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4話 火竜王討伐後の帝都

帝暦250年1月 ローゼンブルク帝国フェルトシュタット市


 帝都フェルトシュタットでは盛大なパレードが行われていた。

 紅鳳騎士団の団旗とリューネブルク公爵家の月の家紋の入った旗を掲げて、帝都を行進する。

 見目麗しい貴族達が歓声を上げる帝都民達の前で足並みをそろえて帝都の入場門から皇城フェルトブルクへと進む。運ばれているのは巨大な馬車の上にのせられた人を飲み込めそうな巨大なドラゴンの頭蓋骨だった。


 紅鳳騎士団団長のイザーク・フォン・リューネブルクが煌びやかな黄金の剣を空に掲げると、帝都民は大いに盛り上がるのだった。


 帝城フェルトブルクの貴族棟にある3階のカフェテラスからその行進を冷ややかに見ている男がいた。カール・ハーゲン・フォン・リューネブルクという名を持つ40歳ほどの男である。

「よくもまあ、あのくだらない真似事を嬉々としてするものだ」

 自分の息子の晴れ姿を反吐が出るとも言わんばかりにぼやく。

「旦那様、貴族としての務めでございますれば」

 それを窘めるのは横に立つリューネブルク家に仕える老執事であった。

「そうか?確かに多くの者に認めさせるには必要であろう。だが、後に引けぬことになる」

 カールの言葉に執事は黙る。彼はカールの波乱万丈な人生を知っているからこそ言葉の重さを知る。

 かつて嫡男と期待され、大失態を演じて嫡男から外された男だ。だが、内乱の折に帝都の英雄側について他の後継者候補を弟達を国賊として殲滅し、公爵位に辿り着いた。現在ではリューネブルク公爵領を率いる大貴族であり、帝国軍閥の筆頭貴族にもなっている。

 リューネブルクは代々己の思考を後継者に押し付けないのが家訓である。己の子であれば身分に問わず教育は施せ。生き残った者がリューネブルクである。

 そんな生まれた時より兄弟姉妹が最大の競争相手というハードな家であるからこそ家族の中でも上下関係を付けようとするし、より栄誉を手にしようと小細工をする。

 現当主は上から子供たちの争いを眺めるだけである。だからこそ、他人の恩賞を奪い我が物顔で凱旋する愚かな息子を見て溜息を吐きたくなるのも仕方ないものだった。


「ところで何かあったのか?まだ会議には早いと思うが」

「帝都にアルノルト殿が来ているようです。」

「ルミヤルヴィが手に入るかもしれんというのに、余計な口を挟まれても面白くないな。政治に興味のない男だし、騎士団の連中に脅しつけるように言っておけ。あとルミヤルヴィの周りが嗅ぎつけているようなら排除するようにもな」

「ルミヤルヴィの周りですか?」

「ヘレントル高等学園のせいで、ルミヤルヴィの交流関係が広がっていて、誰が奴らの味方なのか分からん。アルノルトに火竜王討伐は自分たちがやった、紅鳳騎士団は後始末をしただけだ、などと証言されたらひっくり返るだろうが」

「アルノルト様が火竜王討伐を進言して、イザーク様がそれに帯同するとして始まった事です。これは多くの者が知っている事。確かにそう言われればイザーク様の功績の信憑性が消えますね」


 ルミヤルヴィの後継者不足は帝国7大貴族の間ではちょっとした問題だった。

 内部から崩してルミヤルヴィの頂点に傀儡を立てようとするバイマール候とグロスクロイツ候。

 現辺境伯のアレクサンドラを娶ってルミヤルヴィ手にしようとするリューネブルク公子。

 第一継承権を持つラーナスト家を手に入れて、ルミヤルヴィを手土産にヴェルザー西方伯の地位に就こうとするベルトハイム伯。


「別に俺はルミヤルヴィを欲しいとも思わないんだがな」

「イザーク様が提案したのを許可したのはルミヤルヴィを手に入れたいからだと思っていましたが」

「馬鹿を言うな。リューネブルクは大河沿いにある栄えた都市を多く持つ。落ち目のバイマールやグロスクロイツと一緒にしてくれるな。リューネブルクの次期公爵の座を手に入れる為の行動は許容するだけだ。だから……危険を察知すればさっさと切り捨てる。それまでは手を貸してやるさ」

「旦那様は恐ろしい事を…」

 クツクツと笑うカールに対し、執事は畏れを抱くのだった。

 可愛がっている子供だって簡単に切り捨てる。リューネブルクの厳しい爵位継承争いを一度最下位まで落ちて尚、プライドを捨てて敵対関係にあった男の下について公爵位をもぎ取った男だ。

 他の貴族達のように自身の権力で遊ぶような脇の甘い事はしない。


「紅鳳騎士団で、帝都に来てる暇な奴らに声をかけておけ。お前はギルドやアルノルトに警告だけをして来い」

「承りました。ではそのように」


 執事が去り、カールはカフェテラスからパレードを眺める。

「ルミヤルヴィは強力な手札を多く持っていて軍閥貴族筆頭の俺でさえ介入不能の魔窟だ。権力を武力で捻じ伏せたヴォルフみたいな頭のおかしい連中が、本当に権力でどうにか出来るのか見物だな。イザークは果たして生き残れるのかね」

 自分と同じ凡人である息子が、軍閥貴族の掃き溜めと言われるルミヤルヴィを御せるのか見せて貰おうと眺めるのだった。




***




 帝都フェルトシュタットの大通りはパレードでにぎわっていた。

 火竜王討伐を成し遂げた4名の冒険者は、自分たちの武功を利用してちやほやされている騎士団を眺めて、うんざりした顔で二階のテラス席でパレードを眺めていた。


「これはひでぇ。帝国は腐っているとは聞いていたがここまでとはな」

 美麗の剣士レオンはゲラゲラと下品に笑って事もあろうにパレードを指で差していた。

「帝国は平和ボケしてしまったのだろう」

 緑の髪をしたエルフの青年ミロンはぼそりとぼやく。青年と呼ぶにはいささか年齢が高いのだが、エルフの中では下から数えた方が早いほど若いエルフである。


「平和ボケ?」

 大剣を背負った巨漢の戦士アルノルトは半眼でミロンを見る。

「帝都には外敵が無く、戦はない。権力者は自由に権力を使えるからな。敵は内側に作られる。平民や他国民、冒険者の手柄なんて奪っても問題ないと思っているんだろう。騎士などは強さなどなくても飾りだからな。宝石を見せびらかすのと同じ事だ」

「その所為でこっちは迷惑するんだがな」

 アルノルトは溜息を吐く。


「僕の知る権力者は民の為に率先して戦ってたけどなぁ」

 銀髪の美少女と見まがう少年フレデリクは首を傾げる。火竜王と称される事となったドラゴン討伐の為に、この冒険者パーティを集めた中心人物である。

「ルミヤルヴィは今でも最前線だから当然だ。帝国はまだルミヤルヴィだけでなく、レーベンベルクも抱えているんだがな。150年前、共に肩を並べた戦友の子孫が率先して腐らせているから悲しい所だ」

 ミロンが残念そうに口にする。

「エルフの感覚だとそうなんですね」

 ミロンは150年前に行われた邪神戦争の英雄だ。エルフの英雄と言えば誰もが知る有名人である。

 邪神戦争で邪神と戦った鬼神王の参謀として働き、その記録を本にして出している為、世界中の人が知る物語の作者でもある。


 フレデリクの故郷ルミヤルヴィは、魔神の眷属の拠点である西部迷宮の防衛基地の役割をしている。ルミヤルヴィ辺境伯領は常に魔神の眷属との戦いが課されていた。ミロンが言うように、常に最前線だ。

 迷宮を放置しすぎると魔神の眷属が邪神戦争の時のように表に出てきて悪さをするからこそ、人類は戦いをやめられない。


「実際、どうなんだよ、アルノルト。…って、知ってる訳もねーか、お貴族様の事情は」

 レオンが話を振るとアルノルトは肩を竦める。

「帝国が腐っているのを知っているから冒険者になったんだ。それこそ、ミロンが言うように俺は帝国が抱える魔神の眷属の拠点を囲っているレーベンベルク伯爵家の次男だからな」

「うっそだろ?お前がいいとこの坊ちゃんかよ?そんな筋肉だるまなお貴族様なんて見た事ねえって。ギャハハハハ!」

 レオンは腹を抱えて笑う。黒髪の美形剣士で黙っていれば多くの女性を虜にするような男なのだが、傭兵団出身で粗野だから喋らせると多くの女性を幻滅させると周りから言われている男でもある。


「貴族様に対してその物言いはどうなの?」

 フレデリクは引きつってレオンを伺う。

「次男なら家を継がなきゃ貴族でもなんでもねーし、問題ないだろ」

 レオンは手を振って問題ないと笑い飛ばす。

 フレデリクも肩を竦めつつ、剣聖フェルディナントは現レーベンベルク伯だったと思いだす。


「奇しくもルミヤルヴィの騎士の子、レーベンベルクの次男がいて、真の勇者の称号を持つ者が私と共にいるのだから、偶然と呼ぶには出来過ぎているな。長く旅をしているが、鬼神王以来の豪華なメンバーだ」

 ミロンの言葉にフレデリクらは互いに見合って露骨に顔を歪めていた。

 この寄せ集めの雑多な冒険者集団が勇者御一行様と並ぶ豪華メンバーと言われても、という気持ちでいっぱいだった。


 何せミロンに押しかけ弟子をしつつも復讐の為に魔法を習う子供。

 その子供にスカウトされたのは、口数の少なく何を考えているか分からない巨漢の冒険者アルノルトと顔は綺麗だが性格が汚い勇者の称号を持つ悪逆非道の元傭兵レオン。


 確かに経歴だけなら美しいおとぎ話のようなパーティだが、中身は非常にひどいものだった。

「英雄に幻想を抱くのは分かるが、長らく英雄の類を見てきた私からして、大体こんなもんだぞ。ヴィルだって敵を潰すのにえぐい事なんて平気でやる。あの子が人類の守護者たる自覚が無ければ弟子になんてしようとも思わなかった」

 フレデリクは領主様がそんな悪い事なんてするはずがないと言いたいが、口にすると涙が出そうになるので口にできなかった。

 ルミヤルヴィ崩壊の報を聞き、さらに両親が死にルミヤルヴィを見ること自体を畏れていた。これ以上、誰かが死んでしまっては心が壊れそうだと本能的に忌避していた。


「でも、帝国ってそんなに腐ってるのか?成り上がるなら帝国が手っ取り早そうなんだがな」

 レオンはアルノルトに訊ねる。

 アルノルトは『こいつ何言ってんだ?』という感じで顔をゆがめ、そして盛大に溜息を吐く。

「学生時代のクラスメイトは帝国最大の英雄だった」

「あん?」

 アルノルトはぼそりと呟く。レオンは不思議そうに首を捻る。

「そいつは平民だが化物みたいに強くてな。帝都内乱でとある皇子に手を貸し、皇帝にして見せた。帝都の英雄と言えば俺の世代じゃ知らねえ奴はいない。学生時代から一度たりとも勝った事が無かった剣士だ」

 フレデリクは帝都内乱の事は聞いた事はあるが、何故起きたのか、何で終わったのか、誰がどうやって、そういう部分を教わってはいなかった。

 帝都の英雄と聖女が現皇帝を導いたのだという話だけは聞いていた。吟遊詩人が歌っているから何となく内容は分かっている。


「さぞやお偉い騎士様になったんだろうな」

「内乱後、帝国貴族達は、皇帝が権力を手に入れる前に寝返って、戦後の褒賞を強請り、帝都の英雄を適当な理由を並べて帝都から追い出した。実利皆無、一代限りの名誉爵位と皇女殿下を下げ渡して終わりさ。結果、帝国は未だ貴族達によって腐らされている」

「それだけ活躍してそれじゃあ、この国で成り上がるのは無理って事か」

「それを知って俺はこの国を捨てると決めた位だからな。皇帝になった同級生はまともな奴だし頭も良かったが、それでも腐った帝国はどうにもならないのだと分かっただけだ。あれが無理ならこの国に未来はない」

 アルノルトは自嘲する。

 実際、アルノルトは帝国の外に現地妻があちこちいる。本当に帝国に見切りをつけているとフレデリクやレオンも察していた。


「で、そのクラスメイト様はどうしてんだよ?田舎で惨めに騎士やってんのか?」

「火竜王に殺されたという話だけは聞いたが……」

「何だ?そこで持ち上げるだけ持ち上げといて、俺の方が強かったってオチか?」

 レオンはゲラゲラと笑う。

 フレデリクはそうは思わなかった。街を守りながら戦うのは不可能だ。だからこそ町を偽装して火竜王を人の居ない場所に追い込んで戦ったのだ。火竜王を何度も追いかけては返り討ちに会っていたフレデリクであるが、どんなに被害者を少なくしようとしても街の5割以上が滅び数千、或いは数万が死んでいる。

 ルミヤルヴィがどれほど死傷者が出たのか知りたくもなかったし知ろうともしなかった。


 アルノルトは肩を竦める。

「そうじゃない。守る者のない俺達と、守る者の為に死んだ奴との違いだ。火竜王退治は、俺と奴の決着を勝ち逃げさせられた憂さ晴らしに過ぎん。実際、火竜王にアイツが負ける姿は戦った今でも想像つかんからな」

 アルノルトはどこか悲し気に口にする。ライバル、或いは目標としていたのかもしれない。

 フレデリクはアルノルトの友人は知らない。だが、フレデリクは父が自分を見捨てて戦えば負けはしなかったと確信していたから、アルノルトも守る者さえなければ負けなかったと思える存在がいたとしても不思議には思わなかった。


「さてと、私はこれでエルフの森へ帰るかな。一段落といった所だ」

 するとミロンは立ち上がる。

「本当に今までありがとうございました」

「なに、契約さえ忘れなければ良い。それに…ヴィルの偉業を潰してくれた火竜王への怒りは私にだってある。ヴィルが私との契約を果たせそうだ、鬼神王にも負けない英雄と出会えたと手紙をもらい、数十年ぶりに再会できるとエルフの森からやって来たのにあの有様だったからな。お前がいなければ復讐など考えもしなかったから、感謝している」

 フレデリクは頭を下げるがミロンは首を横に振る。


 ちなみに二人が行った契約とは魔神の眷属討伐をすることになった際には手を貸すというもの。

 魔神の眷属討伐はミロンの旅路の一つの目的でもある。故にこそ、ミロンにとってもリンノイトゥス陥落は痛い事実だった。


「俺もこんなクソッタレな茶番見てないでさっさと次の冒険に行くかねぇ」

 野心の強いレオンにとっては面白くないだろう。自分の手柄を他人のものとして喧伝している姿を見せられるのだから。それを込みで誘ってはいたのだが、とフレデリクは思う。むしろ何の利益もないこの旅に何で乗ってくれたのかが不思議だった。


「レオンさんはどうするんですか?」

「さあな。東部で国盗りでもしてみるかね」

「国盗りって……」

「興味ねえか?」

「無いですよ。周りの人たちが平和なら………」

 フレデリクは思わず大事な友達を思い出し、言葉がそれ以上出なくなる。生きているのか確認をしていない。

 領主死亡の一報が入った時点で、フレデリクの心は折れていた。アレクサンドラがいた辺りの丘が消し飛んでいたので彼女の生死を確認する勇気が無かった。幼い頃より心の支えだった彼女の死を知ってしまったら一歩も踏み出せなくなる。

 フレデリクにとってアレクサンドラとはそういう存在だった。


 フレデリクの復讐は、怒りと同時に現実逃避という面があった。


「レオンはともかく、お前は残っているものを搔き集めて先に進むべきだ。復讐を理由に失ったものとさえ向き合ってこなかっただろう?」

 アルノルトはまるでフレデリクの心を知っていたかのように、痛い所をついてくる。

 フレデリクは無意識に向き合ってこなかった。

 仮定を立てても胸が激しく痛み、死を否定したい思いしか湧いてこない。こんな恐怖に向き合えるはずがない。

 フレデリクは心が弱く、それを補ってくれたのがアレクサンドラだった。ルミヤルヴィの強い領主としての誇りがフレデリクの脆い心を支えていた。

 だから、彼女の生死を確認するのが一番怖かったのだ。


「火竜王とは向き合えるのになさけねえな」

 フレデリクの悩んでいる様子を見てレオンさんはゲラゲラと笑う。

「レオンさんは怖い物なんてなさそうですね」

「ねえぜ。傭兵団が壊滅した時も弟を囮に使って逃げたほどだ」

「「最低だ、コイツ」」

 ミロンとアルノルトは思わずレオンを最低男と断じる。

 何でこんな男が真の勇者の称号を得たのだろうと心から女神の采配に頭を抱えるのだった。だが、事実として彼はどうしようもないクズであるが勇者の名に恥じぬ強さを持っていた。


「どちらにせよ帝都から去った方が良いかもな。ここでうろついていては、下手するとリューネブルクに睨まれ兼ねないからな」

「リューネブルク?」

 フレデリクは首を傾げる。

 その名は聞いた事があった。ルミヤルヴィの北方、ヴェルザー西方伯領のさらに北にリューネブルク公爵領が存在している。


「火竜王を倒したって嘘つき野郎がリューネブルクの御曹司様だ。負けやしないが、夜中に暗殺者とこんばんわなんてしたくないからな」

「ああ、あの聖剣を掲げていた若い男がリューネブルクっていうのか?」

 レオンの視線の先では、長い黄金の髪をした若い男がキラキラ輝く剣を高々と掲げていた。


「そうだ。まあ、あれは偽物の聖剣だけどな。本物は死んだ友人が持っていたからな。女神の加護があり、使い手を選ぶと聞いている」

「伝説に出て来る初代勇者の持っていた神授の聖剣か」

「昔は親父が持っていたんだ。鬼人領で鬼神王の後継者から授かったと聞いている。使い手が呼べば飛んでくるらしい。来い聖剣!」

 手を掲げて呼ぶが黄金の件は一向に動く気配はない。

「それはあの剣が偽物じゃなくて、お前が選ばれて無いだけじゃないか?」

 大笑いするレオンだった。

「真の勇者様が呼んでみたらどうなんです?」

「使い手がいないと、その場で最も強い人間を選ぶらしい。ゴブリン族が扱いに困ってたらしい。勇者であるお前がいる以上来ないだろ」

「来い、聖剣。……ほら、来ないだろ?」

「残念だったな、選ばれて無くて」

 アルノルトは残念そうにレオンの肩を叩く

「うるさい!偽物の聖剣だっただけだろうが!」

 レオンはその手を振り払う。

 そもそも偽物の聖剣だって話で始まった事だった。

「勇者でも得られないんですか?」

 フレデリクはミロンに訊ねる。

「ああ、真の勇者ってのは神の予想を覆す戦況を単身で打破した者に与えられる称号と聞いている。強いのではなく向こう見ずのバカほど得られる称号だからな」

「「ああ、なるほど」」

「俺を見て納得するんじゃねえよ!」

 レオンはテーブルをたたいて、勝手に納得しているフレデリクとレオンを怒鳴りつける。


「それじゃあ、これで解散だな」

 ミロンが解散を口にしてカフェの代金を置いて去ろうとする。

「またな」

「レオンが賞金首として俺に狙われる未来が来ない事を祈ってるぜ」

「うっせ。帰り討ちだ」

 ミロンが声をかけ、レオンはアルノルトに拳を打ち付け合ってから去ろうとする。


 ミロンはパレードの終えた平穏を取り戻しつつある南の道へ向かい、レオンは同様に東の道へと歩き始める。

 フレデリクは去っていく彼らを見送る。北のフェルトブルク城の方ではまだ賑やかにパレードが続いていた。



 アルノルトは溜息をついてから、フレデリクの方に視線を向ける。

「さてと………。フレデリク。お前はどうする?」

「どうするも何も……」

 どうしたものだろうか、とフレデリクは考え込む。この3年、火竜王を殺す事だけを考えて生きて来た。それ以外に考えてこなかったし考えようともしなかった。

 ルミヤルヴィの事を考えると足が止まり、思考が停止する。むしろ避けていた。


「お前は実家に帰らないのか?ここからルミヤルヴィまで行く途中にレーベンベルクがあるから途中まで同行するつもりりだったが……」

「帰る場所が滅んでいて、迎えてくれる人がいない場所に帰る意味ってあるんですか?」

 フレデリクは溜息を吐いて下を見る。

「お前にこのまま消えられたら死んだヴォルフの馬鹿も浮かばれまい」

「そんなこと知ったこっちゃ………」

 フレデリクは適当に流してその場を去ろうとして足を止める。

「ちょっと待て。いつ、アンタに僕の父親の事を話した?」

 フレデリクは慌てて振り向いてアルノルトを見る。


「ヘレントル高等学園に送る前までは自分の素性を知らせず、平民として育てたいと聞いていたが、本当に何も教えてなかったんだな。まあ、気付いてはいたが………」

「いつから……」

「いつからも何もなぁ。ザシャ様にそっくりのガキが火竜王に復讐の旅をしてると聞いた時点で、ヴォルフのガキが生きていたんだ、位の感覚だが」

 呆れたような物言いをするアルノルトに、フレデリクは愕然とする。力があるからと仲間に誘った男だが、何を考えているか分からないと思っていた。

 まさか、実は父の知り合いで、何だったら復讐に取りつかれていた自分を見守っていたという事実は、フレデリクにとってかなり恥ずかしい事実だった。


「母さんの事も知っていたんですか?」

「さっき話しただろ。ああ、知らなかったのか。帝都の英雄ヴォルフ・ズワールトと、彼に降嫁した皇帝の妹ザシャ・フォン・ローゼンブルク。お前が周りの大人達から伏せられていた素性だ」

「何で赤の他人のおっさんに今になって………」

 フレデリクは地面に膝をつき愕然として、項垂れるように手をついて俯く。 


 とどめの様にフレデリクの腰に差さった無骨な剣を指差してアルノルトは指摘する。

「で、お前の腰に提げてる剣が神授の聖剣だ」

 ピヨッ

 あとがき担当のヒヨコだぞ。ピヨちゃんと呼んでくれ!

 ヒヨコスーツの性能の違いが、戦力の決定的差ではないということを教えてやる!

 いや、ヒヨコは別に着ぐるみでは無いぞ?だから背中を探してもチャックはないのだ。ええい、子供達よ、ヒヨコをバシバシ叩くな!ヒヨコの防御力は紙装甲なんだぞ!?ヒヨコはゆるキャラではなくてだな、やめ、頭の羽を引っ張るな!

 ………ひ、ヒヨコ界の赤い彗星とはヒヨコの事だ……ぞ。酷い目にあった………。


 今回はお話に出て来た神授の聖剣君のお話をしよう。

 この子はヒヨコ伝説にも出てきている中々にポンコツな逸品だ。

 何故なら、初代の持ち手である異世界の勇者『沖田駿介』氏は、女神から剣を授かる際に「俺にチートスキルは必要ないぜ。俺自体がチートだからな」と言って、魔法を使えないポンコツキャラとして世界に降臨。

 女神はせっかく魔神対策の為に神聖魔法無限使用を付与したのに、意味なく使われてorz状態だったという。

 駿介が手放した後、鬼神王が手にして邪神を倒したのが有名だな。それから鬼人達から受け継いだ剣聖さん、帝国から受け取ったヴォルフ。これまで神授の聖剣を持っていたキャラは魔法が使えぬ。

 そう。本作はむしろ初めて本気を出す神授の聖剣君の活躍をご堪能あれ。神授の聖剣君は本気を出していないだけ。今作から本気出すと言っていたぞ。え?ヒヨコの庇い方がまるでニートのようだと?

 まあ、そういう事もあろうなのだ。


 それでは次回予告だぞ。

 次回のピヨちゃんは『ピヨ:卵から始める異世界生活』だぞ!皆見てくれよな!

※次回予告はヒヨコの出鱈目です。本作品とは一切関係ありません。






………………え?自粛中なのに出て来るな?そんな事を言われても鳥は3歩歩けば大体忘れる生き物なんだが?

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