証言台
在日米軍の司令官であるアラン・ハルバートは部下の報告を受け、力なく机を叩いた。
「生還者は?」
「三名おります。一人は隊長のマック・ローレン大佐、後頭部の打撲と全身のいたるところに裂傷。二人目は第三分隊のハリソン・ケラー一等兵、右腕と右足の欠損と、前線復帰は難しいでしょう。三人目は第五分隊長のケイン・サンダーバード中尉、意識不明の重体ですが、死は逃れられないでしょう」
アランは堀の深い顔をゆがませ、眉間を目一杯寄せた。
「生き残りのローレン大佐を呼べ、一時間後に臨時会議を行う。彼も同席させろ」
「了解しました」
アランは机から手を離し、腕を組んで椅子に座りなおした。
「それで、君の隊は犬っころの襲撃で壊滅したと」
会議は予定どうり始まっていた。今は、偵察のために派遣された特殊部隊「ハンター」の責任追及が行われている。
アランは意味のない行為だと分かっていながらも、その無駄を止めることが出来なかった。
「話が違う! 報告では、奴らは刺激しなければ無害だと……」
沈黙の後、ニックは力強く証言台を叩いた。金属が叩かれる乾いた音が鳴り響いた。ステンレス製の机は歪み、ニックの額の傷からは血が流れ落ちた。
「止めろ、ローレン大佐。傷に障る。お前たちも、これで敵がいかに強力で危険か知ることが出来た。特殊部隊壊滅という損害の果てに、ではあるが」
アランはついに我慢できなくなって、怒鳴り散らした。彼の年季の入った言い回しでは、怒りの中でも正しい語彙を選択するのは容易だった。
「しかし、司令官殿、特殊部隊を壊滅させたローレン大佐を放って行くわけにはいきません」
アランはもはや呆れ、力なく、吐き捨てるように言った。
「そんなことをだらだら続けていたら、そのうちに日本が滅びるぞ」
会議の進行は途切れた。アランは会議を次に進めたかったが、この様子では会議を進めても良い意見は出ないだろう。
「状況を整理してはどうでしょう」
参謀の一人が勧め、アランは従うことにした。