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銃盾  作者: 鶏卵そば
激突! シャンバラ対キヤト
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裏切りの砲撃

 イズナを地の神器に送り込んだリルは、ここぞとばかり勝ちどきをあげる。

 しかし、続く神器の声は安樹たちに予想外の内容を告げた。


「コレヨリ神器『すさのお』ハ、きやと軍本隊ト合流後、しゃんばら国ヲ攻撃シ、コレヲ殲滅シマス。邪魔ヲスルモノハ同様ニ排除、殲滅シマス」

「な、何ぃ!」


 間髪をおかずにハッチが開き、中からイズナが顔を出す。

 田常が叫んだ。


「イズナ、これはいったいどう言うことじゃ?」


 しかしイズナはそれには答えない。

 彼女はキヤト族の軍師シギをみつけて叫んだ。


「シギ様、お乗り下さい! 神器は完全に我が支配下に置きました! ひとまずシギ様をキヤト本陣にお送りします!」


 神器から落ちてうずくまっていたシギがゆっくりと顔をあげる。

 その口の端からフッと息がこぼれ、ヒューヒューと音を立てた。喘息の発作か何かのような気味の悪い呼吸音は、シギの笑いだった。

 シギはこれ以上ない程に顔をゆがめて笑っていた。


「フフフフ、ハハハハハッ、ハッハッハッ! 我が宿願、叶ったぞ。……いや、違うな。我が復讐はここから始まるのだ! イズナよ、手始めに祝砲を放て! シャンバラに伝わる神器の力、見せてもらおうか!」

「御意。スサノオよ、砲撃用意。シギ様に貴様の威力をみせてやれ」

「リョウカイ、砲撃用意シマス」


 イズナの命令を受けて、神器の砲身が旋回する。

 黒光りする筒が、石室の壁に狙いを定めた。


「イズナ、答えよ! なぜわしらを裏切る! おぬしに一体何があったのじゃ!」


 叫び続ける田常に、イズナはチラリと視線を落とした。

 その汚物でも見るような目つきは、これまでの彼女からはまったく想像も出来ないものだった。


「っさいんだよ、このジジイ。まだわからないのかい? 私は最初からシギ様の密偵なんだ。今日この日のために、ずっとあんたらの仲間のフリをしてたってわけさ。大変だったよ。安樹が洞窟で迷わないように目印を撒いたり、あんたらを封印の間に連れてくるためにブドーにリルディルを襲わせたり」

「そんな、ウソじゃろう? ウソだと言ってくれ!」

「フン、馬鹿馬鹿しい。考えてみなよ。そうでもなきゃ、アンタみたいな汚いジジイに喜んで抱かれる女がいるもんか」

「ならば、あの誓いは? 約束したじゃろ、命尽きるまで共にあると」

「バーカ、んなもん、口からデマカセに決まってるだろ」


 呆然とする田常を横目で見ながら、イズナはこれで話はおしまいと言わんばかりに神器に命令を下した。


「スサノオ行くよ。砲撃開始、目標前方!」

「砲撃、開始シマス。3、2、1、発射!」


 すさまじい轟音が室内に鳴り響く。

 その一瞬後に、空気が割れるような振動が辺りを震わせた。

 その場にいた人間たちは思わず耳をふさいで倒れ込む。


「姫様!」


 安樹は、リルをかばうように身体を重ねた。

 スサノオの砲身から打ち出された弾丸は、封印の間の壁を破壊したのみならず、地下洞全体に衝撃を与えたらしい。

 続けて天井から落石がおこり、下敷きにいなった兵士たちの悲鳴が聞こえてくる。

 ただ一人シギだけが満足げに叫びながら、神器スサノオに飛び乗った。


「素晴らしい、素晴らしいぞ! シズカよ、どうだ? ここでとどめを刺してやろうか!?」


 イセ侍従長に身を守られたシズカ女王には、言葉を返すだけの気力は残っていなかった。すでにその顔色は蒼ざめ、視線は空中を彷徨っている。


「シギ様、これ以上は」


 イズナの諫言を受けて、シギは鼻白んだように肩をすくめた。


「フフン、残念だが、地下で戦うにはこいつの威力は強すぎるようだ。いずれ戦場で叩きのめしてやろう。それまでお楽しみはとっておいてやる」


 シギの言う通り、地の神器の威力はすさまじいものがあった。

 たった一度の砲撃で封印の間の壁は崩れ、天井から外の光が差し込んでいる。

 もう一度砲撃が行われれば、大規模な落盤が起こっても不思議じゃなかった。


「それと安樹にリルディル、おまえたちには言葉に表せぬほど感謝しているぞ。よくもまあ、私の計算通りに動いてくれた。このまま私が世界制覇を果たしても、おまえたちがひっそり生きていく邪魔はしないと八百万の神に誓おう。だが、もうこれで全部用は済んだ。尻尾を巻いてこの国から逃げ出すが良い!」

「この裏切り者、ふざけやがって!」


 シギに飛び掛ろうとするリルを、安樹は必死で押さえ込んだ。


「姫様、今動くのは危険です。ここはご辛抱下さい!」


 この世のものとは思えない不気味な重低音とともに、神器の両側に付けられた履帯が回転しはじめた。

 大きな鉄の塊がまるで生き物のように動きだす。

 その振動で、地下洞全体が再び激しく揺れた。


「うわぁっ!」


 落石が安樹の頭にぶつかり、額から血が流れ落ちる。

 目の前が暗くなった。

 地の神器スサノオは、地面に散乱した瓦礫をものともせず、砲撃で開いた穴から外へと脱け出した。

 黒装束の集団も追いかけるように姿を消していく。

 唸るような重低音が消えていくのを、安樹は薄れ行く意識の中でぼんやりと聞いていた。



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