4.待ちぼうけ
カップ麺、本当に多種多様になりました。
なかなか冒険しないけど、大外れってことはまず無いですね。
病気や台風などで籠城中の非常食に。早朝出動後の朝食に。とってもお世話になりました。
百福氏に感謝~
彩夏は薄暗さを増した廊下に顔を出した。海城を見、辺りを見回す。
「どしたの?」
いや、と言いながら、玄関口まで見に行った。
「ロウが、居ないなと思って」
更に外の暗がりにも顔を突っ込む。—―夕暮れる景色しか見えない。
そうなんだよね、と海城が口を尖らせる。
「何かあるといつも来てるのにさ。伝言だって頼んだのに。
—―何か聞いてない?」
「ないなあ。花火のことを伝えに来たって言って、そのまま図書館に入って行った」
「変だね」
「ああ、変だ。
……おまえ、何が『変だ』って?」
「勿論、ロウと図書館とが結びつかないな、と」
まあ、そうだろうな。
などと、聞かれても不興は買うまいが確実にどこかで報復されそうな戯言を交わしつつ。
そのまま三十分ばかり、二人して廊下に坐っていた。
寝惚けた様にじんわりと街灯が点り始めていた。それも最近はLED防犯灯が増え、其処此処で硬い白光がきっちり夜を切り取っていく。便利なんだが、風情に欠けるとも思うのは、今時の人間特有と言われる思い上がりだろうか。
陽が沈み切り、日の名残りが褪せ、夕暮れがひたひたと迫る。
廊下の電灯がようやく点った…そろそろタイマーの時間調節が必要だろう。
それを機会と見たように。一瞬の躊躇の後に、夕風が夜風に変わる。
夜が一気に踏み込んでくる。その懐に、ほんの一筋の白い風を包んで。
秋になるのだな、と解った。
頬杖をつき、黙ったまま、更に三十分過ぎた。
「遅いね」
海城が呟いた。
それでもまだ、二人して坐っていた。
同じ下宿の人間が何度か行き交った。その度に何をしているのだろうという視線に晒されたが、気にするのはとうの昔に止めている。寧ろ、漂ってきた海魚を焼く塩気の効いた匂いに心が向いた。
やがて。
「先に、やっていようか」
彩夏が立ち上がったとき、時計の針は二十時に迫っていた。
子供のように騒ぐ心算はないが、それでもこれ以上遅くなると周囲から文句の一つも出るだろう。
昔であれば花火の輪に加わろうとやって来る者もあっただろうに、随分と世知辛い世の中になったものである。
深夜まで大騒ぎは困りものですが。
夏の初め頃だと、夕方7時くらいはまだ明るいので、花火にはちょっと早い気も。
だから、ちょっと遅い時間になっても、花火にはしゃぐ子供の声が煩いなんて怒らないで欲しいな。