魔物の餌になった
「ここはどこだ?」
私伊藤正樹 は、壁のない白い部屋にいた。
「どうもどうも、伊藤さん。この度は、御愁傷様です。」
ペコペコと頭を下げた老人男性が現れた。
「あっどうも。ところでここはどこですか?」
「伊藤正樹さん、32歳の日本人、食品加工会社に勤める営業職。」
なんだこの人は。個人情報分かるのか?
「家に帰宅途中の電車で心臓麻痺で死去。」
心臓麻痺?俺は死んだのか。
「あなたは、32歳で亡くなりました。予定では86歳まで生きる予定じゃったが、何故か運命が変わってしまったのじゃ。」
あははと笑いながら老人は話す。
「そうですか。それで天国か地獄にでもいくのですか?」
「いや残りの54年分使って異世界へ向かってもらう。嫌なら呪縛霊として電車に54年過ごしてもよいぞ。」
電車に54年もいるのは嫌だな。呪縛霊ってこんな規制があるのか。家族もいないし、未練はないしな。
「分かりました。異世界って魔法と剣の世界ってやつですか?」
「そうじゃ。魔王とか勇者とかいる、日本人ならイメージ出来る世界だぞ。」
なるほど、人並みに漫画を読んでいたから分かるが、チートが貰えるのかな。
「チートほどの能力は無いの。じゃが希望する能力があれば一つあげよう。これでミスが消えるなら安い安い。」
「ん?ミス?」
「いやいやこっちの話じゃ。魔法も練習すれば出来るから、わざわざ必要もないじゃろう。どんな能力が良いかの?」
能力か。魔法は使えるなら、練習すれば良いからいらないな。
すぐに死ぬのも嫌だからな。
「魔物と仲良くなれる能力ってありますか?」
テイマーみたいに魔物を操る能力があれば便利だろう。
「魔物はいるが、仲良くなる能力はないな。魔王が支配しているから、よっぽどの好感度が高くないと無理じゃな。」
老人は考えながら話している。
テイマーは、ないのか。
「いや!一つ魔物に好かれる能力がある!でもこの能力は、危険な能力だしの。」
危険な能力か。チート能力かな。
「その能力でお願いします。」
その能力があれば魔物と仲良くなれるのか。面白そう。
「本当に良いのか?」
「魔物と仲良くなれますよね?」
「うむ、なれる。」
「大丈夫です。」
老人は考え直せと言うが、大丈夫だろう。
「よし!では異世界転生開始じゃ!」
老人が手をかざすと、俺の体が光だした。
「転生終わったら、ステータスオープンと言えば能力が見れるからの。」
老人が手を振って見送ってくれている。
あっ!
光が収まると草原に立っていた。