目覚め
鋭い痛みが身体中に蝕み、ヤヨイを苦しめる。
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいた…い…。
暗がりの中に一人のヤヨイ。
一人ぼっちのヤヨイ。延々と続く苦しみ。
痛い、痛い。
「辛い、苦しい。悲しい、怖い」
その苦しい世界に眩い光が射す。
その光は温もりがあり、優しさがあり…命があった。
ヤヨイは掠れ掠れな声を出しながらその光に手を伸ばす。
「あ…あ……あ…」
あと少し、あと少しで光に届く。
「う………あ…」
あともう少し、あともう少し…ヤヨイは精一杯手を伸ばす。
――届いた。光に触れた瞬間、懐かしい香りと温もりが――ヤヨイの全身を包み込んだ。
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ヤヨイはどのくらい長い時間を眠っていたのだろう? 一時間? 二時間? もしくは一日か…。ヤヨイは考えてみるが全くもって思い付かない。
最悪の場合、ここは天国だろうか?
けれどやっぱりなんにも思い付かないし、思い出せない。そんな事を明るい世界で考えてると鳩尾に鋭い痛みが襲い掛かる。
その痛みで――現実世界に引きずり戻される。
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「ゲホッゲホッ…」
ヤヨイは咳き込みながら身体を起こすが、身体を動かそうとすると鈍い痛みが全身を襲うがヤヨイはそれを気にせずに少しづつ起き上がり、十分ほど掛かってようやく枕を背もたれにして座る事が出来た。その直後だろうか、
ガチャリと目の前にある木の扉を開けられ、1人の少女が入ってくる。その少女は背は164cm位でショートカットの赤髪を綺麗に切り揃えられていて、赤目の少女――耳が少しばっかり長いのが特徴の少女だ。
「えーと、うーん、えーと…えーと…うーん…うーん、起きた…?」
言葉を選びながら少女は僕に話を掛ける。そのまま少女は話を続ける。
「えーと、うーん、うーんと…えーと…うーん、うーん…君、身体がボロボロの状態であの大樹の根本で倒れてたんだよ…?」
「あ…え…?」
「あ…と、うーん。えーと、え…と、うーん…と、私の名前はシュルジュ。エルフって言う種族で……君は見る限りだとヒューマン…だよ…ね? 君の名前…は……?」
少女――シュルジュは自身の名前を名乗り僕の名前を訪ねる。僕は言葉にしようと口をパクパクと開けるがそれは声にならないで掠れた風しか出て来ない。
「あ…、あんまり無理して喋らなくてもいいよ…。君は…いつ死んでもおかしくない状態で倒れてたんだから…。一応…は…、傷やらは全て塞いだから大丈夫だと思うけど…最低でも今日一日はその状態…でいてね……あ」
シュルジュは僕のお腹をジッと見つめてそこに話を掛ける。
「………ルーちゃん、何してるの…?」
その声に反応するかの様に藍色の髪は一気に起き上がると同時に鋭い痛みが顎に!?!?
「いったーい!? 頭が!? 頭が!!」
「顎が!? 痛い!! ほんと痛いんだけど!!」
「「痛い!? 痛い!? 顎が!?(頭が!?)」」
「………何してるの…?」
哀れな子供を見るような顔で僕と藍色の髪の少女を交互にみるシュルジュ。それより顎が痛い。
「うう…頭が痛い…」
先程からブツブツ呟きながら自身の頭を擦る少女――背は158cmの小型で少し長めの藍色のロングストレートが右目を綺麗に髪で覆い、左目はシュルジュ同様に赤い目…その頭から出てる奴を除けば。
藍色の髪のてっぺんからぴょこりと伸びてる獣耳――が物凄い目立つ少女だった。
「ええと…君の名前は?」
僕は、口を開けて息を飲み込み声を出す。
「ゴメン。何も覚えてい――ゲホッゲホッ…あ…」
「あ、無理して喋んないで、君の身体は死んでて当然だったんだから。僕の名前はルーフェル、見ての通り獣人属だよ。名前は好きに呼んでいいよ♪ ルーちゃんでも、フェルでもルーフでもね♪」
僕は、その言葉に静かに頷く事しか出来なかった。ルーフェルは思い出したかのように指を口許に当て僕に言う。
「あ、そうそう。君が着てた服と持ち物は隣の部屋に置いてあるからね♪」
と、言われて僕は掠れながらの声で「分かりました」と言うと「少しは声も出せるみたいだね、この状態なら明日にでも大丈夫そうみたい♪」手で口許を覆いながら少しとぼけた風に言う。「ただし」と僕に指を指し、
「三回目…? だと思うけど君の身体は本来なら死んでて当然なんだからね? だから決して今日1日は動いちゃダメだからね」
ルーフェルは念押しして部屋から出ていく。シュルジュは「それじゃ…明日また」と言いながら外に出る。
僕は外を眺める。外の風景は幻想的だった。レンガで出来た家などが建ち並ぶ風景…。
僕は…何者なんだろう?