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記憶喪失の少年と異世界生活譚  作者: 怠猿
第一章 始まりと記憶喪失
4/5

重鎧戦士【ベルキスト】

「うん、いい名前だね。リーフゥル」


最初に口を開いたのはルーフェルだった。


「シューちゃんもこんな名前付けるなんて思ってなかったよ♪ もう少し、人が嫌がりそうな名前だと思ってたのに」


「ちょっ…! ルーちゃんって私をどんな風に思ってるの!? ちょっと不安なんだけど…!」


シュルジュさんをからかい遊ぶルーフェルさん。

……追いかけっこやり始めたよ…この二人…。


僕はこの間に声を掛けていいのか…。

と思っていると二人は僕の目の前に立つ。

……目が…、怖いです。


「さて、と。リーフクンはさっさと着替えて、着替えて!」


棚の上に置かれていた服を手に取り、それを押し付けるルーフェルさん。その目を見て「どうしてですか?」とは言えなかった。

理由は――気迫が凄すぎる。


僕は、ルーフェルさんから自身?が着ていたと言われた服を手に取り、先程まで寝ていた寝室に向かう。寝室の扉を開けたと同時に後ろから「その服とズボンはちゃんと洗ってあるからね」と聞こえた。


「なんか黒ずくめ…」


寝室に置いてある鏡を見て僕はそう呟いた。


渡された服とズボン両方で闇夜に隠れそうな位の黒ずくめ。それと他に『自身が持っていた』と言われた武器――。

黒く輝く変な形をした物が二つ。

ダガーナイフ三本。

何やら弾らしき物が入った物が種類別で七個。

黒く、細長い筒にトリガーらしき物が付いた奴が一つ。

それら専用?と思われるケースのような奴に入れ――。

それら専用?と思われるケースを腰や足、腕や斜めに肩に巻き付けたり、引っ掛けたりして見事に全ての武器?を服の中やズボンに入れたりしてやっと収容出来た。


再び、鏡とご対面。感想は――

「ご…、ゴツイ……。あ、コートあった」


コートを羽織、その下のゴツイ武器をコートで隠してやっと外に出れる服装に変化。


「リーフクン…。それ不審者だよ…?」


「はい…。僕自身も思いました…」


「リーフゥ…。不審者…」


「はい…。知ってます…ってさっきも言われました…」

僕が寝室で着替えに行ったと同時に二人も着替えたらしく、先程の格好とは全く違った。

まずはシュルジュさんは基本は白を基調にしてあり、膝下三cmほどの短いスカートと上には何やら毛糸? らしき物で編まれた服で、とても可愛らしかった。

最後はルーフェルさん。この人は先程の服とは全く違うが……、服からして軍人にしか見えなかった。紺色のスーツとくるぶしまで隠れるズボン、髪は藍色だが、少し化粧をしたのか、少し目元と口許が先程と違う。


「リーフクン、なんか感想は?」


「少し目元と口許に化粧しました?」


「すごい…! それ誰にも言われないんだよね…」


「リーフゥ。感想ある?」


「可愛いです」


「(赤面)」


あれ…? なんか本当の事言ったら空気が変わった気が…。気のせいじゃ…ない…筈…。


「シューちゃんが悪げのないリーフクンの言葉で赤面し始めたけど話を続けるよ」


「今回はリーフクンのリハビリ代わりに外に出るって感じだよ」


少し間を開けつつゆっくりと話をするのは彼女の優しさなのかイタズラなのか。


「まあ、僕はこんな風に口で言ってるけど、別にリーフクンの身体が心配だから外に連れてって身体が大丈夫なのか確かめるって訳じゃないんだよ?」


「つまり…。僕の身体が心配だから外に行って身体が大丈夫なのか確かめたい…と」


「もう知らないから!」


ルーフェルさんは僕に指を眼前で指差し、その 直後に走り出すルーフェルさん。


「「ちょっと待って!」」


二人の声が重なり、その姿を追いかけるシュルジュさんと僕。

途中で奇妙な馬車の様な、竜の様なものに人が跨り荷物やらを運んでるのを見えた。



~~~~~~~~~~~~~



ルーフェルさんを見つけたのはシュルジュさんが住んでる家から約二十分ほどの公園らしき所だった。その公園らしき所はシュルジュさんが住んでる所から見える大樹の麓にあり、此処で死にかけの僕を見つけた。

とシュルジュさんは言う。

何故、こんな所で死にかけていたのか…?

僕には何も分からない。


「ルーフェルさん――さっきはすいませんでした!」


僕はルーフェルさんの前に立ち、背中を折る。

その僕の行動に彼女は――。


「ふっ……ふふ…あははははは」


彼女は笑った。


「ほんと、リーフクンは面白いよ♪ あんな言葉で僕が怒ると思ってわざわざ僕の所まで走って謝りに来たんだから♪」


彼女は僕の鼻をツンと突いてから一言。


「ここで、決闘デュエルしない? リーフクンのリハビリとして、ね♪」


その言葉に先程まで静かにしていたシュルジュが目を剥く。


「リーフゥ、ダメよ。それにしても…、ルーフェル、貴女の力は異常なんだから…そんな風に戦いを誘わないの」


シュルジュさんのルーフェルさん対する口調が変わった。微かにシュルジュさんの周りに光が集まってるのが自分でも分かるほどだ。

ルーフェルさんが僕の耳元に近付きシュルジュさんに聞こえないように囁く。


(今のシューちゃん物凄く怒ってるよ)


(え…? 怒ってるんですか…? あれで)


(うん、激おこぷんぷんに怒ってるよ。今のシューちゃん)


「二人とも…。何コソコソ話してるのかなあ…?」


口調再び変化。シュルジュさんの周りに光が集まってバチバチ鳴ってる…。


「「あ…、えーと…その…」」


「その?」


シュルジュさんの静かな口調。今は物凄くそれが怖くて恐ろしい。数秒の刹那。


「「すいませんでした!!」」


二人してその場に数秒で足を折り、頭を地面につける。二人同時に顔を上げ――、


「――もう、仕方ないんだから…。リーフゥ。ルーちゃん。そんなに勝負したかったら私が相手になるのに」


「「目が笑ってない! 目が笑ってない!!」」


シュルジュさん怖い…。そんな時だった。


「おい! ここにいる奴ら全員! 金目のものを置いていけ!」


そんな大きな声が奥から木霊する様に聞こえる。周りにいる小さな子供、母親達は震え、その場で硬直している。


シュルジュさんは少し震えながら僕を見ながら意を決したような顔をして僕と向き合う。


「リーフゥ」


「はい」


「早く逃げなさい」


―――――。

―――――――。

え?


「りありい?」


「逃げなさい」


随分と時間が過ぎるのが長く感じた。

確かに少し身体が痛む僕がここにいても荷物になるだけ――次の瞬間僕は何を考えたろうか。

シュルジュさんもルーフェルさんもその光景を見て固まった。


――全身鎧に包んだ騎士みたいな姿。

少しでも動くとガチャガチャとなる鎧の掌の部分で年端もいかない子供とその姉らしき人物に手を振るった。


「金目の物を出さないと痛い目に会うぞ!」


続けて――。


「――俺の名前は『重鎧戦士』ベルキスト様だ!」









噛ませ(ボソッ)

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