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雷華の騎士 ~やがて支配帝(ハーレム帝)と呼ばれる男~  作者:
第1章 雷華の騎士とルミヤルヴィの姫
14/22

6話 ルミヤルヴィの戦争② ~エルッキ・レフトラ~

~帝暦250年2月 ローゼンブルク帝国フェルトブルク皇領ヘレントル市~


 エルッキ・レフトラはヘレントル高等学園の運動場で剣術の訓練をこなしていた。

 彼は本来この学園に入学する予定はなかったが、アレクサンドラを守る為に見える範囲で良いから守ってほしいというマルヤーナの依頼の元で高等部から入学したのだった。

 妹が初等部からこっちに来るのでそれも込みでの高等部からの編入だった。

 主家が帝都に行っているので、今日も今日とて鍛える為に素振りをしていた。この学園において自分の剣術修行に付き合ってくれるクラスメイトは少ない。弱すぎて相手にならないからだ。

 一人、ライバルでもあり友人でもある男がいるのだが、恋人の実家に行くために休暇に早々に入ってしまい、会っていない。

 リア充爆ぜろと、半ば怨念を込めた素振りになっていたりする。


 そんな中、校庭を横切るように分厚い肉体をした大男が通りかかる。髪を刈り上げた温和な顔をしたこの学園の教師ベルント・フォン・エーベルヴァインだった。

 彼はエルッキの父の後輩らしく入学してからは割と世話になっている。剣術実技の指導教師で、父に似た剣を使う上、父に匹敵するほど強かった。

「エーベルヴァイン先生。暇なら手合わせしてくださいよ」

 エルッキはエーベルヴァインに声をかける。

「入学試験の実技担当だから暇じゃないんだよ」

「来年度こそはケビンやヒンデンブルクに勝ちたいんです!」

 エルッキは訴えるが、エーベルヴァインは苦笑するのみだった。

「そう言えば剣術で代表落ちしてたか。ケビンはともかくヒンデンブルクは帝国十剣に入る剣士だぞ」

「でも先生より弱いですよね。帝国十剣に入っていた先生より序列も上なのに」

 ヒンデンブルクはエルッキと同時にこの学園に入学した帝国第二皇子の側近の伯爵令息だ。人間的にも厄介な男であり、エルッキは敵視していた。


「まあ、あれはコネが効くからコネのない俺が入っていたこと自体が奇蹟なんだがな」

「それを言い出したら平民だった親父やヴォルフさんなんてまともなコネなんてゼロじゃないですか」

「あの人たちは別格だ。彼らの同期には陛下もアルノルト先輩も同じく帝国十剣に入っていたグロスクロイツの次男もいたんだ。黄金時代と言われるのも理解できるだろう」

 帝国史に残る猛者だらけと比べるのはどうかと思わなくもない。自分の父がとんでもない年代で生きていたのは理解できる。自分が父に近づいて来て父の偉大さに気付いてもいるが、そこまで負けているとも思って無かった。

 そもそも、帝国屈指の武芸者が同期にいるのは反則だろうとエルッキは思っていた。

「それにしたって、俺の世代強すぎません?」

 エルッキは涙目で元帝国十剣という帝国トップ10に入る剣士だった教師に訊ねる。

「どの時代も飛び抜けた男がいるのはよくある事だ。帝国十剣がいるくらい珍しくもない。帝国十剣に入る事なく英雄になる男だっているしな」

 その言葉を聞いてエルッキは去年頭に起きたロイエンタールの政変を思い出す。


 まるで帝都内乱の焼き直しのような事が起こったのだ。

 この学園の卒業生達で、エルッキは面識こそないが、次席で戦闘なら無双と言われたベネディクトという平民が暴力によってロイエンタール領を制圧し、彼の主である首席だったロイエンタールの私生児の男がロイエンタール領主になったという話だ。去年の入学頃に起こった話の為、かなり話題だった。ヴェルザー出身の卒業生パーティが一年でロイエンタールの英雄になったと。まるで帝都の英雄の焼き直しだとも言われていた。

 この学園の卒業生には、帝国十剣になっていないが、英雄になった男がいる。


「来年から妹が入学するんですよ。アレクサンドラ様の護衛メイド候補として」

「気持ちは分からなくもない。私も妹がいるからな。そうか、フリッツ先輩、辺境伯家を守る男爵家に婿入りしていたんだっけ。ミーナ先輩の所の」

「でも親父がまさか帝都の英雄の親友だったなんて、こっち行く際に母さんに教わったたんですよ?」

「ヴォルフ先輩はフリッツ先輩とルミヤルヴィでは絡んでなかったのか?」

「というか、ヴォルフさんは自分の子供に帝都の英雄だった事とか教えたくなかったらしくて口止めしてたっぽいんすよ。俺、その息子の友達だったから口滑らせないように俺も教えて貰えてなかったみたいで。大人達は知っていたみたいですけど」

「楽しみにしていたんだけどな。ヴォルフ先輩の息子。まさか死ぬとはなぁ」

「楽しみ?」

「あのヴォルフ先輩が親ばか丸出しで手紙を送ってきた位だからな。さぞ凄いのだろうと」

「まあ、何やらしても同年代では負け無しでしたけど、特別凄いとは思わなかったですけどね。常識的で普通のガキでしたよ。ただ……」

「ただ?」

「親父相手に剣で勝てと言えば絶対に勝てないけど、何をしてもいいから勝てと言われたら、罠や周りの人間を使って親父から参ったを言わせたのを見た事があります。あれは騎士というより策略家とか詐欺師とかそう言う類で、先生が楽しめるような奴じゃないですよ」

「そういうタイプなのか?」

「真っ当な剣士からすれば絶対に許されない奴です。ぶっちゃけ、アイツが生きていたら、きっと汚ぇ手を使って火竜王討伐していたかもしれないっすね」

「まあ、それは無いだろうな。火竜王は討伐されたらしい。俺達がヘレントルに帰った後、帝都で紅鳳騎士団が火竜王討伐の凱旋パレードをしていたらしい」

 腕を組んで訝しそうな顔でエーベルヴァインは口にする。

「マジですか。その騎士団って強いんですか?」

 エルッキの問いにエーベルヴァインは乾いた声で笑う。

「ヴォルフ先輩、いや帝都の英雄は単独で近衛騎士団と黒虎騎士団と皇領貴族私兵を制圧したんだぞ。それを殺したドラゴンを倒せる騎士団が存在するはずないだろ」

「い、言われてみれば…」

「ウチのBクラスだったイザークが騎士団長だ。強さなんて知れたものだろう」

 エルッキは呆気にとられる。Bクラスというのは寄付金で成績を公にされない上流階級クラスである。本当に実力や頭が良い奴なら、Aクラスに入ってくるのだ。つまりたかが知れた能力しかないという証拠でもあった。


「とすると冒険者ですか」

「だろうな。誰もいない荒野で紅玉級以上のパーティ2~30名で挑めば行けるかもしれん。帝国は火竜王を災害指定したから積極的に動かないだろうし」

「………。勝手に帝国で手柄を奪って良いんですか?」

「帝国内ならともかく帝国外ではちゃんと真実は明らかにされる。冒険者ギルドの国外情報を見ればその内分かるだろうな。帝国は規制しても、ヘレントルは情報が集まるから」

「へえ凄いっすね、ここ」

「だからこそ、騎士をやめてここに務めて、より国に失望したわけだがな」

 ハッハッハッと笑い飛ばすエーベルヴァインだった。

 彼は元々、子爵令息という立場で副騎士団長にまでなり上がり、帝国十剣に名を連ねた猛者だ。

 だが、貴族主義社会ではそれ以上の昇進が難しく、帝都の英雄を帝都から左遷するのを見て国に絶望し、悩んだ果てに騎士を辞めた。

 力があっても功績があっても認められない国で尽くす事に疲れたからだ。それでも家族がいるからやっていたが、家族が背中を押してくれたから転職を決意したのだった。


 すると女性教師が走ってこちらへやって来る。

「エーベルヴァイン先生、大変です。ルミヤルヴィの生徒ってまだ寮に残ってますか?」

「向こうは雪が早いから、帰ってる子はもうとっくに帰ってるし、帰ってない奴はこうしてここにいると思うが」

 エーベルヴァイン教師はエルッキを指差しながら口にする。

「ルミヤルヴィに何かあったんですか?」

 エルッキは故郷に何があったのかと首を捻る。

「ベルトハイムが宣戦布告して南部カイヴォスに攻め込んだそうです。ラーナストさんは…帰ってなかったりは…」

「ベルトハイムが宣戦布告?何で?」

「いや、それは分かりませんが……」

 エルッキが女性教師に問うが、彼女は首を横に振るだけだった。知る筈もないとは直に気付く。彼女は単に生徒が返ろうとしているなら止めようと思ったからだろう。


「今、ヴィルヘルム様が亡くなった事でルミヤルヴィを手に入れようとあちこちの大貴族達が手を伸ばしてる状況にある。ルミヤルヴィ姉妹を抑えれば辺境伯になれるっていう状況で、リューネブルクが火竜王討伐の褒章で彼女を欲したらしい」

「せ、政治的な話ですね?つまり次期ルミヤルヴィはリューネブルクのモノになると?」

「次のルミヤルヴィ領主の座を狙っているのはリューネブルクだけじゃないだろ?あの姉妹だけのルミヤルヴィはさぞ汲みやすいように見えるようだな」

「それでベルトハイムもルミヤルヴィ手にしようと?」

「ルミヤルヴィ本家の血の継承が続かない以上、その次の家を無理やり掌握してしまえば問題ないと考えた場合、ラーナスト家に触手が動くのは当然だと思うが?」

 エーベルヴァインは生徒達の状況もある程度把握していた。

「あ」

 亡くなったヴィルヘルムには滅亡した本筋の兄家族以外に二人の姉がいた。

 一人は中南地方の大部族の長に嫁ぎ、もう一人はカイヴォス領主ラーナスト家に嫁いだ。

 嫁いだラーナスト家でルミヤルヴィとの間に作られた子供は、カイヴォス領を治めるラーナスト伯のみ。そして彼には長女のシルッカと幼い弟だけしかいないのだ。

「じゃ、じゃあ、ベルトハイムの思惑は…」

「ラーナスト家だろうな」

「それ、ヤバいだろ。こうしちゃいられない」

 エルッキは慌てて帰ろうと寮の方へ走り出そうとする。

「こらこら。学生が行っても意味は無いぞ。カイヴォスだって城塞都市だろうに」

「カイヴォスは西部ダンジョンのスタンピードから北側にある都市を守る為の城塞なんだ。北側の都市から人間に攻められたときに対する立地に作られてない!」


 カイヴォスはミスリル鉱山のある山岳地帯に存在する城塞都市だ。魔物も通りにくい入り組んだ崖のボトルネックになった地形の北側に存在しそこで南側から魔物が来たら向かい討つような場所にある。北側から魔物を倒すための人員を来やすいよう出来ているので、むしろ人間側から攻められやすいのがカイヴォスの弱点である。

 そもそもルミヤルヴィは人類の守り手として存在しており、自分たちが人類に攻められると考えてさえいない。そこを滅ぼした際にスタンピードが起こったら人類が終わるという前提の防衛陣地を作っている。


「そうなのか?」

「そうなんです。ああ、皇領出身者はルミヤルヴィの歴史を知らないから……。ルミヤルヴィの城塞都市は全て西部ダンジョンがスタンピードを起こした際の備えなんですよ。魔物から襲われた際に守る為の立地に置いてあって、むしろ人間が大人数で入りやすく、西部ダンジョン側からは攻め難い場所にあるって。ヘレントルだって例外じゃないってのに。くそ、これだから平和ボケした連中は~!ヴェルザーはルミヤルヴィからの分家筋だからカイヴォスを知ってるはずなのに何で攻め込んでんだ!?」

 エルッキは頭を抱えてしまう。


 ルミヤルヴィはが魔神の眷属との戦いにおける最前線だ。リンノイトゥス以外から見れば、数十年も西部ダンジョンは稼働していないかのように思われがちだが、それは違う。ヴィルヘルムやヴォルフといった英雄がダンジョンを完全に封じ込めていたからだ。それどころか、ヴォルフ不在でもヴィルヘルムと白狼騎士団という強力な防衛可能な布陣を得て、ヴォルフとフリッツといった面々は西部ダンジョン内の解明まで取り組みだし、攻略の目算を出していた。


 だが、今は火竜王によって主要メンバーが殺され、リンノイトゥスまでも滅ぼされ、かなり拙い状況にあった。

 それでも、帝国に白狼騎士団解散命令を受けて帰還する予定だった騎士達の帝国騎士団を辞めて半数以上がルミヤルヴィに残り、西部ダンジョンからの防衛に尽力しているから、どうにか堪えていた。


「ちょっと、俺、帰りますので寮長に連絡お願いします」

 エルッキは慌てて領の方へと向かうのだった。


「な、何か拙い事言ってしまったような気がしますが……」

「………ウチに来るリンノイトゥス出身者の子供が強い理由が分かった気がするなぁ」

 魔神の勢力との最前線で暮らしている子供たちが弱いままでいられる筈もないのだ。リンノイトゥス出身の騎士や兵士の子供がヘレントルに来ることは少ないが、白狼の騎士団の子供や兵士の子供、マルヤーナの婚約者であるトビアスを筆頭にどの子も戦闘力にかけては頭一つ抜きでていた。それは魔法で年代トップだったマルヤーナも同じだ。

 マルヤーナが姉馬鹿丸出しで喧伝してた妹が入学時点で学内どころか国内最高レベルの火魔法使いだった事を鑑みても、リンノイトゥスは西部ダンジョンの為に戦う人間の土地だった事が分かる。

「まあ、だからこそ、ヴォルフ先輩の息子と会ってみたかったんだが」

 去っていくエルッキを見送りながら、エーベルヴァイン教師は小さく溜息を吐く。




***




 エルッキは武装をして食料をリュックに詰め込んでヘレントルを発つ。移動用馬屋でヴェルザー西方伯領ゴルトシュタットを1日で抜けてボーデンフェルトへと向かう。

 ヴェルザーに入っても戦争の雰囲気が一切ないので不穏には感じる。ヴェルザーは三人の伯爵によって領地を区切られており、ボーデンフェルトはベルトハイムとは異なると分かっていても同じヴェルザーだからどうしても警戒してしまう。

 だが、注意深く様子を見ると、冒険者というよりは傭兵みたいな人間が多く通り過ぎるのを見かけていた。戦争の為に来ているのかもしれない。

 エルッキは同じヴェルザーでも三伯爵は全く違うのだろう事が予想できたが、ここまで無関係を決め込める辺りにちょっとした恐ろしさを感じる。

 夕方にボーデンフェルトに辿り着くと、同系列の馬屋にスレイプニルを返し、食料を追加で買って宿で一泊する。

 ボーデンフェルトまでは安心して進めたが、ここより西へと向かうとベルトハイム伯爵の領内に入る。その為、ボーデンフェルトからルミヤルヴィへと入る道へと向かう。カイヴォスに行くならベルトハイムまで行く方が良いのだが、非常に危険だと考えられる。


 早朝に宿を出て大河を渡って南側の港町に辿り着く。ルミヤルヴィの荷下ろしの為の港町で、ボーデンフェルトとの貿易拠点の一つでもある。だ。ここから山道の方へと向かう。


 エルッキは人がいないのを見て山を駆け上がる。山は少し上ると雪が降り積もっていた。


 カイヴォスは西に巨大なミスリル鉱山、東に高い崖山がそびえ、その間に存在している。、ランジランタの北方に位置するルミヤルヴィ最後の砦だ。ラーナストの兵は屈強だというのはエルッキもよく知っている。

 この数十年とスタンピードがそこに届いていないから実践不足だったからと、何度も領都に訓練をしに来ていたほどだ。

 ラーナスト伯は迷宮の恐ろしさをよく知っている男だ。平和ボケなどありえない人だ。火竜王に滅ぼされた時、兵士を引き連れて迷宮のスタンピード対策に手を貸し続けていた。ルミヤルヴィの苛烈な生き方も知っているからこそ、娘にルミヤルヴィ継承権を継ぐ事はして欲しくないと親心に思っている優しい人でもある。

 エルッキは山を一日かけて登りルミヤルヴィを見渡す。この東の高山を登ったのには訳がある。一つは距離的に近い事、もう一つはルミヤルヴィのどこからでも見える山である、という事はルミヤルヴィ全体を見渡せる山でもあるのだ。

「どういう事だ。ランジランタの方にスゲー数の人間が集まってやがる。ここからじゃよく見えないけど、あれは東部のハッキライネン伯爵家か?まるでランジランタを奴らが攻めるみたいじゃ……」

 エルッキは不穏な動きがあるという話を聞いてはいたが、まさか本当に動いているのかと冷たいものを感じる。

 だが、それよりも危険なのはカイヴォスだと思い出して西の方を見る。山間に見える都市の方は既に戦争が起こっているようだった。攻城塔や破城槌で少なくない人数がカイヴォスの街を襲おうと入り込んでいるが、即座に敵を討って守ってはいるがギリギリな感じである。しかも敵の数は非常に多く、カイヴォスの兵は走り回って大変そうでどうにも手が回りそうになかった。

 しかも、ここから見える範囲からでも街道を埋め尽くすようにベルトハイム軍がいて、しかも紫色の旗まで見える。

「ちょっと待て。あり得ないだろ。」

 ベルトハイム伯爵が動いたのは分かったが、何故紫の旗が動いているんだ、という思いがよぎる。

「あの紫の旗は帝国騎士団紫鷲騎士団じゃないか」


 ヴェルザー領に駐留している帝国騎士団の名前は紫鷲騎士団。名は体を表す様に紫の旗が振られており、その人員数は帝国屈指の人員を誇る。さらに傭兵がいるようで、ベルトハイム領は人口20万程度でありながら、5000人を超える兵士たちが行軍している。

「これはまずいぞ。早くカイヴォスに行かないと。シルッカさんを守らないと」

 エルッキはギュッと拳を握る

 同じ年に生まれ、辺境伯家マルヤーナやアレクサンドラの従姉妹であり、溌溂としており家庭的で面倒見のいいお姉さん肌の女性だ。

 エルッキにとっては一目ぼれの相手だ。シュヴェルトシュタットにカイヴォスが落とされた場合、彼女がどんな目に合うのか考えたくもない事だった。


「彼女は俺が守らないと」

 そう、守らねばならない。それはルミヤルヴィの為にもなるし、ベルトハイムの爺に良いようにされるのも気に入らない。

「ハッ、シルッカ嬢にここで良い所を見せて、エル君、好きっ!みたいになってしまうかも!これはチャンスだ。むしろそうなれ」

「いや、ならないだろ。シルッカ様、そう言うキャラじゃないから」

「分かってるよ!分かってるっての。だが男だからこそ、そう言う願望がちょっと混じったりするんだ………って、誰だ!?」

 エルッキは自分の独り言に突込みを入れてきた声に、腰の剣を抜きながら慌てて振り向く。

 この場所にも敵が?そんな危機感を抱いて振り向いたのだが………、


「ちっ、やっぱりハッキライネン連合軍がランジランタに出てるか。籠城戦になっている所を見ると、アレクサンドラ様が早くに辿り着いたか、残っていた留守の者が判断を下したかだろう。いや、ランジランタはトビアス様のご両親だ。当然の判断か。すると予想通りまずはカイヴォスを守る所から始めるかな」

 そこにいたのは銀髪の美少女にしか見えないが、非常に見慣れた絶世の美少女っぽい幼馴染の男だと直に気付くのだった。

「って、フフフフフフ、フレデリク!?お、お、おま、お前、生きてたのか?」

 エルッキはまるで幽霊でも見るような目でいつの間にか背後に立っていた銀髪の少年を見る。

 3年前、遺体も残さず火竜王に炭になる程燃やされて死んだはずの幼馴染がそこにいるのだった。

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