第018話 2、3日目3階層 年長者の威厳?
翌日再び迷宮へ、今日は最短距離で1階層2階層を抜けて3階層に入った。ここまで3時間、小休止してから探索を始める。3階層の広さは2階層と同じ位、だけど2階層と違って壁だけじゃなく床にも50cm位の石が障害物として所々にある。
「この国の軍隊がこの迷宮を嫌った理由の1つがこの石の障害物ですね。重装備で集団行動する軍隊にとって下手な敵より厄介ですから」
「アイリスちゃん、石の影から敵が襲って来る事もあるから気を付けてね?」
「んっ」コクリ
ヴェルンさんナージャさんの注意を聞き周囲を警戒しながら進んで行く。この階層で新しく出て来る魔物は跳ね兎、床の石や壁を使って縦横無尽に飛び跳ねながら蹴って来る。
40cm程の大きさだけど結構威力があるらしい。まあヴェルンさんナージャさんは簡単に倒してるけどな、ミリアーナもすぐに対応しちゃってるし。
「ミリアーナ、内臓は傷付けないように倒して下さい。肉と毛皮は売れますから」
「んんー、そう言うの苦手なのよねー。て言うかナージャ達も何も取って無いじゃない」
「お金を稼ぐ為に来た訳じゃありませんから、でも綺麗に倒してますよ? 探索者や傭兵としては必要な能力ですよね?」
「うぐっ。……はぁ、分かってるんだけどどうしても力任せになっちゃうのよね」
ミリアーナはガックリしてる。その間俺はナージャさんに足の運びや力の入れ方とかを教わりながら進んで行った。
「ふふっ」
「ちょっ、何よナージャその上から目線、アイリスちゃーん、私にも聞いてよー。色々教えてあ、げ、る、よー?」
む……ミリアーナめ、何故邪魔をする。お前の俊敏な猫みたいな戦い方は参考にならんと言うのに。
『いやいや、確かにナージャの戦い方はお主に合っておるじゃろうが目も良くなって体も柔らかくなったしの。多少はミリアーナの真似事も出来ん事も無い筈なのじゃ」
えっ? マジで?
『うむ、あくまでナージャの戦い方が主軸なるじゃろうがの』
「ミリアーナの戦い方はアイリスちゃんの参考にはなりませんよ。ね? アイリスちゃん?」
「うぐぐ、ナージャ〜」
「ミリアーナも、……教えて」
「えっ!? う、うん、しょうがないわねアイリスちゃんは〜。えへへ、手取り足取り教えてあげるわ」
(良い子ですねぇアイリスちゃんは、落ち込んだミリアーナを慰めようとして)
何故かミリアーナにテンションMAXで撫でくり回された。戦い方を教えて欲しいんだけど? ナージャさんもうんうん唸って助けてくれないし。
「アイリス、そろそろやってみますか」
「んっ」コクリ
ヴェルンさんに言われて前に出る。跳ね兎は速い、右に左、下に上にと動き周る。けど目では追えてる、先ずは守りに……。
『来たのじゃ』
前方から駆けて来て右にある石に飛び乗って左に飛び跳ね、更に壁を蹴り真横から蹴り込んで来た。大丈夫見えてる、合わせて跳ね兎の胴を裂くように剣を斬り付けていく!?
げっ、かなり力が強い! 力を逃がさないと体が持っていかれる。
受け流すように体を沈め、剣を振り上げて跳ね兎の胴を斬り裂きながら上に逸らしていく。態勢を崩しながらも跳ね兎から目を離さない。けど既に致命傷を負ってたみたいで後は止めを刺すだけで終わった。
「はあぁあ」
ちょっとギリギリだった……、見えてはいるし反応も出来てる。けど力で押されちゃうな。
『突きはどうなのじゃ? 見えてるなら出来るじゃろ』
速過ぎて剣を合わせられないよ。斬るんなら兎も角突くってなると剣先を敵の正面で捉えないと駄目だし。
『ふむぅ(出来そうな気がするのじゃが自信が無いなら仕方ない)なら動けなくなるよう足を狙うか深傷を負わせるのじゃな』
足は狙い辛そう、身体の中心を斬り裂くように斬り付けるか。それなら致命傷で動けなくなるだろ。後は正面で受けないで逸らすように斬れば跳ね兎の重さに持っていかれる事も無いかな。
狙い通り上手くいった。けど飛び回るから視界から外さないようにするのが大変だな。跳ね兎の飛び蹴りを逸らすのに体ごと避けなければならないのもキツい。
タイミングがズレると跳ね兎の飛び蹴りを受けてしまう。
――斬って血だらけの跳ね兎の。
「ぐふっ!」
「アイリスちゃん!」「大丈夫!?」
「んっ、平気……」
ほらね、タイミングがズレて血だらけの跳ね兎の体当たりを食らっちゃったよ。マントが血まみれ、新品なのにテンション下がるわぁ。
とは言え此処で止める訳にはいかない。軽く水拭きして再開、ナージャさんとミリアーナに慰められながら続けて戦っていった。
そうして行くと時折りミリアーナと替わったり敵が多い時はナージャさんヴェルンさんが殲滅していったりしたけど何とか安定して倒せるようになった。
まるで3人が俺の付き人みたいだな。
『まるでって言うかそのものじゃろ』ボソッ
帰る前に何とか安定して倒せるようになって良かった。皆んな出来てるのに俺だけ出来ないとか年長者の威厳が保てない所だったよ。
『……威厳……』ジト目
更に翌日、今日が迷宮探索出来る最終日だ。今日も3層をメインに戦った。これ以上深くは日帰りじゃ無理だからな。
スライムは無視して噛みつきネズミ吸血蝙蝠、跳ね兎を倒していく。噛みつきネズミは細剣で斬り上げるようにして倒していった。吸血蝙蝠は適当に細剣で斬りつけた。胴体を斬れれば致命傷になるし羽を斬っても落ちて止めを刺すだけだ。
1番簡単だな、……と言ってもナージャさんみたく突きで倒すってのは無理だけど。んで跳ね兎、3層から出るだけあって手強い、まあ集中すれば安定して倒せるようにはなったけどな。
1度上手く隙をつけて突きで倒そうと反応してしまって、跳ね兎の勢いに負けてずぶずぶ細剣に深く刺さっていって抜けなくなってしまったんだよな。
そのまま体当たりされて倒れそうになってミリアーナに支えられてしまった。こんな低階層で何度助けられるのかと思うと自分で自分が情けなくなってくる。これじゃ本当に貴族とお付きの接待探索みたいだよ。
此処に出で来る魔物との戦いにも慣れて来たので少し早いけど帰る事にした。因みに3階層にも探索者は少ない。
「跳ね兎の肉はそれなりの値段で売れますけど、素早いですし小さいですから。下の階層に行って別の魔物を狩った方が簡単なのです」
「下の階層の方が楽なの?」
「3階層までは狭くて障害物もあり集団戦に向かないのですが、下の階層だと多対一で戦えるようになるので魔物は強くなりますが楽にはなるでしょうね」
ふむふむ、ナージャさんとミリアーナの話しを聞きながらクッキーを頬張る。うん、今は地上に出て喫茶店でクッキーを食べている。頑張ったご褒美で食べて良いって言われたんだ。
それから寮に帰ったら改めてナージャさんに剣を教えて貰う約束をした。お礼に美容魔法をしようとしたら加減するようにしつこく言われた。何で??
ブックマークや何らかの評価を頂けると励みになるので大変嬉しいです。
これからも宜しくお願い致します。




