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セイヴァー・レコード 〜とある守護騎士の記録〜  作者: パスロマン
一章 ストファーレ/生まれ変わった身体
20/92

19話 『討伐戦に向けて』

 今日の仕事を終えた僕は、リースの家のドアをノックする。


「あ、おかえりなさい。ミルさん」


 リースがドアを開けて僕を出迎えた。


「ただいま」

「今日は昨日の反省を生かして、もう夕食の準備は出来てます!」


 僕が家の中に入ると、リースがテーブルの上に並べられた料理を指さして言った。


「それなら嬉しいよ。じゃあ早速食べようかな」

「はい!」


 僕はリースとともに椅子に座ると、スプーンを取ってテーブルの上のコーンスープを飲み始めた。




「ごちそうさま」

「はい、ごちそうさまでした」


 僕らが夕食を食べ終わると、リースはテーブルの上の食器をキッチンへ運び始める。

 僕も自分の分の皿を運ぶために手元の食器を重ねながら、リースに自分が住む家が見つかったことを伝えることにした。


「リース、話があるんだ」

「はい、何ですか?」


 リースが残りの食器を運ぶためにキッチンから戻りながら答えた。


「今日色々あって、僕がこの街で住む家が見つかったんだ。だからリースのお世話になるのは今日で最後になるよ」

「そ、そうなんですか...」


 リースは少し驚いたように返事をした。


「それは、少し寂しくなりますね...」

「そうだね。...だけど僕もこの街の騎士でなんだから、自分1人で生活できるようにならなくちゃなって思ってたんだ。それに、これからもリースが困った時はいつでも言ってくれていいからね。僕に出来ることなら力になるからさ」

「...分かりました。ミルさんも困ったことがあったら何でも言ってくださいね。私も力になってみせます」

「うん、ありがとう」


 僕達は互いの目を見て、そう言い合った。


「それじゃ、早く洗い物を済ませようか。僕も手伝うよ」


 僕はテーブルの上にある残りの食器をキッチンに運びながらそうリースに言った。


「そうですね、早く終わらせちゃいましょう!」



 こうしてリースとともに洗い物を済ませた僕は、お風呂に入り終えると、明日の会議に備えて早めに眠りについたのだった。


 ✱✱✱✱✱✱✱✱


「リース、本当に今日までありがとね」


 次の日の朝、朝食を食べ終えた僕は借りた部屋の荷物をまとめて城へ向かおうとしていた。


「こちらこそ、今までありがとうございました」


 リースも僕に頭を下げてお礼を言った。


 ...って、これじゃあ永遠の別れみたいじゃないか!


「ははは、リース、別にもう会えないわけじゃないんだからそんなにかしこまらなくていいよ」


 その言葉を聞いて、リースは顔を上げる。


「なんとなく、しっかりお礼を言わなくちゃって思ってしまって...」

「ま、お礼を言わなくちゃって思ったのは僕も同じだけどね」


 どうも僕らはお互い丁寧過ぎるみたいだな。


「じゃあ僕はそろそろ行くよ。新しい家の場所はまた今度伝えるね」

「はい、今日も頑張って下さい!」


 リースの声援を受け、僕はこれまでお世話になったこの家を出た。


 ✱✱✱✱✱✱✱✱


「おはようミル」


 僕がいつもの橋の前に着いた時、シィは既に来ていた。


「おはようシィ。別に今日はパトロールじゃないから待ってくれてなくても良かったんだよ?」

「あんたはどうせいつもと同じ時間には来るでしょうからね。それに1人で城に入っても会議室の場所を探す必要があるし」

「そっかそれじゃあ早速行こうか」


 僕とシィは並んで橋を渡り、城の門番に挨拶をして城の中に入る。


 さて、入ったはいいものの、シィが言ってたとおり僕達は会議室の場所が分からないんだよな。うろうろしても不審だし誰かに聞こうかな。


 そう思って城を見回していると、僕らの後ろの扉が再び開いた。

 そこから僕達と同じ真紅のスカーフをつけた若い男2人が現れる。

 その2人は城の中に入ってくると、僕達に気づいた。

 1人が話しかけてくる。


「お、2人とも確か新入りの騎士だったよな」

「はい、そうです」


 確認するように聞いてきた相手に僕は素直に答える。向こうの格好や口ぶりからして先輩の騎士の方だと思ったからだ。


「俺はカール、こっちはトルンだ。実際に話すのは始めてだが、同じ騎士としてよろしく頼むぜ」

「よろしくお願いします」


 自己紹介も終わったところで早速僕は会議室の場所を聞くことにする。先輩のこの2人なら分かるはずだからだ。


「カールさん、この城の会議室の場所はわかりますか?」

「会議室ってことは2人とも、例の討伐戦に参加するのか。よし、俺達が案内してやる」

「ありがとうございます」



 カールさんとトルンさんに着いていき、僕らは城の会議室に到着した。


 会議室の中には既に多くの騎士が集まっていた。それぞれ2人ずつ隣合った席に座っているので、その2人がそれぞれペアなのだとすぐに分かった。

 今、ペアは5組いた。僕らとカールたちを含めて7ペア。だいたいこのくらいの人数での討伐戦になるだろう。


「じゃ、適当な所に座ろうぜ」


 カールさんが言ったとおり、僕とシィは空いていた席に着いた。


 席に着いてから数分後、8時半よりも少し前頃にエンさんが会議室へやって来る。


「まだ早いが、もう全員集まっているようだし会議を始める」


 それを聞いて、この場にいる全員がエンさんの方へ体を向ける。

 全員の顔を見回してから、エンさんは話を続ける。


「昨日も話したが、明日ブライト森林とその周辺において、魔物の捜索及び討伐を行う。ここに集まってくれたということは、皆、この街のために戦う決心をしてくれたのだろうな。本当に感謝する」


 エンさんは昨日と同じように、ここにいる皆に頭を下げた。


「では今から、明日それぞれのペアが担当するエリアを決めたいと思う。ブライト森林は広いからな、きちんとどこを担当するのかを把握しておいた方がいいからな」


 なるほど、そうすれば1度捜索し終わったエリアを他のペアが捜索してしまうという二度手間を防げるからか。


「では、各ペアごとに1人づつ私のところへ来てくれ。それぞれのペアが出来るだけ戦いやすい地形を担当出来るように話し合おう」


 そう言われた各ペアは、それぞれどんな地形が戦いやすいかとか、どっちが話し合いに参加するかを決め始めた。

 もちろん僕とシィもそれについて決めなくてはいけないが、僕の考えは決まっていた。


「それで、私達はどうするの?」

「シィが自由に決めてきてくれればいいよ」

「え? あんたは要望とかないの?」

「僕は別に得意とか苦手とかいった地形はないからね。シィが戦いやすいところで構わないよ」


 まぁそれも戦闘経験が薄いからで、完全な万能タイプだからってわけじゃないけどね。


「そう、それじゃあ私が決めてくるわね」

「うん、よろしく」


 そう僕に言って、シィはエンさんの下に向かっていった。



 10分程経つと、エンさんの下へ集まっていた騎士たちがそれぞれのパートナーのところへ戻り始める。

 シィも地図を持って僕の元へ戻ってきた。


「シィ、僕らが担当する地形はどんなところ?」

「私達が担当するのは森を抜けた先の断崖よ」

「断崖ってことは崖があるの?」

「ええ。ただ崖の上じゃなくて下の方だけどね。だから落ちる心配はいらないわ」


 まぁ落ちないなら大丈夫かな。流石に戦ってるすぐ近くに落ちかねない崖があったら怖すぎるし。


「それで、シィはどうしてそこにしたの?」

「森の中だと見通しが悪そうだからよ。後ろから不意をつかれたらたまったもんじゃないわ」

「確かにそうだね。僕も見通しはいい方が戦いやすいし、ちょうどいいね」


 例えば豚の魔物と戦った時は見通しの悪さが敵にバレないという利点になったけど、逆にそれを敵に利用されてしまうかもしれないからね。


「じゃ、2人分の地図を貰ったからあんたにも渡しとくわ。明日忘れるんじゃないわよ」

「はは、心配しなくても大丈夫だよ」


 僕はシィに手渡された地図を開いて見てみる。

 僕らが担当するエリアは確かに見通しが良くて戦いやすそうではあるけど、森を抜けた先だから辿り着くのに少し苦労しそうだった。

 明日バテちゃわないためにも、今日はしっかり休まないとダメだな。


「会議はこれで終了とする。明日は8時に街の関所前に集まってくれ。それとここにいる者は今日は全員休暇とするので明日に備えてゆっくり休んで欲しい。では解散」


 エンさんがそう言うと、会議室の中にいたペアたちは部屋から出始めた。

 僕らも話し合い自体は僕らも終わったが、僕には家まで案内してもらうという個人的な用事があったので部屋からは出ずにエンさんの下へ向かう。


「エンさん、今お時間よろしければ昨日言っていた家まで案内してもらってもいいですか?」

「ああ構わないぞ。その予定があるから今は予定を空けてあるしな」

「はい、ありがとうございます」


 明日のためにエンさんも忙しいはずなのに僕のためにわざわざ予定を空けておいてくれるなんて本当にありがたいものだ。


「それで、シィはどうするんだ? まだ帰らないのか?」


 エンさんかまだ部屋から出ていないシィに話しかけた。シィはもう予定はないはずだけど、どうして残ってるんだろう。


「私もミルの家までついていくわ」

「え、どうして?」

「パートナーの家の位置くらい把握しておいた方が後々役立ちそうだし、ついでに私の家の場所も教えておきたいからよ」

「なるほどな、それじゃあシィも一緒に案内するとしようか」

「ええ、よろしく頼むわ。エン姉」


 というわけで、僕らは3人で僕の新居へ向かうことへなったのだった。

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