処刑された聖女ですが、ざまぁは弟子に任せました。でも、そこまでやれとは言ってません
ギロチンの刃が落ち、私の首が切断された。
聖女の私が無実の罪をきせられ、処刑されたのは、この王国が腐っていたからだ。
私の見通しが甘かったとも言える。正直、ここまで腐っているとは思ってもいなかった。
聖女。
少女達のあこがれであり市民達に敬愛されている存在。
だが、それは表向きで、実際は貴族連中の慰み者だったのだ。
世間で愛されあこがれられる女性を作り上げ、その女性を好きなように性のはけ口にする。
なんとも悪趣味なシステムが、この王国の歴史で続けられていた。
私は、その聖女の実態を知り、廃止するように王国に要求した。
そう簡単に廃止できないと言われた。
そんなはずはない。聖女を無くせばいいだけの話だ。
王国創立からの続いているシステムだとも言われた。
いままでやってきたから続けるなんて理屈はおかしいだろう。今すぐ無くせばいいだけだ。
王国上層部の団結に必要だとも言われた。無くなると権力争いが始まり王国の不利益になるとも言われた。
どう考えても、続けた方が王国に深刻な問題が発生するだろう。
国外のお偉いさんの接待に必要だとも言われた。
それならば、せめて、聖女は商売女にしろと私は要求した。私が問題視していたのは、立場の弱い家の令嬢を強制して聖女にさせて、自殺者を多数出していることだった。
次から次へともっともらしい理屈が返ってきた。
それっぽい理屈だったが、ようは嫌がる育ちのいい女の子を抱きたいわけだった。
私は王国と一年ほど交渉を続けた。
まるで進展しないやりとりの中で、次の聖女が指名された。
私の親友だった。
ここで私は強硬手段をとった。
私が強引に聖女になったのだ。
私はこの王国では結構な権力をもつ家の令嬢で、王国一の天才魔法使い。多少のごり押しはできる。
私は聖女になった上で、性の相手を拒否したのだ。
私は小娘で腕力もないが、三階建ての建物ぐらい一瞬で消し飛ばせる魔法を使える。
このまま三十年ぐらい聖女として居座り、裏などない聖女を定着させるつもりだった。
そうはならなかった。
私の考えが甘すぎたためだ。
暴力を使って襲われるとしても、人気のない場所でやるだろうと思い込んでいた。
聖女問題を一緒に解決していく味方だと思っていた教会長に、神聖な教会の中で、出された飲み物に睡眠薬が入れられているなんて想像もしていなかった。
眠らされた私は、王国の監獄に運び込まれ、魔法封じの監獄に閉じ込められた。
そこで、私は強制的に男たちの性の相手をさせられることになった。
とんでもない数の男が、聖女システムに関わっていた。貴族男性の八割、騎士団長をはじめとする男性騎士団員、教会関係者、王族、他国の高官。
私を牢獄に閉じ込めた時点で、私を生かして解放するつもりはなかったのだろう。何をしてもいいことになった女に、男たちは遠慮などしなかった。性暴力と言うのは無理矢理に抱かれるイメージだったが、実際は尊厳破壊の暴力を主体に性欲発散を重ねる凶悪なものだった。
私を牢に閉じ込めた連中は、世間に私の悪評を流した。聖女の地位を利用し王国の税金で贅沢三昧をしている極悪人だと。
そして処刑が実行された。
ギロチン台の刃が落ちる前に、私の目の前に王子が現れた。
私は王子の婚約者だった。
かならず助けるから、それまで耐えてくれ。
そう言い続けた王子は、処刑が実行される直前で私に優越感丸出しの笑顔をみせた。
そこで、ようやく私は気がついた。
王子こそが私を処刑する首謀者なのだと。
どうしてこんなことを?
私の問いに、王子は答える。
王族でもない奴が、この王国のやり方に口出しするからだ。
じゃあな。おまえは婚約破棄だ。
そう笑いながら言って、王子は処刑開始の合図を出した。
ギロチンの刃が落下してくる音を聞きながら、私は思った。
私は本当に人を見る目がなかったな。
「失敗しちゃったな」
と、私は口に出す。
断頭台で処刑された私は、自分の魔法使いの工房で、お茶を飲みながらいままでの出来事を整理しながら記録していく。
処刑は決行されたが、私は死んでいない。ギロチンで首をはねられたのは、私そっくりな魔法人形だ。天才魔法使いである私が開発した、魔法で遠隔操作できる人間そっくりな人形。その存在を知っているのは弟子のバーバラとコニー師匠の二人だけなので、世間には私が生きていることはばれていない。
聖女問題に手を出すとき、私はまあうまくいかないだろうなと思い、身を守る保険として魔法人形を影武者代わりにしていたのだ。
対人交渉は自分でも向いているとは思ってなかったが、他人にこんな危険なことをさせるわけにはいかなかったので、やってみたが完全に失敗した。
ここまでうまくいかないとは思っていなかった。
私の人を見る目が、まったくなかった。
味方だと信じていた王子や教会長が完全に敵だった。
私はお茶を飲みながら考えを巡らせる。
さて、どうしたものか?
長期戦で取り組むしかないな。
そんなことを思っていると、私の弟子のバーバラがお茶のおかわりを注いでくれる。
「あいつら、許せません。師匠に、あんなおぞましいことを」
私のために怒ってくれるのはうれしいが、お茶はもっと丁寧に注いでほしい。ちょっとこぼれてる。
「師匠、あいつらにどんなさまぁをするつもりですか?」
「えっ?そんなことしないわよ。牢獄で乱暴されたのは魔法人形だし、女神様に依頼されていた魔王退治を先に片付けないと」
弟子のバーバラはびっくりした顔になる。
「まさか、魔王退治を引き受けるんですか?ほっとけば、魔王がこの王国を滅ぼしてくれるんですよ」
「この王国全員が、私を貶めたわけじゃないでしょう。今回、失敗しちゃったけど、敵が明確になったから、もしざまぁするつもりならこの紙に書きだした奴らだけよ」
牢獄で私の魔法人形をなぶっていた男たちのリストを、弟子のバーバラにみせる。
「それじゃあ、私は魔王退治にいってくるから、ざまぁの方を片付けておいて」
と、私は、ざまぁをするかもしれないリストの紙を棚に片付けておいてほしいという意味で、そう言った。
「わかりました」
と、弟子のバーバラは答えた。
魔王退治は思ったよりも時間がかかり、三か月後によくやく私は王国に帰ることができた。
そして、王国の姿を見て、私は唖然とする。
王国の城は六分の一ほどの残骸を残して崩壊しており、貴族たちの居住地だった高級住宅街は焼け野原となっていた。
呆然としている私の前に弟子のバーバラが胸をはって現れる。
「師匠。ちゃんとざまぁをやっておきました」
私は、今は引退しているコニー師匠の言葉を思い出す。
あなたは言葉足らずのところが多いし、バーバラちゃんは思い込んで行動することが多い。気をつけないと、いつか大事故がおこるわよ。
大事故おこった。
「ええっと、王子はどうなったの?」
「死にました」
「あー、死んじゃったか。教会長は?」
「死にました」
「死んじゃったのね。騎士団長は?」
「死にました」
「長老院の老人達は?」
「みんな死にました」
「どうやったの?」
弟子のバーバラはセンス抜群で将来歴史に名が残るぐらいの魔法使いになるだろうが、現在は発展途上で王国の騎士団相手に勝てるレベルではない。
「その説明の前に、この物語を読んでいるみなさまに、注意があります。ここから先に、かなり不快な表現があります。特に食事中の方は注意してください」
注意。
ここから先に、不快な表現があります。
生きているゴキブリを食べさせるぐらいの嫌悪あることが書かれてます。
「では、説明に戻ります。師匠が牢獄でされたことを、王国全体に報道したんです。あえて、加害者の男達はわからないとして。王国民は師匠の処刑の真実を知って怒り、加害者の男達はそ知らぬふりで犯人に怒るポーズをとってました。で、一週間たった後、処刑されたのが魔法人形だとばらした上で、魔法人形の嘘の作り方を公開したんです」
「魔法人形の嘘の作り方?」
「あの魔法人形の実際の成分とは違う嘘の材料を広めました。あの魔法人形の材料の九割は、大量のゴキブリを潰したものでできている、と」
「うわっあ」
「だから、あの魔法人形のだ液とか汗は、ゴキブリを潰した汁だと。それで、まず、教会長が胃の中のモノを全部吐き出して」
あの教会長、若い女のだ液は最高じゃとか言って、あの魔法人形に無理矢理ディープキスしまくってたからな。
「それで、教会長はそれから食事が一切できずに。餓死しました」
「あー、なるほどね」
「教会長があの魔法人形にしたことが王国民にばれて、教会施設はすべて暴徒に破壊されました」
「ああっ、教会も破壊されたのね」
「いまの王国では、教会関係者だったことがばれたら、集団リンチになります。魔法人形を抱いた男達はみんな体調を大きく崩し、誰が性暴力に加担したの王国民にまるわかりになりました。名誉が堕ちた騎士団長は自殺しました。まったく、死ねば自分がやったことがチャラになるなんて考えてるなんてどこまでも卑劣なものですね。それと、もう一つ嘘をつきました。いままでの歴代聖女も魔法人形だったと。それを聞いた、長老院の老人達は全員ショック死しました」
「あー」
「最後に聖女で性接待を受けていた他の国に、魔法人形のことを伝えました。怒り狂った外国の権力者達が工作員とか暗殺者を大量に送り込んできて、暴動やら王族の暗殺やらが毎日のように起こり、根を上げた王国が王子を生贄として差し出したのです。やってもいない冤罪でギロチンになりました」
私をギロチンにした王子を、ギロチンにするとは、弟子のバーバラは魔法だけでなくざまぁのセンスもあるようだ。
「師匠、ちゃんとざまぁをやっておきましたよ」
私にほめてもらうことを期待する弟子のバーバラ。
私はかつてコニー師匠に弟子入りした時に言われたことを思い出す。
あなたは大雑把で起こった出来事を肯定するタイプだから、魔法使いに向いているわよ。
まっ、いいか。
「よく、やったわね」
と、私は弟子のバーバラを褒めた。
おわり




