グロリアスはいつも運が悪い
グロリアスはいつも運が悪い。
思い返せば子供の頃、グロリアスが乗馬の練習をしようとすると雨が降るし、学校の遠足の日は決まってハリケーン。
何もなくても転んで怪我をする。また、道を歩いていると誤って水をかけられるし、とにかく残念なことが多い。
この世界に来た際も早々にユウジに水をかけられた。
この運の無さはなんなんだろうかと思うが理由を両親から聞いている。
グロリアスの世界では、生まれて1年以内に洗礼を受ける。生まれてすぐ受ける者もいれば、一歳になる直前に受ける者もいる。
洗礼を受けるのは、洗礼の際に洗礼名を神様からもらうためである。
洗礼名は、神の御加護があるため人に知られても大丈夫であり、生涯名乗る名前である。
洗礼名はずっと名乗り続ける名前であるのに対し、親からもらう名前は魂の名前のため、誰にも教えてはならない。
魂の名前を隠す事により、呪詛などから自分を守る術になるからである。
自分の魂の名前は6歳になるまでは教えてはもらえず、6歳を過ぎたら両親とともに教会に行く。
教会に行ってクワイエットルームで両親から魂の名前を聞くがその時は誰も立ち会わない。
その後サイレントルームに移動して司祭様立ち会いのもと記憶封じの魔法をかける。この時は両親は別の部屋で待機する。
この記憶封じの魔法は成人するまで解いてもらえない。子供のうちは記憶封じをしておいた方が安全だからである。特に貴族の子供ともなると誘拐など狙われる機会が多いためである。
ちなみに教会には複数部屋があり、クワイエットルームとは魔法が効かない部屋なのである。そのため盗聴などの心配がなく完全に秘密にできる。
グロリアスは小さい頃から人一倍可愛い外見の子供だった。その姿は一度見てしまうと、王族ですら凋落してしまうと国中に噂がたつほどに可愛い子供であった。
あまりにも可愛い子供だったので、国内外の沢山の貴族から自分の子供の婿に、とか、跡取りのいない貴族からはぜひ養子に、など、申し込みがあったが、グロリアスの両親は取り合わなかった。
魔族との戦争は続いていたが、魔道具に使う魔石の鉱山が新たに領地で見つかったお陰で、グロリアスの家はすごく裕福だったためである。急いで縁組をしなくてもよかったのだ。
財力がある貴族の見目麗しい子供は、嫉妬の対象にもなった、養子にと嫉妬を含んでしつこかったのがキロ伯爵家だった。
それはグロリアスが6歳の記憶封じの儀式の日に起こった。
グロリアスがクワイエットルームで魂の名前を聞いた時に教会に複数の火を放たれた。
魔法ので作る火は引火しないようにシールドをかけてあったが、普通に起こした火を防ぐことはできない。
シールドはあくまで魔法を防ぐためのもので魔法以外は防げない。
火を放った者は、火打石で火を起こし、火をつけた矢を複数打ち込んできた。
火が放たれた教会は勢いよく燃え出した。
まだサイレントルームでの儀式が終わってはいなかったが、安全のために全員が避難した。
その時、教会の職員に扮したキロ伯爵家の者にグロリアスは誘拐された。儀式中であったグロリアスは自分のフルネームを覚えきる前に誘拐されたのである。
グロリアスはその後すぐに見つかり保護されたが、中途半端に覚えたフルネームを使ってキロ伯爵の手の物に呪詛をかけられたため、ただ人より運の悪い子供になってしまった。呪詛は悪魔との契約で成り立つので、解くことは容易ではない。
呪詛をかけたものはその場で拘束し、すぐ牢獄へ。
そしてキロ伯爵は教会への放火で教会を全焼したことと、子供を誘拐し呪詛をかけた事が、前代未聞の事件だったため、一族は皆、戦争の前線に送り込まれ、資産と爵位は剥奪。
事実上の一族の根絶やしとなった。
呪詛をかけられた時点で、今回の出来事の全責任を負った教会と当時の司祭は、グロリアスに反対魔法をかけた。
それは、「グロリアスが本気で護りたい人が現れた時に呪詛が解ける」というもので、グロリアスの魅力を天使に捧げる事により成立する。
呪詛が解けた時点で、本来持っている魅力がふただび現れるのだが、魅力を削がれてもなお、グロリアスは平均以上に美しかった。
平均以上に美しく、少し不運な少年を誰も放ってはおけず「護ってあげたい美少年」として定着してしまった。
人より不運なグロリアスは、護られる対象にいつもなるため、グロリアス自身が護りたい人など現れない。だから、呪詛は解けず、25歳になった今でも、「綺麗な顔をしているけれど残念なグロリアス」の異名はそのままなのである
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