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ファンタジー系

どれいとせいれいじゅつし

作者:

息抜きに長編予定で放置してたのを手直しして投稿

「うーん、どうすればいいかな?」


「抱くなり殺すなり好きにすればいい」


「若くて可愛い女の子は好きだけどさ、こう見えて国民全員が高等教育を受けれて先進国の中でも比較的良心的な民族って謳ってる国出身なんだよ。こっちに来て長いし押し付けられた奴隷って言っても、無理矢理や意味なく殺したりするのに嫌悪感を覚える程度のモラルは残ってるんだよね」


「なら自由にしてよ」


「それはこっちの国の法律が許さない。犯罪奴隷、しかも親殺しっていう重犯罪をした犯罪奴隷を自由にしたってなったら、それこそこっちが犯罪奴隷になるか、首が飛ぶか事になるから勘弁したいな」


乱雑にあっちこっちに物が積み重ねるように置かれた部屋の中。


上等な服を着た男と灰色のワンピースの様な服を着た少女があまり良い雰囲気ではない中で話し合っていた。


「そもそも精霊術士に労働力って理由で報酬に奴隷送られても困るってのが本音だよ。ウチにはキキーモラがいるし、メインで扱ってる人工精霊には家事全般ぐらい幾らでも任せられる程度の調整はしてるのに」


「じゃあ元の持ち主の様に売れば?それで面倒事は解決でしょ」


「元の依頼人からキミの身の上話を聞いてなければそうしたんだけどねー。虐待する親から弟と妹を守る為に殺したって。調べたらマジだしさ、こっちがそういう話に弱いのを知ってて話したんだよアイツは。そしたらこっちがキミの代わりに金を要求できなくなるし、他に売ったりもしないって分かっててね」


「……はっきり決めて欲しいんだけど。結局私をどうするの?」


男が頭を搔き、溜息を吐いて言う。


「弟子や助手の真似事でもしてもらおうかな。精霊術に関して教えるから、それを覚えて僕の仕事を手伝ってもらう」


「いいけど、奴隷にそういう知識や技術を教えていいわけ?」


「法令には定まって無い。魔導契約で縛られてるからってわざわざ奴隷に有利な知識や技術を教える必要はないからね。下手に学習されて魔導契約を破られても困るわけだし」


「なら、私が精霊術で逃げたりするって考えないの?」


「その時は保護施設に居る君の弟と妹に責任を取ってもらう事になるだろうね。生憎、殴られぱなしで泣き寝入りする程には善人じゃあない」


弟と妹の話題が出ると、少女は男を殺意を込めた目線で睨みつける。


だが男はそれに構わず、人工精霊が居れたコーヒーを喉に流し込む。


「だけど、キミが役立つなら保護施設の弟と妹への支援として多少だが寄付金を出そう。そうすれば施設内での扱いも良くなるし、将来施設から出る時の支度金にもなる」


「………何が目的?」


少女は用心深く男の真意を探ろうとするが、如何せん立場が悪い。


だが男は真摯な態度とは言い難いが、少女の問いに答える。


「馬の前にニンジンを吊るす様なものさ。人間って言うのは無理矢理させるよりも、何かしらの見返りを約束して尽力させる方がいいパフォーマンスを叩き出す現金な生き物だからね。そして重犯罪奴隷の家族に寄付金を送るのも法令に反してない。実際どっちにしろ言う事をきかなきゃいけないなら、こっちの方がキミもやる気になるだろ?」


「……それだけ?」


「疑心暗鬼になるのもしょうがないと思うけど、今は信じて貰うしかないな。メーリアン」


「こちらに!」


「わっ!?」


何処からかド派手なファンファーレを響かせながら少女の後ろに出現するメイド。


音と突然現れたメイドに驚いて少女が尻餅をついてしまう。


「お前は普通に出て来れないのか」


「初対面だからこそ、強烈なインパクトを。このメーリアン、御主人に仕える第一の精霊として手を抜く事などありません」


「手を抜かないならインパクトよりも適切な行動を心がけて欲しいな。メーリアン、キミを彼女につける。犯罪奴隷ではあるが、弟子として育てるのでその様に扱ってくれ」


「お弟子?てっきり遂にあのビッチのトラウマを乗り越えてご結婚に向けて動き出したものだとばっかり」


「アイツもキミもそればっかしだな。別にトラウマというわけでもないし、彼女にそんな貧乏くじを引かせる気もない」


「残念ですね。ではでは、お弟子様。私はキキーモラのメーリアン。ご主人に仕える精霊第一号であり、筆頭精霊です」


「キキー、モラ?」


「メーリアンはキキーモラの謙虚さを自然界に置き忘れた代わりにピクシーのイラズラ好きとフェアリーの派手好きをダース単位で強奪してきた様な子でね。まぁ、今回のは比較的おとなし目の登場だ」


「今ので!?」


少女の驚きに男は仕方ないという風に頷くが、キキーモラのメイドのメーリアンは気にする様子はない。


「さっきも言った通り、彼女をキミにつける。彼女から基本的な事を学び終えたら、本格的な修行に移ろう」


「学ぶって、アレから?」


「ああ見えて優秀だから平気さ。後々を考えなければ無教養の傭兵に三日で大学教授並みの知識を叩き込んだ事もある」


「一つ聞きたいんだけど」


「何かな?」


「その後の、傭兵はどうなった?」


「――――まぁ、キミへの勉強はそこまで急ピッチではないから、心配ない。学習スピードよりもしっかりと身にする事の方が大事だからね」


「答えになってない!」


「そういうわけだからメーリアン、彼女に家の中を案内しながら色々と説明してあげてくれ」


「かしこまりました。ではお弟子様、屋敷内を案内しますのでちょっとばかし失礼しますね」


「え、ちょっと!抱えないでよ!」


「ではいざ行きましょう!大丈夫、可憐な容姿をしていますがこう見えて普通の人以上には力があるんですよ」


「そういう事じゃない!ちょっと、放して!」


「お弟子様が御主人以上の精霊術士ならば嫌々でも従わざる得ないのですが、生憎とお弟子様の精霊術士としての力量はゴミ以下なので。このメリーアン、嬉々として抱かせて頂いております。あ、ですが結構臭ってますのでまずはお風呂でキレイキレイしましょう。隅々まで磨いてそこらの御令嬢が裸足で逃げ出す勢いで綺麗に致しますね」


「一人で入れるから!お願いたすけ――――」


泣いて嫌がる少女の救いを求める声も虚しく、内と外の音を完璧にシャットアウトする完全防音な扉が閉まった事で途切れてしまう。


男はそのままコーヒーを飲み干すと、コーヒーのお代わりを要求した。








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