父と兄、魔法を見る
大浴場の脱衣所に着くと、父は人数分のカゴを出して、もう一度風呂に入るため、服を脱ぎ出した。
「王様、なぜ服を脱ぐのですか?」
騎士の1人が聞いた。
「みんなで風呂に入れば嫌なことを忘れてゆっくりできるぞ」
そんな父を見ながら、兄ユウジは、まずこの人達がどこから来て誰なのか聞くべきだろ!
と思っていたが皆が武器を持っているので怖くて聞けなかった。
「しかし王様、風呂に入るにはこの剣を置かねばなりませぬ。剣をおいている間にこやつらに襲われたら困ります故、いつもは結界魔法の中で風魔法と水魔法を使い清めています」
と先ほどの騎士が横に並んで目で牽制している相手を見ながら言った。
「魔法?」
父とユウジはびっくりして立ち尽くした。
「この世界は魔法はないのですか?」
と言いながら、さっきとは違う騎士が手から小さな火の玉を出した。そして、何やら小さい声でつぶやくと温かい風が吹いて、その場にいる全員の服を乾かした。
「うん…わけがわからなくなってきたぞ。とりあえず大広間に行こうか」
ユウジは父に対して何事にも動じないから経営者として素晴らしいと思ってきた。本当に何にも動じないのかと改めて父の感覚に疑問を持ちながら一行の後に続き、旅館の大広間へやってきた。
大広間には、人数分のお茶を用意する母と結衣の姿があった。広間のテーブルの端には、湯呑みを持った巫女様が座っていた。




