思わず胸を抑える。
………どうしよう、今の笑顔は反則。
「大丈夫か!?」
急に胸を抑えた私をジェイク様は心配してくれる。
「すみません。大丈夫です。」
「しかし、胸が痛むなら医者を…。」
「いえ、ご心配なく。それで、オパール家のことも?」
「あぁ、命を狙われる事も多いということか?嫁いでもオパール家の大切な娘である事は変わらないし、俺の大切な人でもあるしな、しっかり守るぞ。」
「………ありがとうございます。」
あぁ、何かもう断る理由はないわね。
さっきから、ジェイク様が話す度、胸が高鳴るし。
…………………さっきの笑顔でやられたわ。
「ジェイク様。…………きゅ、求婚への返事ですが…」
「!!…あぁ。」
「………お受けいたします。」
「本当か!?」
「こんな時に、嘘は付きません。」
「そうか!受けてくれるか!」
「はい。よろしくお願いします。」
「………1つ聞いても良いか?」
「???はい。」
「スターチスに結婚の条件は相思相愛だと言われた。」
「……そうですか。」
お兄様がそんな事を…。
「少しでも好いてくれていると思っていいのかな?もちろん、まだそこまで行っていなくても、婚約中にも口説くつもりだったから良いのだが…。」
「…………はっきりとは言えませんが、先程から胸が高鳴っているので、ジェイク様に惹かれているのだと思います。……………すみません。先程撃ち抜かれたもので。」
最後の方は、聞こえないくらいの小声になった。
「そうか。惹かれてくれているのか。そうか、そうか!」
ほっ。
最後は思わず言ってしまったけれど、聞こえてなかったみたい。良かった。
「これからよろしく頼む。」
「こちらこそ、よろしくお願い致します。」
その後はお父様、お母様の所へ行き、返事をした事の報告をした。
「そうか。ジェイク、これからよろしく。それと、娘を頼む。」
「はい。必ず守ります。」
「失礼、ジェイク様。そこは、大切にしますではないかしら?」
「!!それはもちろんです!」
お母様にツッコまれ狼狽えている。
そのやり取りを見て、クスクス笑っていると、お母様が安心した様に微笑んだ。
「憑き物が落ちたようね。」
「お母様………。心配おかけしました。お父様も。」
「リア、幸せになる事を祈っているよ。」
「ありがとうございます。」
「さてと、陛下への報告の準備をするか。」
「私も父に報告へ。」
「そうだな。よろしく伝えてくれ。」
「……もう、帰られるのですか?」
「名残惜しいが、ライアン殿下の件もあるし、早く話を進めたいからな。」
「そうですか。」
「まだ休みがあるのだろう?また、すぐに会いに来る。」
「お待ちしております。」
そして、私とジェイク様の婚約が正式に決まった。




