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ねむり姫

作者: そらかける

……♪


ある国に眠り姫がいる。


彼女は悪い魔女によって眠りの魔法をかけられ、ドラゴンが護る城で一人眠っている♪


 ♪


彼女を目覚めさせるのは運命の相手のキスのみ♪


 彼女は今も眠っている、今も……♪







「ここが彼の眠り姫の城か…」


 やめましょうよ王子ぃ、ドラゴンにたべられたらもともこもありません!


 まだ城の中にはいってもいないのに、威嚇するように地を滑って震わすドラゴンの咆哮。

 僕はびびって王子の後ろに隠れた。


 僕は、イヤハ。ルーン国の王子の従者です。


 僕が仕える、王子…ルファンさまは外見こそクールで、声に抑揚がなく、またすらりとした四肢。端正な顔に、理知的なブルーアイは人に冷たい印象をあたえる。


 けれど、実際は怖い物知らずの上、面白いこと好き。外見とは正反対な性格をしていた。


 お陰で僕はこの王子に振り回されっぱなしなのだ。


 そして今回、眠り姫の話を国を訪れていた吟遊詩人から聞いて僕を連れてはるばる半年もかけて眠り姫が実際に眠っている城まで「遊び」にきた。


姫を助けにではない。もちろん妻にしに来たわけでない。


 ただその話しが本当か否かをたしかめるために来たのだ。


「大丈夫だ、この世にドラゴンなんて架空生物はいない。魔女はいるけどな」


 なぜ、魔法を信じるのにそっちは信じないんですか?


 と言う突っ込みは聞かず「入るぞ」と、王子は扉をあけてさっさと中へ進む。


 中に入った瞬間、ムッとした腐臭が僕たちをつつむ。

 僕は思わずえづいた。


「…お、王子、この匂いは誰かの腐乱死体があるのでは?

「かもしれんな。いくぞ」



いくって、おいていかないでください!


 勝手に螺旋階段をみつけてドンドン先に進む王子のあとを僕は一生懸命におった。


 注意してみれば、この城は蜘蛛の巣だらけで人気がない——だけれどドラゴンの咆哮は強くなる一方——きっとこの螺旋階段を上りきったところにドラゴンと姫がいるんだ。


 しかし、王子がなんの躊躇もなくあけた最上階の扉の奥には——咆哮をあげるドラゴン……、もとい、城をも震わせるほどのイビキをかく姫さまがひとりきなびた天蓋付のベットに眠っていた。



 ——って! 


咆哮じゃなくてイビキ!


「これは眠り姫でなく、イビキ姫だな」


 と言い当て妙なことを一人でいって吹いている王子に白い目を僕は向ける。


 じゃあ、さっきの腐臭は口臭の匂いだとおもうと、それもなんだが複雑で、はやくこの匂いを洗い落としたい衝動にかられる。


 にしても。


美人が台無しだ。

 例え美しくとも、一般的にたえられないモノがあると関わりあいたくないものになる。


 姫のイビキがドラゴンの咆哮ににている…だなんてロマンティックな冒険も夢物語もありませんね。


「だが、姫の呪いはキスでとけるという……」


 王子は怪訝に細い眉を寄せて、ため息をついた。


「… が、咆哮ともつかぬイビキと、口臭と鼻息と体臭にたえられるものは本物の勇者だ…。いや…それでも姫を妻にしようとした男があったそうだが、この姫はムリに起こそうとすると狂戦士のように暴れ狂い、見る影もないほど顔を潰されたという裏話をきいた…イヤハ、起こしてみるか?」


 僕はぶるぶると首を横にふった。


 僕にはそんな勇気はございません。……っていうか、裏話があるってことは、もとから眠り姫でなくイビキ姫だってわかっていたんですか!



 なら、王子が試してみたら?



「俺にもムリだ」



 そういって僕たちはそっと姫が眠る城の門を閉じた。


 入った時は逢う魔が時の不気味な赤い夕日を背景にたっていた眠り姫のお城だったけど。


城をあとにした時には満点の星空を背景に立つ孤独な城だとしった。

悲しき咆哮ともとれる姫のイビキを耳にしながら僕たちは新たな伝承を探しに旅立つ。


終わり

リクエストがあればどうぞ。

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