兄と妹
騎士様御一行の前をパレードがの全ての演目が通り過ぎた。
お祭りなので屋台を見たり、楽しみ方はいっぱいあるのだが、この御一行はチアリーダーやサンバのお姉様方の写真や動画が撮れなかった事にがっかりした様子だった。
しかし何かを思いついたのか急いで奥野屋旅館に戻って行った。
「忘れないうちに始めよう」
誰かの掛け声を合図に、全員が円陣を組むようにして座り、円陣の真ん中に手をかざした。
全員の手から光が出てきた。
光が一点に集まり、その光の交差部分から、先ほど見たパレードの3D映像が現れた。
全員の記憶を紡ぐ魔法だ。
12分の1くらいの縮小サイズで、まず、バトントワリングのお姉様、チアリーダーのお姉様!
映像が立体で流れていく。
「おおー!」
「全員の記憶を集めると完璧な再現映像になったな」
「この子可愛くないか?」
などと3D映像を見ながらみんなで盛り上がっていた。
だんだんと盛り上がりがすごくなり、いよいよサンバ隊を再現しようとした時
「ただいまー」
結衣とアーニャが帰ってきた!
皆、一斉に手を引っ込める。
もちろん、サンバ隊への期待値が大きすぎたせいで、いろいろな意味で立ち上がれない。
アーニャは嬉しそうな顔をして大広間に飛び込んできた。
「お兄様、見て見て!結衣に使い方を教えてもらったの」
とスマホで画像を撮った事が楽しかったようで、輝くような笑顔でグロリアス司祭の背中に飛びついてきた。
さっきまでの熱が少し落ち着いたグロリアスは、苦笑いしながら振り返った。
が。
アーニャは気づいた。
魔法の残り香、円陣になっていた事。
それは何かの記憶をみんなで3D再生しようとしていた証拠。
「お兄様、魔法で何をしようとしていたのかしら?」
アーニャは満面の笑みで聞いたが、声が低い。
「まあ…いろいろだよ…」
少し目をそらしてグロリアスが答えた。
「お兄様、素敵なお庭は昨日、この国に来たときに見ましたけど、もう一度お庭を見にいきましょうか?」
アーニャは笑顔だが、少しだけ怒りのオーラを放っている。
「ア、アーニャ。今日は疲れたから。みんなと座っていたいなー」
騎士団御一行は普段見たことない兄妹の会話に不穏な空気を感じていた。
「いいから、お兄様、こっちよ」
アーニャは無理やりグロリアスを連れ出した。
庭に出た2人は木の影になる様な位置で話を始めた。
「お兄様、皆様と何を再生しようとしていたの?どうせあのサンバのダンサー様達よね?ヒスウェル様が、この国のお姉様にうつつを抜かしたらどうしてくれるのですか」
アーニャは第二騎士団の団長、ヒスウェルに片思い中。
ヒスウェルは、23歳。ダークブラウンの髪に、サファイア色の瞳をしており、背は180センチを超える細マッチョ。貴族の三男ながら、剣も魔法も一流。
貴族、庶民問わずファンが多い。
「…」
グロリアスは明後日の方を向いて無言。
「ど う し て く れ る ん で す か!」
アーニャはそう言うと、グロリアスの肩を持って揺さぶった。と、バランスを崩し、派手に転んで後ろの木にぶつかった
「お兄様、大丈夫?」
アーニャは驚いた様子もなく、グロリアスに回復魔法をかける。痛みも傷もないが、グロリアスの浴衣はヨレヨレになった。
「ごめん、アーニャ。アーニャの可愛さをヒスウェルにわかってもらえるように頑張るよ」
グロリアスは力なく答えた。
グロリアスとアーニャは公爵家の出身。アーニャは巫女としての能力を買われ現在の役職にあるが、グロリアスは本来なら騎士団に入るべき立場だ。
しかし、すぐ転んだり、何もなくても1人怪我をしたりするので騎士にはなれず、神に仕える司祭になった。
しばらくすると、2人が戻ってきた。騎士団御一行も、結衣もこの2人がどんな会話をしていたか聞こえなかったが、アーニャはご機嫌で、その後ろから入ってきたグロリアスはヨレヨレだった。
騎士団の面々は思った。グロリアスがたまにヨレヨレで歩いているのを見たのはアーニャのせいだったのか?と…
この兄妹に何があったかを誰も聞かなかった
だんだんとキャラクターにスポットを当てていきたいです。
本日もここまで読んでいただいてありがとうございます




