第2話
--あれは何だろう
暗闇の先に小さな光が見える。
まるで黒い厚紙に開けた針穴を除いたように小さくて、でも強い光が見えた。
星かな
とも思ったがすぐに違うとわかる。
星にしては瞬くことはしないし、
何より辺りが夜空にしては暗すぎる。
そんな何もないかのような暗闇の中、
ただポツリと小さな光だけが浮かんでいた。
不思議と隼人にはその光から目が離せなかった。
自分は光に魅せられているのだろうとすぐに分かった。
光には決して消えることがないという安心感がある。
その輝きを見ていると
何も不可能がないのだと思ってしまうほどに力強い気持ちに満たされる。
「羨ましい」
隼人はその光に手を伸ばす。
光は自身の存在の全てをかけてそこに存在している。
そんな気がする。
自分もそんな風に本気になりたい。
あの光のように遥か高みにいきたい。
そう思った時、
隼人の体に未だ嘗てない衝撃が起こる。
それが自分が憧れた光が
自分に向かって真っ直ぐぶつかってきた衝撃だと気がついた時、
隼人の意識は容赦なく刈り取られた。
「うわあぁあ⁉︎」
痛みから逃れようと体が無意識に動いた。
一気に吐き出してしまった空気を取り戻そうと肺が生暖かい空気を吸い上げる。
そして一瞬遅れて典人の脳が「やっちまった」と告げた。
辺りは痛いほどの静けさに包まれる。
教室内にはもう居眠りをしているものは誰もおらず、全ての視線が隼人に集まっていた。
「あ…えぇと、おはようございます?」
その空気に耐えられず、咄嗟にボケをかましてしまった。
「ああ、おはよう。えぇと確か君は…出席番号10番の神城君だね」
「はぃ」
「君が授業中に寝るのは勿論勝手だ。自己責任だからね。だけど私の授業の邪魔をするとあれば私は教師として注意しなければならない。言っている意味分かるよね?」
「…はい、すんませんでした…」
源藤はなんとも嫌味ったらしくお説教をした後、クラスの出席票が印刷された紙の上半分の辺りに何か記入した。
典人の耳には確かに源藤が小さく「じゅう」と呟いたのを聞いた。