第011話 副都の迷宮へ
屋敷に戻ってからナージャさんとミリアーナに連れられて、一緒に行くだろうヴェルンさんにも迷宮探索について話した。まだ言って無かったんだな。
「は? 迷宮、……ですか……」
おお、……話しを聞いたヴェルンさんが動揺してる。何時もは冷静なのに。
「ナ、……ナージャ。わざとですね?」
「何の事でしょう? あ、因みに精霊神社と商工ギルドにはヒストロスさんが話しに行きましたよ? そうね、そろそろ帰って来るかしら?」
「今からでは止められない、……確信犯ではないですか」
「? ……ねえヴェルンは反対なの?」
「ミリアーナさん。いえ、反対と言うかビアンカお嬢様方は……。いえ、リアースレイ精霊王国もアイリスは見学するだけだと思っていますよ」
「えっ? ……ああそっか。アイリスちゃん精霊神社とか商工ギルドとかに目を掛けられてるんだっけ」
「リアースレイ精霊王国にとってもレンリート伯爵領においても最重要人物となっているでしょう。そんな人物が迷宮で自身で戦うなんて思ってもいないでしょう」
「ふふっ、そうですね」
「貴女はそれを分かっていながら……」
おお、ヴェルンさんがナージャさんに怒りを露わにしている。普段怒らない人が怒るとより怖いな。
「アイリスちゃん? そう言う事なので残念ですが迷宮探索は見学しましょうね?」
「ふあっ!?」「「『えっ!?』」」
『見学って何なのじゃ見学って! それじゃ意味ないじゃろがぁあああーーーっ!!』うがー!
「……成る程、アイリスが戦うのをゴリ押しするのではなく元から見学をさせるつもりでしたか」
ヴェルンさんは納得したみたいだけど俺が納得出来ないよ!? そもそも俺ってそんな立ち位置なの? 何か凄いモヤモヤする! 知らない間に権力者に目を付けられてるとか凄い怖いんだけど!??
『いや巫女やダールトン、獣人達の対応で分かるじゃろ』
リリィは呆れた様に言うけど今まで権力者とか会った事無かったんだから知らないよ! 考えもしなかったよ!!
「どうしたのアイリスちゃん? やっぱり戦いたかった?」
うう〜、ミリアーナぁ。駄目だ、不安を隠すようにミリアーナに抱き付いてしまった。俺はこんなんじゃないのに……。
『いやどっぷりそんなモンじゃろお主は』ボソッ
「どっ、どうしたのかな? アイリスちゃん? いや抱き付くのは良いんだよ? 全然良いんだけどね?」
「ミリアーナさん、代わりましょう」
「代わらないわよ。それより本当どうしたのかしら?」
「……権力者、怖い」ボソッ
「「「今更!?」」」
その夜、ナージャさんに裏切られたからミリアーナとだけ寝た。ナージャさんは謝ってきたけどプイってしたら何故か満足そうにしていた。
後ビアンカお嬢様がお疲れのようだったから軽く回復魔法でも掛けてあげようと声を掛けたら微妙な顔をされた。
期待されてないようでちょっとムカついたからリリィの能力を使って全力で掛けてやった。一応雇い主? の1人だからな。その後何故か一緒に寝ようとして来てヒストロスさんに怒られてたけど。
癒やしがどうとか言ってたけどやり過ぎたかな? でも学院って大変なんだな。……余計行きたく無くなったよ。
ビアンカは疲労とささくれ立った心がアイリスとリリィのフルパワー回復魔法によって解けていった。しかしその所為で癒やしの根源であるアイリスを手放し難くなってしまっていたのだった。
しかしそんなモノは翌朝鏡を見てツルツルピカピカになった自身の姿を見て砕け散った。
「何よこれぇえええーーーっ!!?学院でどう説明すれば良いのよぉおおおーーーっ!!!」
元々13歳と言う若さもあってピチピチだったのだが今では更に光り輝くようである。年頃の少女が美しくなったと言うのに学院での微妙な立場を考えると頭痛しかしないビアンカであった。
――恐るべしアイリスタイフーンである。
早朝、王都を離れて馬車で2時間、副都に入って1時間。探索者ギルドに入ってミリアーナにナージャさんヴェルンさんを加えた4人でチーム登録をした。
副都の迷宮探索では冒険者ギルド傘下で迷宮専用の探索者ギルドと言うのがあるのだ。
迷宮探索では依頼と言うのは無いけど2人以下だと日帰りのみ、3人で一泊、4人以上で迷宮内での連泊が許可されるようになるそう。ランクによる制限もあるけどヴェルンさんナージャさんが去年探索者としてランク4まで取っているから俺達には関係無いそうだ。
既に夕方になってたから迷宮探索に必要な物資を購入して、今日はギルドの寮に泊まって明日から迷宮探索って事になった。
「迷宮専用の資格が必要とは思わなかったわ。それに試験まであるなんてね。これ傭兵以外は結構苦戦するんじゃない?」
「ええ、確かにその事で揉める事も多いらしいです。ですが迷宮内でトラブルを起こされるよりはマシですから」
ミリアーナがそう言って探索者カードをひらひらさせる。この副都の迷宮は傭兵ギルドの管轄下にあるけど試験を受けて資格を得れば誰でも迷宮探索出来るようになるそうだ。
当然俺達も受けた。一般常識と迷宮に関する注意事項などだ。一般常識は傭兵ギルドと同じだし迷宮関連は事前に軽く学んでいたから問題無く合格した。
「それにしても迷宮が傭兵ギルドの管轄だとは思わなかったわ」
「いえ此処が特別なんですよ。王都近くの迷宮と言う事で昔は軍が管理をしていたのですが余り上手く行ってなかったようでして。それを買い取ったらしいのです」
「へえ、……じゃ探索者ギルドは上手くやってるの?」
「そうですね。探索者ギルドと言うより商工ギルドがでしょうか。軍の跡地を此処が副都と呼ばれるまでに発展させたのですから、上手く行っているのではないでしょうか」
『全く、迷宮の低階層くらい主でも通じるのじゃ! 見学だけなんて過保護が過ぎるのじゃ!』プンプン
でも?
もう夜になるので探索者ギルドの寮で休む事になった。此処は探索者ギルド3棟目の寮だ。この探索者ギルドの寮は迷宮の所為か傭兵も多く集まって来るので1棟じゃ足りなくなって建てられたそうだ。
個室だけど横の扉を引くと隣りの部屋と繋げる事が出来て今は4部屋を繋げている。他の傭兵ギルドの寮でも作りは同じなんだけどずっとソロだったからこう言うのは使った事無かったんだよな。
「子爵領でも寮の部屋がこのくらい高さがあっても良いのに」
「この寮は迷宮探索者用になっていてこうやってチームで話し合いが出来るようになっているんです。天井が低いと圧迫感がありますからね」
子爵領の寮と違って此処は130cmの俺ならギリ立てる高さがある。此処で生活するのも良いな。
「便利過ぎると自立を促せないそうです。此処が高さがあるのは迷宮特有の理由によります。探索者は他の迷宮探索者に出し抜かれないように情報を秘匿する傾向があるのです」
「そんなの当たり前じゃないの?」
「違います、迷宮と言う同じ依頼を受けて利益を取り合っているのですから」
「ああ! そっか成る程、町じゃそれぞれ違う依頼を受けてたし合同依頼でも仲間として受けるから秘匿性は低いわね」
ヴェルンさんとミリアーナが何やら話し合っている、もう寝て良いよね?
「アイリスちゃんお眠ですか?では一緒に寝ましょうね」
「ちょっと待ったナージャ、3人じゃ狭くて無理だし私が寝るわよ」
「いえいえ、それには及びません。私に任せて下さい」
何故にこんなおっさんと寝たがるのか、まあ2人共笑顔で話し合ってるから良いけど。
『おお、……これが鈍感系主人公』
何言ってんだ? しかしこのままだと1人用の個室で3人で寝る事になりかねないな。
「……2人で寝れば良い」
「「………え?」」
「ああそうね! アイリスちゃんの言う通り2人で寝ましょ! ねっ、ナージャ?」
「いえ待って下さいミリアーナ! 今の流れでどうしてそう言う話しに……」
「良いから良いから、どうせ3人じゃ狭いんだし優しくするから大丈夫よ」
「優しくって何ですか!? 全然大丈夫じゃありませんよ! あっ、やめっ、ちょっ、ドコ触っ……! ……!??」
扉を閉めると結構静かになるな。さっさと寝ちゃおう。
『えっ? お主アレ……、良いのかの??』困惑
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