騎士団御一行はお箸と梅干しに出会う
お昼ご飯を食べてから、観光に行こう!と言う事になり、ご飯の準備をする。
改装のための休業中とはいえ、ここは旅館。大人数のご飯の準備は早い。普段は板長をしている父が、料理を作ってくれる。
今日は野菜の揚げ浸しの乗った素麺と、梅干しのおにぎり。デモンストレーションのつもりなのか、父は炊き立てのご飯を檜の桶に入れて持ってきて、三角形のおにぎりを手早く作っていく。
小さめに作ったおにぎりは、海苔をつけたものと、おぼろ昆布をつけたものを作る。
素揚げした茄子と南瓜、ピーマンを綺麗に乗せた素麺が出てきた。すごい速さで料理が出てきたのでびっくりしていると、漬物を持った祖母が現れた。
「なんだか大広間が騒がしいから覗いたら海外のお客様が沢山いるじゃない?もうすぐお昼だから、ご飯炊いて、天ぷらでも作ろうかと準備しているところにマサルが入ってきたのよ。ところで、こちらの御一行はどちらからいらしたのかしら?今は休業中だから、見知った人からのお願いで受け入れてるのよね?」
と祖母が聞いてきたので、異世界からやってきた現場を見ていない祖母に説明するのも大変だから、適当にごまかしてみた。
転移してきた時、祖母は部屋の中にいたはずなのにパズルに夢中になりすぎて気付いてなかったみたい。おばあちゃん、マイペース。
おばあちゃんを見たサティ伯爵は立ち上がった
「なんとお美しい!私はサティスナリと申します。貴方様のお名前は?」
「私はこちらの旅館の大女将をしております紀子と申します。」
「大女将、こちらの御一行様はしばらくウチで滞在いただく事になったの。板長も了承してくれたんですがよろしいですか?」
母が祖母に尋ねると
「もちろん!皆さん、ゆっくりしていってくださいね」
と営業スマイルを浮かべた。
素麺とおにぎりをお盆に乗せ、一人一人の前に置いた。お箸は割り箸ではなく漆器のお箸。
皆、お箸を初めて見たようで手にとって眺めている。太鼓のバチのように持ってぐるぐる回している者や、耳にかける者、お箸自体を食べ物だと勘違いしている者までいる。
父はコホンと咳払いしてから、立ち上がり、お箸の持ち方を説明し出した。
「ほほう、この棒は二本で使う事によって意味があるのか!」
「この色や質感は我が国にはない物だ」
「野営の時に素手でご飯を食べなくていいし、どこの森でも調達できるから便利だな」
などと口々に言っていた。
それでは食べようと言う時
皆は私達に聞き取れない言葉で何かを唱えていた。そして上を向いた後、両手のひらを擦り合わせ、それが終わるとお箸を持った。
どうも異世界人はお祈りをしてからご飯をいただく敬虔な人達らしい。
「…箸がつかえない!誰かこのガラスの器の物を食べれた物はいるか」
「無理だ!まず箸がつかえない」
「手がつりそうだ」
口々に弱音を吐く
「お前ら、それでも騎士か!宮廷魔道士か!埃はないのか!たかが棒2本だ!」
「ダメです隊長、棒を握る手に力が入りすぎて折れそうです」
「ひるむな!あきらめるな!」
口々に言いながら、プルプル腕を震わせている。
「ダメだ!手掴みで食べましょう!」
「それはまずい、あきらめてはなるまい」
とお互いを励まし合いながら全く進まない。
「おい!テーブルの真ん中にソイに似た物があるぞ」
誰かが、用意しておいたフォークに気づいた
「ソイを使おう!父殿、ソイを使わせてください」
「フォークね、使っていいよ」
「ソイだ、ちょっと形は違うけどこれはソイだ。」
一人が全員に配り、安堵したように食べ出した。パスタのようにくるくると素麺を食べていた。
とここで、おにぎりを食べていた一人が
「ぶふぉ」
と咽せた。
「この酸っぱい赤いものはなんですか?ううぅぅ」
梅干しのは案の定皆んな苦手だったみたい。父は予想していたようで、少ししか入れなかったが、皆泣きながら食べていた。
食べ終わった後は、皆お互いに、梅干との死闘を称えあっていた。
こうなると共通の敵である梅干しを倒したため、第一王子派騎士団も第二王子派騎士団も同じ敵を相手にした同士になり仲良くなっていった。




