表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/9

そこは凄惨な光景だった。

ゴールドラッシュ号はバラバラになって海に沈んでいた。

残骸だけが辛うじて海の上から確認できる。

「この状況じゃあ……」

助かった人はいるのだろうか?

そもそも、近づくことができない。

無線で源次が呼びかける。

「ゴールドラッシュ、聞こえるか?」

「……いる……」

その声を拾い、まだ少なくとも操作部には人がいる。

「救助へりを呼ぶ、なんとか持ちこたえてくれ!」

と源次が呼びかけた。

遠目で見ていた竜は妙なものに気が付いた。

「ん?」

一瞬わが目を疑う。

「漁太、なんか見えないか?」

漁太も目を凝らす。

すると、

「ハサミだ!すごいでかい!」

と声を出した。


「マジかよ……」

竜が見たのは直径10メーターはあると思われる巨大なオレンジの塊、それはカニのハサミだった。

「ありえないだろ!あれが船をバラバラにしたのか?」

ドオオオオンという轟音がし、船の残りの残骸を砕いた。

ハサミが船を破壊する瞬間を見て漁太は、

「この船も襲われるよ!」

と言った。

もし、カニ漁船を襲うカニだとしたら、この船もまずい。

すぐに竜が報告を入れる。

「マズいです、逃げないと!」

「なんだとおっ」

源次がすぐに引き返そうとする。

そして、

ドオオオオン、と海上からハサミが出現し、海を切り裂いた。

狙いは外れたが、ものすごい振動と波が船を襲った。

「うわああああっ」

みな投げ出される。

「このままじゃ、カニ漁師がカニに殺されちまうっ」

竜がそう言い、何とか立ち上がる。

次の振動で、船のどこかにハサミが直撃したのが分かった。

「この船も沈没するぞっ」


源次は看板の上に出ていた。

「このやろおおおおっ」

とクレーンを操作し、ハサミに攻撃を仕掛けようとしたが、届かない。

次の攻撃を仕掛けるべく、ハサミが更に空中に伸びた。

巨大な影が船に迫る。

「もう……ダメか……」

源次がそう思った瞬間、海から何かが現れた。


その少し前、竜は漁太にこう言った。

「……この状況を救うには、一つしかない」

決意を決めたような顔である。

「どうするの?竜さん」

漁太が心細い声でそう言う。

「今まで、楽しかったぜ」

竜は看板に駆け出していた。

漁太はその後を追う。

看板に出た時には竜の姿はなく、源次がクレーンで応戦しようとしているところだった。


漁太も、ハサミが振り上げられるのを見て、もうダメだ、と思った。

そして、目をつぶった。

ドゴオオオオンという振動音がした。

しかし、まだ船は形をとどめている。

漁太が目を開けると……


なんと巨大な蛇のような生物がそれを受け止めていた。

細長い胴体を持ち、10メーターのハサミを体で支えている。

「り、リヴァイアサン!?」

源次がクレーンから降りてきて、そう言った。

リヴァイアサンとは、神話に出てくる海のドラゴンである。

リヴァイアサンはハサミに巻き付き、そのまま海の中へと沈んでいった。


ハサミによる攻撃を受けて、船は浸水している。

「救援が来るはずだ、それまで持ちこたえてくれ……」

源次がそう言った。

しばらくすると、ヘリのプロペラ音がする。

「救援だ!」


そして、ヘリからロープが下され、2人は助かった。

へりの中で、漁太はこう言った。

「あれは……竜さんだったんだ。竜さんはドラゴンだったんだ……」

源次には、そう思いたいな、と言われたが、漁太は最後の竜の意味深な言葉を聞いていた。

「守ってくれたんだ」


港に着いた。

そして、車で空港まで源次に送ってもらった。

空港で、

「お世話になりました」

と源次に挨拶した。

「ああ、こっちもな。カニ漁は廃業だ、また就職先を探してくれ」

「はいっ」

そして、飛行機に乗り込んだ。


とてつもなく長く感じたこの10日間であったが、漁太にとっては忘れられない日々だった。


終わり



疲れた~

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ