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十三丁目 障害物1、道で倒れているおばあさんを見つけたときの正しい対処方法

三丁目ノリ→◯。一宮ノリ→◎。神海ノリ→△。天草ノリ→☆。

びたーん!


「うわっ!」


「がっ!」


「キャッ!」


「……」


開始の合図と同時に近衛チームは一斉にずっこけた


「あたた…、なんだこりゃ…」


足元を眺めると細長い糸がぴんと張られている。これは……


「どうだい近衛高校!我等が知力の妙技は!」


高らかに笑ってらっしゃるのは御深平チームのインテリ軍団である。


「ふふふ…我々は今日という日のために昨日の晩、こっそりここに忍び込み、あらゆる場所にピアノ線を張らせてもらった!いつの時代も力は知力がナンバー1なのだよ!!!」


…確かに用意周到なところは賞賛に値するが、賢いというより小賢しい、というか他のチームが軽々かわしているのを見ていると、かわせなかった自分達が恥ずかしくなってくる


「うがーッ!あいつらァ、絶対ギャフンと言わせてやるんだからー!」


「三丁目、行くぞ」


女子2名はしっかりとエンジンがかかったらしい。頼もしいもんだ。


「うーん、でもなんで間山さんは俺達に行かせたんだ?」


首をひねる三丁目、おそらくあの変態校長の命令だろうが、別に俺達で無くても良かったのでは?


「おいおい、んなこと言ってる場合か?全員いっちまったぞ」


「うおっ!」


一宮に言われて我に返ると、誰もいない。並んで倒れる俺達に向けられる観客の視線が痛かった


「い、行くぞ!」


『っしゃぁッ!』


気合が入り一斉に駆け出す近衛チーム!




びたーん!



『………』



…あいつら、マジで泣かせてやる


――――――




「落ち着け神海、わかったから」


「う〜〜〜!」


「イライラすると勝機を逃すぞ、杏奈」


顔を真っ赤にして獣のごとく怒り狂う神海と違い、天草は涼しい表情だ、さすがというかやはりというか…


「おい!あれが第一障害物じゃねーか?」一宮の指差す方を見ると、おばあさんが一人倒れていた


「おいおい…小学生の体験授業か…?」


苦笑する三丁目だったが、おばあさんはとても苦しそうだ。そんな中、御深平チームがおばあさんの隣に這いつくばり、頭を抱えていた


「古宮先輩!」


「少し静かにしてくれ!今状況を分析しているッ!くそッ!!まさかおばあさんが倒れているなんて想定外だッ!僕のパソコンを出せッ!!今データを取り込むッ!」


四人とも至って真剣だ。ふざけているようすは無いらしい、あなたたちはこのゲームの趣旨わかってますか?


「なんてことだッ!IQテストでもあまりの賢さに判定不能だったこの僕がッ!」


さぞかしコンピューターも悩んだんだろうな…


「ほら、いいからどけ」


「な、なんだね君は!」


三丁目は呆れたまま、頭をかきむしるインテリ眼鏡をどけた


「ばあちゃん、立てるか?」


「おお、おお、ありがとうよ…」


おばあさんに手を差しのべる三丁目を見て、驚愕の色を隠せない御深平チーム。なんだか俺がバカにされている気がする


「…負けたよ…完全敗北だ…」


古宮はガクリと膝をつき、潔く負けを認めた


「どこのジャンケンこぞ…うわッ!」


頬を鋭い衝撃が横切る


「フシュァァァ…」


「お、おばおば」


三丁目の頬から血がつつっと流れた


『えー、第一障害物はおばあさんを倒すことです』


「んなアホな!たわっ!」


「キェェェェ!!!」


さっきまで穏やかな顔をしていたおばあさんが目をひん剥き、手刀で襲ってくる


「た、戦え三丁目!」


「老人相手に戦えるかアホッ!」


「に、逃げるんだ!」


とりあえず御深平チームを加えた一行は元来た道を猛スピードでもどる



「キェェェェ!わしゃまだ死なんぞォォォ!!!年金たんまり貰ってから死んでやるゥゥゥゥ!!!」


こ、こえぇぇぇ!


「なんかいい案ないの一宮金次郎!言わずと知れた勤勉家になるはずだった男!!!」


「無理だ!戦闘力以前に道徳的に無理ッ!!!」


「てか他のチームも無理だろこんなん!」


「………」


天草だけがこの事態に動じず、一人物思いにふけっていた


「おい、どうした天草?なんかいい案でもあるのか?」


「一つだけある」


指を一本、神妙な顔付きで三丁目の前に立てる


「マジか!聞かせてくれ!あのばあちゃん、老人の体力じゃねェッ!こっちが先に潰れちまうッ!」


後ろを振り返ると、おばあさんの間合がさっきより詰まっている。あ、古宮が転んだ


「だけどこれは茨の道だ」


「できれば血生臭いやつじゃないのを!」


古宮の悲鳴を精一杯無視し、ひたすら走る走る


「耳を貸せ」



…………


……


……なるほど


「さっき…から…何…話し…てん…の…」


「……すまん、金次郎」


「は?」


バッ!


「ギャァァァァァ…!」


許せ…!お前の犠牲は無駄にはしない…!


三丁目に足掛けを喰らった一宮は勢い余ってゴロゴロと後方に転がっていった…


……



「ひどいわねアンタ」


「まったくだ」


神海はわかるが、発案者の天草にまで冷たい視線で睨まれる


「い、生きるためだ、それにあいつならきっと帰ってくる、俺はそう信じてる…ん?」



「待ぁぁぁてぇぇぇコラァァァァ!!!」


「い、一宮!?ギャンッ!」


三丁目は勢いをつけた一宮のドロップキックをもろに喰らって10メートルほど吹っ飛んだ


「はぁはぁはぁ…」


「ア、アンタどうやって…」


「ああ!?ばあちゃんならお茶会があるからとか言って帰ったよッ!」


息も絶え絶えに怒鳴り散らす一宮、制服がボロボロだ


「ふむ、もうそんな時間か」


『は?』


一宮と神海が同時に素っ頓狂な声を出した


「いやなに、あのおばあさんは私の隣の家に住んでる東片トメさん(105)だからな」


………



「は、謀りやがったな…あまく…さ…」


三丁目はしばらくぷるぷると震えていたが、やがて動かなくなった

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