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教会の砂時計

アーニャ達がこちらの世界に来る時に「教会の砂時計」を持ってきていた。


この砂時計が捜索のタイムリミットを示している。


こちらの世界に来る前に時間を測ったら砂時計のタイムリミットは3日だった。


異世界に来て3日目。


今日が、タイムリミットのはず…


朝から大広間のテーブルに砂時計を置いてみんなで眺めていた。


「砂が全くと言っていいほど落ちていませんが…」

とヒスウェル


「残念なグロリアスは、砂時計を懐にしまっていて時間が分からなくなったのではないか?もうとっくに砂が落ちてしまったんではないのか?」

と、第二騎士団最年長のマディウムが言う。


「マディウム様、いくら私とてそんなヘマは致しません。第一、砂時計の砂が、全部上にあって一向に落ちてくる気配がないではないですか」


みんなでじーっと砂時計を眺める。


ここで初めて少しだけ砂が落ちた


「おおーー!!!」

歓声が上がる


このスピードだと一体どれくらいの日数があるのかな?数年間だとしたら、数年も第一騎士団と第二騎士団がいないのはオランド王国として不味くないか?」


「俺は来週、兄の結婚式だったんだ!」


「俺のところはカミさんが臨月だ」

とマディウム


「みなさん、落ち着いてください。古い文献によると、こちらの3日は私たちの世界の1時間です。つまり、約一年いたとしても、私たちの世界では5日程度なんです。だから、そんなに心配はいらないと思います。」

とグロリアスが皆に伝えた。


「この砂時計が落ちきるのに何日かかるのかわかりませんが、この砂時計が終わる時、勝手に魔法陣が描かれて元の世界に帰れるのです。

私たちは、見えない糸で元居た世界とつながっており、魔法陣は異世界人である私たち一人一人の足元に産まれて勝手に戻れるそうです。

私たちが探している聖女様は、世界を渡る時に、こちらの世界の神様から加護を受け、私たちの世界に留まり続ける事ができるようになるそうです。

ちなみに、聖女様をお連れする時は、アーニャが持っている聖女様の腕輪をつけてもらうと、私たちが帰還する時に一緒に世界渡りができるそうですよ。

聖女様ではない方が腕輪をつけても世界渡りはできないそうです。」

とグロリアスは続けた。


「聖女様が世界渡りを拒否したらどうなるんだ?」

とロビン。


「拒否したら、いくら腕輪をしていても世界渡りできないそうですよ。この世界の神様からの加護が受けれずに渡れないそうです。これも文献に書いてありました。」

とグロリアス


「はい、先生」

と、ヒロヤが右手を上げてグロリアスを見た。昨日も騎士団と一緒に泊まったらしい。体型的には同じだから気づかなかった…と結衣は思った


「なんでしょうヒロヤ殿」


「それって過去に世界渡りをした人がいたって事?」


「そうですね、世界渡りをした聖女様は過去に2人。文献を読むと、聖女様は長い黒髪で、何枚もの服を着た方だったそうです。もう一人の聖女様はこれより以前のことなので文献は残ってないんです」


何枚もの着物…十二単衣???


「で、失敗したことがあるからこそその文献もあるんだろ?」

とロビン


「ええ、禁書に書いてあります。世界渡りを拒否した聖女様に無理やり腕輪をつけたのですが、腕輪だけが戻ってきました。聖女様は世界渡りしなかったそうです」

とグロリアス


「じゃあ、聖女様が世界渡りしなかった時は、そちらの世界はどうなったの?」

と結衣


「文献によると、その時は、大災害で殆どの生き物が死んでしまったそうです。魔族も壊滅的だったとか。そして、猛毒の毒草や、強い魔物もその時生まれたようです、、」


「今、根絶やしにできない猛毒草や、あのなかなか倒せない魔物はその時に生まれたと…」


「ええ。そんな失態を犯したことなんて記録に残せないから禁書なんでしょうね。教会の歴史書にある『世界の混沌』の話はそのことを都合のいいように書いた物です」


「確か聖女様が、世界渡り直後に病気になり病に伏せって亡くなってしまい混沌に突入したと言うあの話だよね」

とロビン


「そもそも聖女様を説得できずに世界渡りを強行した結果、私たちの世界に聖女様が来てくださらなかった事を隠したのです」


「今回は失敗できません!なので、必ずや説得しないと」

とグロリアス


「で、…なんでこんな大事な話の時に、サティスファイ伯爵はぐーすか寝てられるのでしょうか?」


みんながワイワイ話している部屋の真ん中で、サティスファイ伯爵は大の字になって大きないびきをかいてのているのだった。


「うるさくないんですかね?」


「このお方はマイペースだからな〜。隣で大声で歌っても起きないんじゃないの?昨日、大女将と遅くまで飲んでたみたいだよ。綺麗なマダムはすぐ口説くんだから」

とソルは呆れたように言うと


「綺麗な女性には綺麗に花を」

と渋い声が聞こえた


皆、部屋の真ん中を見ると、寝癖でボサボサのサティスファイ伯爵があぐらで座っていた


「いやいやいや、2秒前までいびきかいてたでしょ!その格好でキメ顔されても説得力ないよ。伯爵。単なるタラシじゃない。」

とソル


「ソル〜。そんな事を言っていいのかい?」

とサティスファイは、目を細めてソルを見た。ちょっと悪い顔をしている。


「い、いやあの…。その目は…。それだけはご勘弁を…」

とソルはあたふたした。


それを見た結衣はこっそりアーニャにどうしかのか聞いた。


「ソルはサティスファイ伯爵の養子だから、伯爵はソルの事ならなんでも知ってるんですよ」

とアーニャ。


「美しい女性を見ると心が踊ってしまうんだ。そして一度踊り出した心は止められないんだよ。女性はみんな花のように美しい。その美しい花を愛でるのが私の役目だよ」

サティスファイ伯爵はそう言うと、サッと着替えて、


「今朝は、紀子ちゃんとクロワッサンを買いに行く約束をしていたのでこれで失礼するよ」

いつのまにか、髪型を整えて大広間から出て行ってしまった。


「あの人、帰る気ないね」

とソル


するとすぐにサティスファイ伯爵は大広間を覗き

「教会の文献によると、二つの世界の時間の流れは同じだそうだよ。その『神の砂時計』の効果で、『この世界の3日は私たちの世界の1時間』なんだ。文献に書かれている聖女様がやってきたのがおおよそ1000年ほど前。聖女様の説得に失敗したのがおおよそ200年ほど前だよ。」

と言い、ウインクして


「結衣ちゃんの顔に書いてある疑問の答えをお伝えしたよ」

と言うと、光の粒が伯爵の手の周りにできてきて、薔薇の花へと変わった。


「美しい人には美しい花を」

そう言いながら去って行った


「結衣殿の疑問って?」


「こちらの一年って5日ということは、みんなの世界の一年ってこちらだと、72年ほどになるから…つまり聖女様が必要になるのが割と頻繁なのかな?と思って」

とサイファに聞かれて結衣が答えた


「今回は魔族と人族の戦争のせいなんです。魔族と人族の戦争はいつの時代にもあるんですが、過去に聖女様に来てもらった際は、世界を支配したい者が起こした物事のせいだと書かれています。

何をしでかしたのかは文献には残っていません。

その物事自体を記録に残せない様な禁隠の事だったんでしょうね」

とグロリアス。


そう話していると父が大広間に入ってきた。

「おはよう。今日から初仕事だけど、みんな大丈夫か?」


「はい!」

と皆返事をした。






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