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セイヴァー・レコード 〜とある守護騎士の記録〜  作者: パスロマン
一章 ストファーレ/生まれ変わった身体
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7話 『魔法騎士団入団テスト 開幕』

 宿での朝食を食べ終えてチェックアウトを済ませた僕は、街から城へ渡る橋の前に立っていた。

 すでに城の位置は宿の人に聞いていたので、ここに来るまでに迷うことは無かった。


 橋の前に立つ僕の後ろからは何人かが橋を渡って城の中に向かっていた。その人々は筋骨隆々な男や剣を持った男、そして手に魔導書を持っているような人で、一目で入団テストの参加者なんだろうと分かった。というか、他に城に来る用事もないか。


 どうやらこの入団テストは街の人たちには非公開であるよるだ。そりゃあ厳正な試験にギャラリーがいたら、志願者は緊張してしまうだろうしな。まぁ合格して騎士に就任した人は紹介されるのかもしれないが。


 街の時計を見ると、午前8時10分頃だった。入団テストの志願者が城に集合するのは午前8時30分なので、僕もそろそろ橋を渡ろうかと思ったいると背後から僕を呼ぶ声がした。


「ミルさーん!」


 その声はこの世界に来てからの2日間で最も耳にした声だった。


「リース、来てくれたんだ」


 僕はその声の主の名前を呼びながら振り返った。誰かは分かっていたので、振り向いてから名前を呼ぶ必要は無かったからだ。


「はい。すみません、少し用事があって遅れてしまいました」

「いいって、来てくれただけでも嬉しいよ」

「ミルさんならきっと合格して魔法騎士団に入れますよ。 だから自信持って下さいね! あ、でも、無理しすぎちゃダメですよ」

「うん、心配しなくてもそんなに無理はしないよ。合格出来たとしたら奇跡みたいなものだしね」


 僕はあの力をテスト本番で使えるかどうかの勝負だからね。全く使えなければそれでおしまいだ。


「それじゃあ僕はそろそろ行くよ」

「はい、それでは頑張って下さい」


 そう言って僕が歩き出すと、リースは手を振って僕を送り出してくれた。


 ✱✱✱✱✱✱✱✱


 橋を渡った先には門があり、僕はその門の前に立った門番の人にリースから渡されていたバッジを見せて入団テストの志願者である事を証明することで、門を通ることが出来た。

 門を通った先は大きな広場になっていて、その周りを城が囲んでいるという形だった。これは侵入者を見つけやすいからだろうか。

 

 僕は時間になるまでここで待つことになっていた。

 どんな人が志願しているのだろうかと思い、周りを見てみると、剣を持った屈強な男達が多くいた。やはり剣術は自分をアピールする重要なポイントのようだ。

 他にも魔法のみを使うのであろうひょろりとした男もいたが、どちらのタイプもほとんど僕より年上で20歳から30歳ほどだった。

 

 やばい、僕浮いてるなぁ......


 そう思っていると、僕はもっと浮いた人を見つけた。


 広場の隅の方に僕と同い年くらいの少女がいたのだ。


 その少女は金色の髪を2本のツインテールにまとめた髪型で、腰には2本の剣を携えていた。


 綺麗な子だなぁ。

 これがその少女に対しての率直な僕の感想だった。


 って、僕は何人のことをジロジロ見てるんだ!


 そう思って僕は視線を少女から外し、また周りを見回した。

 一通り周りを見てから、この場にいる人数を数えてみる。......だいたいここにいるのは20人てところか。

 だが問題なのは人数ではない。結局自分の実力を示せるかどうかが重要なんだ。


 そうこうしていると、広場の前方にある台に、赤い髪の女性が登壇する。

 その女性が台の上に立つと、僕達、つまり志願者たちは全員女性の方を向き、その演説に耳を傾けた。


「諸君、今日はよく集まってくれた」


 その声はもちろん、あの騎士団長のものだった。


「私がこの魔法騎士団団長、『エン・ヒートフレム』だ」

 

 そう言えば今まで名前を聞いたことは無かったな。


「ここに集まったものは皆、自らが持った力をこの城、そしてこの街を護るために使いたいと願った者達だろう。私はこの中から、その強い意思と共に、騎士としても高い実力を持ったものが現れることを期待している。もちろん、今日合格出来なくてもまた来年の為にその実力を磨いて欲しい。私からは以上だ。合格した者と共にここを護れることを楽しみにしている。」


 演説が終わり、騎士団長が降段し始めると、僕を含めた広場の全員から大きな拍手が巻き起こった。


 ✱✱✱✱✱✱✱✱


 演説が終わった後、僕達は城の中の一室に案内され、入団テストの説明を聞いた。

 まず入団テストは試験官との一体一の手合わせを行い、その中で志願者の実力を測るそうだ。手合わせの会場にいるのは試験官と志願者のみで、他の志願者は部屋の外で待つことになる。

 手合わせではあくまで自分の実力を見せることが出来るかが重要だけど、もしも試験官を倒すことが出来ればかなり大きな得点になるそうだ。もっとも、自分は自分の実力を見せられるかすら怪しいんだけど...。

 また、本年度の合格者数は『2人』との事だ。これは少ないようにも思えるが、1度にたくさんの新人が入っても騎士団の統率が乱れる恐れがあるからだと言っていた。

 他の詳しい説明は手合わせする試験官が直接言ってくれるらしい。


 そういう訳で、僕は手合わせを行う会場の前で、緊張しながら自分の出番が来るのを待っていた。

 壁は厚くて中の音は聞こえず、出口は別の所なので、中がどうなっているかを先に試験を行った者から聞くことも出来ない。

 前の者が入ってからだいたい5分から10分ほど経つと次の者が呼ばれていた。僕は13番で、今は11番なのであと少しのところまで来ていた。

 

 そして、また扉の外にいる騎士が会場の扉を開け、次の志願者の名前を読み上げた。

 

「12番『シィ・エスターテ』、中へ入れ」

「はい」


 シィ・エスターテと呼ばれたのは、先ほど広場で見かけた少女だった。

 少女は僕と違ってとくに緊張した様子もなく、会場へ入っていった。

 僕と同い年くらいなのにすごいなぁ......とつい思ってしまうが、今は他人のことを考えている余裕はない。しっかり心の準備をしておかねば...


 10分程経ったころ、また騎士が会場の扉が開けて、次の志願者の名前を呼ぶ。


「13番『ミル・アキカゼ』、中へ入れ」


 とうとう来た......。

 僕はまだ緊張が解けきらないまま、会場の中へ入る。

 

 会場には大きな円状のステージがあった。そしてその上に立っている試験官は驚くべき人だった。


「おや君は......そうか、どうやら推薦状を書いてもらうことが出来たんだな」


 試験官とは、騎士団長の事であったのだ。

 というか、ちゃんと僕のこと覚えてくれていたんだ。

 

「はい、この街で親しくなれた方がいたので」

「そうか、それは良かったな。それじゃあ試験について詳ししく説明するぞ」


 騎士団長は続ける。


「まず、剣にしろ魔法にしろ、お互いに直接肉体への攻撃は無しだ。もしそれが可能な時は必ず寸止めにすること。そしてそれが試験終了の合図だ。」

「どちらかが相手への直接攻撃を成功させるってことですか」

「そうだ。」


 騎士団長さんは腰に剣を携えていた。騎士団長さんはそれ一本で戦うのだろう。


「そして私は魔法は使わない。それから最初は君の実力を測るために君への攻撃は行わない。何か質問はあるか?」

「いえ、ありません」

「そうか。では早速だが試験を開始する。さぁ、ステージに上がってこい」


 そう言うと騎士団長さんは腰の剣を抜き、右手で構えた。

 僕は騎士団長さんに言われた通りに、ステージに上がる。もちろん素手で。


「君は『身体強化系』の魔法を使うそうだな。私もこの系統の魔法使いは見たことがないから楽しみにしているぞ」


 珍しいものなのか、身体強化系...。変に期待されて使えずに終わったら恥だなぁ...。

 今の僕に力が使えている感覚は無かった。


 でもここまで来たんだ、やるっきゃない!


 僕は勢いよく駆け出し、右手で騎士団長さんに殴りかかる。

 傍から見たら完全に危ない人だが、僕にはこれしか出来ないのだから仕方ない。


「なるほど、かなりストレートな攻撃方法だな」


  しかし僕の攻撃はを騎士団長さんは右に体を移動してあっさりとかわす。それでも攻撃の手は休めず、次は左手で、騎士団長さんに殴りつける。


「ふっ」


  騎士団長さんは右手に持った剣の刀身で僕の左手を簡単に防ぐ。あの力は使えていないので、黒騎士のときのように剣を破壊することも出来ない。


「くっ」


 僕はこのままではマズイと思い、一旦後方へ下がる。きっと騎士団長さんなら、下がる僕を簡単に攻撃出来たはずだが、先程言っていたとおり攻撃はしてこなかった。


 僕は焦っていた。このままだと何も出来ずに入団テストが終わってしまう......。


 頼むから力を発揮してよ! あの時みたいにピンチを助けてよ!


 だが僕がそう心の中で叫んでもその力は発現しなかった......

今回は実験的にスマホからの投稿となります。

ブックマーク、感想、評価等、励みになりますので、もしよろしければお願いします。

次話以降も同じ時間帯に投稿予定です。

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