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11 告白

「リア。今日、ジェイソンと子息が来る。」

「師匠ですか。最近会えていなかったので、成長した姿を見せられますね。」

「と息子のジェイクだ。」

「はい。二人揃っては初めてですね。」

「…そうだな。」

「???」


なんか歯切れが悪い?

何が言いたいのだろうか?


不思議に思っていると、お父様とお兄様が小声で話し始めた。


「チス。大丈夫だろうか…。」

「ジェイクさんに、頑張って貰うしかないです。」

「そうだな。ライアン殿下より、断然ジェイクの方が良いからな。」

「そうですよ。結婚しなくても良いですが、しなければならないなら、幸せになる方へ。」


……何を話しているのかしら?


「お父様、お兄様?なんの話ですか?」

「いや、うん。……男同士の話だ。」

「うんうん。」


そんな光景を見て、お母様がため息をついていた。


「リア。いらっしゃるのは昼過ぎのようだから、気にしないで来客の準備をしておいてね。」

「気にはなりますが…。分かりました。」


いつも師匠が来るときは、急に来るのに…。

何かあるはず。


   ◇


その日の昼過ぎに2人はやってきた。


「プルメリア嬢、久しぶりだな。」

「はい。お久しぶりです。」

「ジェイクは知っているな?今日はウェルと仕事の話があるから、訓練はジェイクとしてくれ。」

「分かりました。ジェイク様、よろしくお願いします。」

「…」


?あれ?返事が無い?


「おい!ジェイク!」

「あぁ、よろしく頼む。」

「では、こちらへ。」


……随分、無口なのね。


外に出ると、早速訓練を始める。


そういえば、来客用のドレスだったけれど……。後で皆に謝りましょう!


「いきます!」

「あぁ。」


何度か蹴りや拳のやり取りをした後、ジェイク様が話しかけてきた。


「オパール嬢、少し良いか?」

「??何かおかしいところがありましたか?」

「いや、綺麗だった。」

「ありがとうございます。最近は、動きも前よりスムーズにできるのですよ。」

「……そうか。頑張っているのだな。」

「ええ。楽しいですし、上手くなると嬉しいです。」

「そうか。」

「はい。それに師匠に褒められるのも、嬉しいですしね。」

「…」

「…」


…話、終わっちゃった?


「はぁ…、すまん。……色々考えるのは柄じゃないんだ。単刀直入に言う。」

「???はい、何でしょう。」

「好きだ。俺をオパール嬢の婚約者候補にしてくれないか?」

「……えぇぇぇぇぇぇぇぇ!」


私の叫び声が、敷地中に響いた。


ジェイク様の衝撃の発言で、思わず叫んでしまった。


「驚かせたな。すまない…。」

「はい、驚きました。……えっと、何がどうなってそうなったのでしょうか?……自分で言うのもなんですが、変わり者令嬢で通ってますよ?」

「戦う姿に見惚れた。」

「………危ない趣味が?」

「そうではない!誤解するな!……純粋に輝いて見えたのだ。」

「かが…………。そうですか。」


顔が赤くなっていくのが自分でも分かり、下を向いた。


恥ずかしい…、恥ずかしすぎる。


「…」

「…」


会話…。


「……縁談があると聞いた。」


ジェイク様が話し始めたので、顔を上げる。


「ああ、ライアン殿下の婚約者候補のですかね。」

「そうだ。………嫌だと思ったんだ。」

「嫌ですか?」

「あぁ、他のやつの横にオパール嬢がいる事が…。」


もう、この人は平然とそんなことを…。

……………どうしましょう。


「すぐに答えを出さなくても大丈夫だ。俺を好きになってもらうよう努力する。何せ、親父の息子だから、見た目の好みは外れて無いだろう?」

「???……………!!よく覚えていらっしゃいますね。」

「そりゃ、驚いたからな。」


確かによく見たことは無かったが、好みではある。茶色い髪に灰色の目、鍛えた筋肉…。

お父様たちの歯切れの悪さの原因がこの状況なら、ジェイク様を認めている事になる。きっと、人柄も悪くないと言うことだろう。


……………でも、私、恋愛できる?


私は、今まで幸せだったけれど、心の何処かでこの世界に壁を感じていた。それは、転生していて中身は35歳の主婦だ、という事を考えてしまうし、前世の家族のことも思い出すから…。


「………お言葉に甘えて、少し考える時間を頂いても良いですか?」

「もちろんだ。」


家の中に戻ると、客間に通される。師匠はソファに脚をくんで座っていて、お母様はにこにこしながらお茶を飲んでいる。しかし、お父様とお兄様はソワソワと歩いていた。


「ウェル、チス、2人が来たわよ。座ったらいかが?」

「そ、そうだな。」


2人がソファに座ると、師匠が話し始めた。

誰が当主かわからない…。


「ジェイク。オパール嬢の悲鳴が聞こえてきたが、無体はしていないな。」

「もちろんです。オパール嬢が嫌がる事はしません。告白はしました。」

「そうか。で、結果は?」

「まだです。」

「私が答えられずにいたので、考える時間をくださいました。」

「…そうか。時間が許す限り考えると良い。」

「ありがとうございます。」


ライアン殿下の婚約者候補話が、正式なものになるまでにということよね。

婚約者候補話から逃げるために、ジェイク様を利用する事になるのではないか、と言うことも気になるところよね…。

はあ、どうするのが良いのかな…。


師匠とジェイク様が帰った後、私はお父様に呼ばれた。そして、そこにはお母様もいたが、使用人達はいなかった。


「リア、今どう思っているのか聞いておきたいのだが。」

「…………迷っています。」

「なぜ?いい話だと思うぞ?」

「それは分かります」

「リア、無理に決める事はないのよ。でもね…」

「分かっています。王命が出たら、断れない。候補に入ってしまったら、私が筆頭になるのですよね。」

「そうだ。」

「婚約者候補話から逃げるために、ジェイク様を利用する事になるのではないかと…。」

「それは、私達も確認をした。そしたら、こういう状況にならないと気づかなかったから、このタイミングなのは仕方が無いことだと。それから、このタイミングを利用しているのは自分だと言っていたそうだ。」

「でも、心が痛みます…。」

「好きになったら良いじゃないの。」

「そんな簡単に…。」

「あら、好みの男性と一緒にいて、好きにならない筈ないわよ。現に私もウェル様を好きになったのだし。」

「「え?」」


お母様の爆弾発言に、一瞬空気が止まる。


「……どういう事だ。」

「政略結婚でしたが、見た目も性格も私好みだったので、ラッキーでしたわ。」

「ラッキーって…。それより、私を好いていたと?」

「もちろんよ。…まさか気づいていなかったの?」

「………ごめん。」

「もう!後で話し合いです!」

「………はい。」

「ということだから、後で好きになっても幸せになれるわよ。」


お母様がにっこりと笑う。


「そうかもしれないわね。でも…。」

「まだ何かあるのかい?」

「ないけれど…。」

「ないことは無いと思うよ。いつもならそんなに悩まないだろう。」

「一生のことですよ!悩みます!」

「そうかな。ライアン殿下の話のときは冷静だったと思うけど。」

「あれは!」

「ライアン殿下が好きとか?」

「まさか!ありえません!」

「それなら、なぜ?」


ゔーーーーー。もう!なるようになれ!


「実は…」


私は、前世の記憶持ちだということを話した。


話し終わると、静かに聞いていたお父様が口を開いた。


「なるほどな。そりゃ、大人びているはずだ。」


横でお母様もコクコクと頷いている。


「………それだけですか?」

「それだけとは?」

「なんか、こう、気持ち悪いとか、嘘つきだとか。………否定される事も覚悟はしてたのです。それもあって、今まで言わずにきました。」

「愛する娘にそんな事を言うはずがない。」

「まだ娘だと思ってくれるのですか?」

「当たり前だ。産まれてくる前の記憶があったとしても、今はうちの娘だろう?」

「そうよ。可愛い大好きな娘よ。」

「ありがとうございます」


私の目からは涙が溢れ出してきた。そんな私を、お母様はそっと抱きしめてくれる。


「それに、前世の記憶持ちと言うのは、リアが初めてではないよ。」

「!!!」


ビックリして涙が引っ込んだ。


「公にされていないし、私もあった事はないが、昔の記録に残っている。」

「記録ですか?」

「あぁ。うちをなんだと思っている?」

「…………そうでした。」

「記録では、料理の発展に貢献したとか。」

「……確かに、馴染みのある料理も多かったです。」


この世界の料理はフレンチに近い。

そして、醤油や味噌もあったのだ。


そういう文化だと、気にも止めなかったが、そういうことか…。


その後はお兄様も呼ばれ、これからのことを話し合った。


「なるほどね。そういうことか!」

「お兄様もそれだけですか?」

「ん?まぁ、突拍子もない言動の理由と言われれば、納得するだろう。文化が違うなら当たり前のことだ。」

「なんか拍子抜けです。もっと早く話せばよかった。」

「しかし、尚更エメラルド家へ嫁いだほうが良いな。」

「???」

「そうだな。陛下には記憶持ちだということを、報告しないといけないから、王家に取り込もうとするのは目に見えている。」

「それに、ライアン殿下が相手では、無用な争いを生む事になるかもしれない。」

「………無用な争い。もしかして、王太子になる画策とかですか?」

「!!よく分かったな。そういう事だ。殿下が考えなくても周りが考えることもある。」

「でも、公にはされないのですよね。」

「知られない様に過ごしていても、噂話は何処からでも出てくるのだよ。うちとは違い、王宮は信用のおけるものばかりではないからね。」

「なるほど、分かりました。しかし、そこでなぜエメラルド家が出てくるのですか?」

「リア、エメラルド家の爵位覚えている?」

「えーと、確か…。公爵…でしたわね。」

「そうだよ。王家に連なるものだ。」

「私、師匠があんな感じなので忘れていましたわ。」

「エメラルド家へ嫁げば、とりあえず王家の血筋に入る事になるし、騎士団長の家だ。守りも強固だろう。」

「………良い事づくしですね。でも、エメラルド家の皆様へ迷惑をかけることになります。」

「………そうか。」


お父様、お兄様、私で考え込むと、お母様が口を開いた。


「ウェル様、記憶持ちと言うことはエメラルド家の皆様へ話しても大丈夫なのですか?」

「ゔーん……、話して知らないふりをしておいて貰えばいいんじゃないかな。」

「そんなに簡単で良いのですか!?」

「それなら、ジェイクさんだけに話すとか。伴侶になる人に話す分には咎められないでしょう。」

「それで行こう。」

「それなら、リア。迷惑かどうかはジェイク様に聞きなさい。」

「はい」


あれ?そういえば、私の気持ちは???




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