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ジェイクside

俺はジェイク·エメラルド。

第1王子のレオン殿下の側近として、騎士をしている。

兄貴もいるが、早々に「騎士は向いてないから、文官になる。跡継ぎよろしく!」と宣言された為、俺が親父の跡を継ぐことになった。

騎士になること自体は特に問題はないが、正直跡継ぎとかは面倒くさい。


騎士団長の親父から可愛い弟子ができたと聞いたときにはびっくりした。

なんでも、同じ側近で後輩でもあるスターチスの妹で、8歳の令嬢だという。

令嬢の気まぐれに付き合わされて大変だなぁ位に思っていたが、親父は案外楽しそうで時間を見つけては令嬢の元へ通っている。


その令嬢にあったのは2年後、ライアン殿下の婚約者候補が集まるお茶会だった。レオン殿下の付添で行くことになり、スターチスと共に参加した。

令嬢はプルメリアと言うらしい。青い上品なドレスを着た可愛らしい娘であった。

ライアン殿下に野蛮と言われスターチスは憤慨していたが、本人は意に介してもいなかった。


お茶会の後、親父の使いで候爵に用があったので、スターチスの家に行った時には、年齢の割に大人な対応をする娘だと思った。

しかし、親父の話を出した途端、印象が変わった。


「なんか、興奮してるな……。」

「リア、騎士団長大好きだから……。」

「は?妻子持ちのジジイだぞ?」

「好みらしいです……。」

「チッチッチッ、ふたりとも!憧れと恋は別なのですよ。師匠は憧れです!」


幼い娘に、自分の父の事を言われていると思うと複雑な気持ちだ。


それからさらに5年、顔を合わせる事は無かった。

次に顔を合わせたのは学園の卒業式で、アンバー家の捕縛を行ったときだ。


アンバー嬢の尋問のため場所を移動しようとすると、ライアン殿下の後ろにいたひとりの騎士が、アンバー嬢と俺の間に入り斬りかかってきた。その間にもうひとりの騎士が、アンバー嬢を逃がそうとしたのだ。

オパール嬢はそれを止めようとしたようだった。その時、オパール嬢へ騎士が殴りかかった。


危ない!


そう思った時には、オパール嬢は身軽に躱し、騎士に一発入れていた。


!!!


息が止まりそうだった。

オパール嬢が輝いて見えたのだ。

10も年下の娘を美しいと思った。

そして、目が離せなくなった。


「おい!ジェイク!!」

「ああ。」

「どうした?」

「いや、なんでもない…ありません。」


レオン殿下に声をかけられるが、まだ頭がボーっとしている。


移動中には、スターチスに声をかけられた。


「ジェイクさん、本当にどうしたんです?」

「………スターチス、…お前の妹は婚約者が決まっていたか?」

「いいえ。」

「そうか。」

「それが何か?」

「いや、少し気になっただけだ。」


これが恋というやつだが、ジェイクは自分で分かっていなかった。

純粋にプルメリアを綺麗だなぁと思っただけ、婚約話が気になったから聞いただけ、ジェイク自身はそう思っていた。

ジェイクは今まで恋をしたことが無かったし、興味もなかったのだ。


「……まさか。いやいや。……でも、一応父上に報告しておくか。」


スターチスは複雑な気持ちで、父のウェルクに報告したのだった。





ある日、スターチスが衝撃の発言をした。


「ジェイクさん…、リアにライアン殿下の婚約者の話が来たそうです。」

「…………………………は?……もう一度言ってくれ。」

「ですから、リアに…」

「やっぱり、いい。すまん。……あんな騒ぎを起こしたのに、もう次なのか?」

「妃教育は、早いほうが良いですからね…。バカ殿下を制御する為、聡いリアが犠牲に……。」

「そうか。」

「でも、まだ正式なものではなく候補の候補ですから。……とは言っても、筆頭らしいですけど。」

「そうか。」

「……………お昼は奢ってくれますか?」

「そうか。」

「聞いてないですね…。ジェイクさん!ジェイクさん!」

「あ、すまん。なんだ?」

「ですから、今回はまだ正式なものではなく、時間の猶予があります。その間に良い縁談でも見つかれば強行突破するのですが。」

「良い縁談?」

「はい。」

「オパール嬢は、まだ16になる頃だろう?」

「……ジェイクさん。婚約者など1桁の年齢からいる事も多いですよね?」

「……そうだな。」


衝撃で頭が真っ白になっていた。こんな事は今まで無かった。

……いや、1年ほど前の騒ぎの時にあったか。

オパール嬢に縁談……。

考えた事が無かったが当たり前だな。今までいなかったのが不思議な位だ。

他の相手の横にいるオパール嬢か。

……………………嫌だな。


「スターチス。オパール嬢の婚約者の条件は?」

「リアと相手が相思相愛である事です。」

「相思相愛か…。俺はオパール嬢が他のやつの隣にいるのが嫌なだけなんだが。」

「……………それは、好きだということだと思うのですが?」

「……そうか、なるほどな。合点いった。あの頭が真っ白になる感じも、好きだったからなんだな。」

「今まで気付いてなかったんですか?」

「思ってもみなかった。」

「この1年、あんなにリアの様子を聞いてきたのに?」

「ただ気になるだけだと。」

「……あなた、恋愛においてポンコツですね…。」

「もう自覚した。あとは、オパール嬢が好きになってくれれば良いということか。」

「今度の長期休みにうちに帰ってきます。」

「………休み中に、お邪魔すると候爵に伝えてくれ。」

「必ず伝えます!」

「それから、レオン殿下のところにも行ってくる。」

「了解しました!」


殿下に話せば、オパール嬢の婚約者候補の話を止めておいてくれるかもしれない。


「はははははは!そうか、気付いたか。分かった。俺で止められるとこまでは、止めておいてやる。」

「ありがとうございます。」


俺は、その日のうちに両親にも話した。


「良いじゃないか。プルメリア嬢なら反対しないぞ。」

「そうね。あった事はないけれど、話を聞く限り良い子みたいだし。騎士の嫁だもの、自分の身を守れるのも良いことだわ。……私も教わろうかしら。」

「今からは止めておけ。身体を壊すぞ。」

「まあ!年だと言いたいの?」

「そうじゃない。」

「……では、そういう事で。」


両親の言質はとった。

さぁ、どうしたものか…。とりあえず、気持ちを伝えるか…。重荷になるか……。


こうしてプルメリアの周りは、固められていくのでした。





「ジェイク。オパール家へ行く日が決まったぞ。」

「分かった。」

「行く前に1つ聞いておきたいのだが、ライアン殿下の婚約者候補話から逃げる理由にされるだろうが良いのか?」

「こういう状況にならないと気づかなかったから、仕方が無いことだ。それに、このタイミングを利用しているのは俺だよ。」

「そうか。ウェルが気にしていてな。当日は、俺も一緒に行くが早々に離れるから、後はお前次第だからな。」

「あぁ、分かっている。」

「はぁ、今まで浮いた話も無かったからな。大丈夫か?」

「親父に心配されたくない。」


とは言ったものの、どう口説く?


俺は女性経験が無いわけではないが、恋人というものは作ったことがなかった。


  ◇


そして、約束の日。


「プルメリア嬢、久しぶりだな。」

「はい。お久しぶりです。」

「ジェイクは知っているな?今日はウェルと仕事の話があるから、訓練はジェイクとしてくれ。」

「分かりました。ジェイク様、よろしくお願いします。」

「…」


オパール嬢が、俺の名前を呼んだ。ただそれだけで、胸が高鳴る。

………なぜ今まで気づかなかったんだ。


「おい!ジェイク!」

「あぁ、よろしく頼む。」

「では、こちらへ。」


ぼーっとしてしまった。変に思われただろうな。気をつけねば…。


外に出ると、早速訓練を始める事になった。


綺麗なドレス姿なのだが、良いのだろうか。


その事には、誰も何も触れないまま始まる。


「いきます!」

「あぁ。」


ドレスを着ていると思えないほど、動きがスムーズだ。基本も出来ている。


蹴りや拳のやり取りをしている時は、それに集中した。親父からも手を抜くなと言われていたし、オパール家の事情もある程度は分かっているからだ。


これはオパール嬢の身を守る為のもの。手は抜けない。


それから、一段落した時に話しかけた。


「オパール嬢、少し良いか?」

「??何かおかしいところがありましたか?」

「いや、(オパール嬢が)綺麗だった。」

「ありがとうございます。最近は、動きも前よりスムーズにできるのですよ。」

「……そうか。頑張っているのだな。」

「ええ。楽しいですし、上手くなると嬉しいです。」

「そうか。」

「はい。それに師匠に褒められるのも、嬉しいですしね。」


………親父か。以前は憧れとか言っていたが、今でもそうかなのか。それとも…。

そうだとしても、俺は親父に似ていると言われるし、好みの範囲の筈だよな…。ゔーん…、考えても無駄か。


「はぁ…、すまん。……色々考えるのは柄じゃないんだ。単刀直入に言う。」

「???はい、何でしょう。」

「好きだ。俺をオパール嬢の婚約者候補にしてくれないか?」

「…………………………………えぇぇぇぇぇぇぇぇ!」


オパール嬢の叫び声が、敷地中に響いた。




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