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3.第一日目 夜

 先ほどからやたらと寒気がする。部屋の暖房を全開にしているのだが・・・、今ひとつ効き目がよくない。いや、自分でそう感じているだけかもしれない。

 喉の具合もよくない。次第に痛みが増してくる。こんなことだったら昼間も喉スプレーを持参して行けばよかった。もはや後悔しても始まらない。気休めだが、まあしないよりもしたほうがましだろうと思い、今ここで喉にスプレーをしてみた。しかし朝とは比べ物にならないほどしみる・・・。

 「これは、かなりやばい。」私はとっさに思った。

 完全に風邪をひくパターンである。こういうときは早めに休むのが何よりもの得策である。

 しかし・・・、今夜は妻も娘もいない。私だけの貴重な時間がある。このまま寝てしまうのは非常に惜しい。時間があったら見ようと思っていたDVDソフトもある。ネットも妻のお小言も無く、心いくままやることができる。いつもなら忙しすぎてほとんどできないテレビゲームをする余裕すらある。このチャンスを逃したら、それこそきっとこれから先1年くらいはこんな瞬間こ出会えないかも知れない。

 私は悩んだ。そして最後に出した答えは・・・、誘惑に負けた。

 どうせ明日一日休みがあるのだし、今日少し無理をしたところで朝はゆっくり眠れる。それこそ一日中寝てもいられる。そう考えると気が楽になった。

 一応風邪薬を出してきて口に含んだ。少し苦かったが、これからの楽しいひと時を考えて水と一緒に奥に流し込んだ。寒気を防ぐためにもう一枚暖かいカーディガンを羽織った。

 「さて、何をしようか?」

 私は棚にしまっておいたDVDを取り出してきてプレイヤーにセットすると、自慢のAVセットのスイッチをオンにした。大画面TVと音響システムのコンビネーションにはかなりの自信を持っていた。体をソファーに委ねると、やがて映画ははじまった。全米でもかなりのヒットだったといわれていたアドベンチャー作品だった。そしてそれから2時間、私は画面から片時も目を離すことなく、また耳をよそに奪われることも無く、集中していたのであった。見終えたときの満足感はひたすら格別なものであった。

 次にテレビゲームに手を延ばした。一年近くエンディングを迎えていなかったRPGものがあった。そしてその攻略に入った。今までちょっとした時間だけではクリアできず、ついつい匙を投げてしまったゲームがこういうときにはさくさくと進む。タイミングと集中、それが人間にとっては大事なことなのかもしれない。いつもの余裕の無い自分なら、浮かばないアイデアもこういうときにはどんどんひらめくのである。そしてクリア。「やっぱり万事がこんなものか・・・。」と思ってしまう。何となく気が抜けてしまった。

 もう結構遅い時間になってしまった。既に日付は変わっている。薬を飲んだにも関わらず、ちょっと気を緩めると寒気が襲ってくる。喉も意識すると痛い。「ネットで遊ぶのは明日にしよう。」と思い、メールだけチェックすることにした。パソコンを立ち上げると、やっぱりあれこれと気になる。「ちょっとだけ。」のつもりがずるずるとはまっていく。誰にでもあることだ。また私は誘惑にまけてしまった。体調が悪いと思いつつ、明日行くはずのネットの世界にあっさりと引きずり込まれてしまった。

 時間は午前二時。ようやく私はベットにもぐりこんだ。直ぐに寒気と痛みを感じながらも、深い眠りに包まれていった。有意義な一日であったという満足感とともに・・・。


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