トルス村
砂利道を進むと、家が見えてきた。
木の柵に囲まれた村で、20軒ほどの家が見える。
「なんだい兄ちゃん。トルス村に用でもあるのかい?」
柵から離れて村を眺めていると、腰の曲がった老人が声を掛けてきた。
「ええ、大きな町に行こうと思ったら道に迷ってしまいまして。草ばっかりでね。ははは。」
「兄ちゃんは、とんだ方向音痴だな。この道をたどれば迷う事もないだろうに。」
言葉は、通じるな。
そうか、道は続いているのか。
「トルス村は、農業ばっかりで見るとこもないぞ。魔物の肉でもあれば買い取ってもいいが、兄ちゃんは魔物ハンターじゃないだろ?」
魔物ハンターってなんだ。職業なのかな。
「そうですね。魔物ハンターじゃありませんよ。この辺に魔物がいるんですか?」
「そりゃいるさ。スライムやシルバーウルフ、あとブラッドベアを見たらすぐに逃げなさい。」
村の奥に森が見えており、そこから魔物が来るらしい。
「スライムに害は、無いのですか?」
「いやいや、スライムは石をぶつけても倒せるが手で触ったら、皮膚を溶かされちまうよ。」
!!!
「こいつら危険なスライムなのか?」
俺の足元に2匹のスライムが並んでいる。
「兄ちゃん!そいつはスライムか?でも大人しいもんだな。」
老人は不思議そうに見ている。
「そうですね。触っても大丈夫ですよ。」
2匹を撫でるが痛みもない。ちょっと手の汚れが落ちるくらいだ。
あれ?
指毛が無くなってる?
手がスベスベだな。32歳男性は、ムダ毛の処理なんて全くしてないからムダ毛だらけだ。
手の甲でスライムを撫でると、手の甲の毛が無くなっていた。
え!毛が食われてるのか!
スライム達は、嬉しそうに跳ねている。
「スライムだからな。残飯処理の為に使ったりもするからのう。」
老人は気にした様子もなく話している。
カンカンカンカン!
村からうるさい鐘の音が鳴り響いた。