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4.第二日目 朝

 朝、目が覚めた。もう既に九時を回っている。しかし体を起こす気にはなれなかった。

 頭が妙に思い。寒気もする。どうやら完全に風邪をひいてしまったようだ。軋む体を無理にベットから起こしてみた。ふらふらする。かなりの熱があるようだ。私はそう考えながらも、立ち上がりガウンを羽織って今のほうへと歩いていった。

 家の中は静まりかえっていた。誰もいない。私の歩くスリッパの音だけがぱたぱたと妙な響きを立てている。棚にしまっておいた体温計を取り出し、脇の下に挟んだ。それからやかんに水を入れて火にかけた。

 しばらくすると体温計が機械音を放ち、測定の終わりを告げた。恐る恐る見ると熱は三十八度くらいであった。思ってた程ではなかったので少し安心した。とりあえずコーヒーとパンを口に入れた。何か食べないと薬ものめないからである。

 一通り食べ終わると、前に医者からもらった薬を探して飲んだ。直ぐに効く筈もないのだが、心なしか体の中から熱が引いていくような気分になった。単なる気のせいであることは重々わかっていたのだが・・・。 

 「さて、今日は何をするよていだったかな?」ふと思った。

 元々午後に少し伸びた髪の毛を切りに行く予定にしていた。その後バンドの連中と落ちあって、飲みながら打ち合わせをするつもりだった。でもこの状態では髪の毛を切ったらさらに悪化しそうである。何よりも担当のお姉さんに伝染しかねない可能性もある。体が軋むところを考えると、インフルエンザの可能性もある。とりあえず今日のところは予約をキャンセルをすることにした。バンドの連中にも後で侘びを入れて今日の会合は欠席させてもらわねばならないな、とも思った。この分だとたとえ夕方まで寝てたとしても完全に回復には至らないだろう。

 暖かい格好をしながらしばらくソファーに座っていた。やがて薬がちゃんと効いてきたうようだ。今日は日曜日なので病院もやっていないし、そう考えれば私には「寝る」という選択肢しか残っていなかった。

 自分の部屋に戻って、ベットにもぐりこんだ。

 薬は効いてきたはずなのに、なかなか眠れなかった。そういえば最近結構忙しすぎたので、まだ気分が昂ぶっているからかもしれない。今自分は熱をだしてうなっているはずなのだが、こうしてのんびりすることも最近なかったな、と不思議な気持ちになった。家にいても会社にいても常にたくさんの出来事が次から次へと私を襲ってくる。時間に追いまくられっぱなしだった。こんな風にただ横になっているのは、何時以来であろう?

 しばらくの間にいろいろなことが私の中を通り過ぎていった。妻のこと、娘のこと、絵理奈のこと、仕事のこと、バンドのこと等々。よぎる記憶は次第に過去に遡る。3年前の事件、妻との出会いや結婚、そして娘の誕生。さまざまなことが走馬灯のように流れていく。やがて私の記憶は学生時代のあの忌まわしき過去へと至るところで、意識は途絶えた。

 私は深い眠りに落ちたのであった。


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