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船内での異変

異変が起きた。

その無線をオイスター号が傍受した。

「こちらゴールド……近隣の船……くれ……」

ノイズの入った無線から聞き取れたのはこれだけだった。

「こちらオイスター号、ゴールドラッシュ、何が起きた」

「……わか……だが……はや……」

詳細は全くの不明だったが、源次は救援に向かうことを決める。

「わかった、オイスター、救援に向かう」

海で仲間がピンチな時は無条件で助けに行く。

それが海の掟であった。


源次はみなを集めた。

「どうしたんですか?」

水沼が聞く。

「どうやらゴールドラッシュ号が何かトラブったらしい、一番近い船の俺たちが助けに行かねばならん」

その知らせを聞いて、みな沈黙する。

「水を差しおって……」

漁太の隣にいた林治が、聞こえないほど小さな声でそうつぶやいていた。

「ゴールドラッシュは俺たちの船より更に北上した先にいる、俺たちもそのポイントに向かう」

そして、船は進路を変えてそこへ向かった。


漁太と竜は部屋で待機となった。

「船底に穴が開いたのかな」

と竜が言った。

「沈没しちゃうよ……」

漁太がそれを聞いて、つぶやいた。

「救助なんて俺もしたことないよ、初めてだこんなの」

そう言って竜はベッドの上で横になった。


船が進む先は、次第に氷が張り始めた。

やむをえず、スピードを緩めながら進む。

氷に押されて進路が変わらないよう、慎重に。

だが、波は荒れ始めていた。

波の高さが次第に高くなり、船の上を氷と水が直撃する。

とても看板に出られる状況ではなくなった。


漁太は次第に不安になり始めた。

船の中の揺れはますます大きくなり、台風でも来てるのか?と思う。

しばらくして、妙な感じがした。

何か肌さ寒さを感じるのだ。

「竜さん、エアコン効いてますか?」

漁太は聞いた。

「ん?そういや、なんか寒いよな。ちょっと見てみるわ」

竜が起きてエアコンのランプを確認する。

「切れてはないなぁ、外が寒いから調子が悪いのかも」

「え、それ大丈夫なんですか?」

「……まずいかもな、ちょっと水沼さんに言ってくるわ」

もしエアコンが壊れたら、船室は凍ってしまうのでは?と漁太は思った。


竜が水沼のところに向かう。

そして、ドアをノックして部屋に入る。

水沼と林治は相部屋で、2人とも休憩している。

「どうした?」

と水沼が聞いてきた。

「エアコンの調子が悪いみたいで、ちょっと見てもらえませんか?」

すると、水沼が血相を変えて起きた。

「そういえば、気づかなかった。こっちも効いてないんじゃないか?」

そういって吹き出しに水沼が手をかざす。

「まずいな、暖房が効いてないぞ」

エアコンが効いてない。

原因は不明だが、放置していたら大変なことになる。

すぐに原因の探求が始まった。


「室外機の圧力を確認してくる。もし圧力が低下してたら冷媒が抜けてるかもしれない」

と水沼が説明し、材料置きに向かおうとした。

「室外機は外だろう、この状況で出たら死ぬぞ?」

林治が言ったが、

「でも、この状況を放置したらますますまずいことになりますよ!」

と言って、林治を押しのけて向かっていった。

「お前たち、念のため救命衣を着ておけ」

林治がそう指示を出し、漁太、竜は部屋の救命衣を探し、着用し始める。

「沈没するんですか?」

漁太が袖を通しながら聞く。

「いや、たぶん保温性が高いからだろ、もしエアコンが切れたら船室は冷凍庫になっちまう」


水沼が工具一式を持ち、看板の上に出た。

ゴオオオオンととどろく波の音がし、凄まじい風が吹いている。

更に、看板の上は凍り付いていた。

「これが、ベーリング海、だなっ」

水沼は手すりにつかまりながら、室外機のある場所まで移動した。

風にあおられ前が見えず、下を向いて必死にそこまで向かった。

(頼むから、波は勘弁してくれよ!)

心の中でそう願い、どうにか室外機までたどり着いた。

ドライバーで室外機のカバーを外す。

そこにはゲージが付いていて、エアコンユニット内の圧力が分かるようになっている。

それを見た水沼は、

「基準値より低いな、配管に穴が開いて冷媒が抜けたのか」

と思った。

辺りを見渡すと、室外機にも拳大の氷が直撃した跡がある。

「間違いないな」

原因を突き止め、今度は配管をチェックする。

「くそ、肉眼では分からんな」

水沼は一旦戻り、洗剤とスプレーを持ってきた。

泡を配管に吹き付け、そこからプツプツと空気が抜けていれば、そこが穴の場所である。

洗剤を溶かしたスプレーで配管に吹き付けていく。

しばらく吹き付けていくと、プツプツと空気の抜けている個所を発見した。

「あったぞ!」


冷媒が抜けきっていなかったのが幸いした。

それによって配管の穴を確認できた。

水沼はガスバーナーを取って来るべく、材料置きに戻ろうとした。

あとは銅ろうをバーナーであぶり、穴をふさいだのちに、冷媒をバルブで充填すればいい。

そう思って、走り出した。

だが、そこで床面が凍っていることに気が付いたが、すでに遅かった。

「ごっ」

という声と共に、水沼は頭を打ち付け、そのまま気絶してしまった。




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