第010話 学院までの時間の使い方
その後は俺の試験の話しになって俺が馬鹿騎士を後ろから攻撃して倒したり貴族のボンボンとのやり取りを楽しそうに聞いていた。怒られるかと思ったけど違うみたいだね。
「果実とナッツの豆乳ヨーグルト蜂蜜がけでございます」
「おお……、ヨーグルト??」コテリ
侍女さんが持って来たのは白いドロドロだった、…………これスイーツ?
いやでもスイーツはスイーツ。俺は信じてるぞ。スプーンでちょっとすくってみて……匂いはしないな……。うーん、取り敢えず……先ずは一口。
「あんまぁあぁ、ほわぁ〜……」
何これ何これ! 超美味しい!! 良くわからんけどヨーグルトの喉越しと蜂蜜の甘さが爽やかな感じがして美味しい。小さめに刻んだ果物やナッツも入っていてそれも良いアクセントになっている。これは強い、強いぞぉー!
思わず立ち上がって握り拳を突き上げてしまったけど仕方ない。アリーニャさんに怒られたけど仕方ないのだ。今はそんな事よりもこのヨーグルトとやらをもっと味あわねば。
食べていくとやっぱり美味しくて思わず足をパタパタさせてしまう。そしてまたアリーニャさんに怒られた。けど椅子が高くて足が床に着かないからダメなんだよ?
『……何を言うとるのじゃ??』
足が床に着かないからパタパタ動き易くて動いちゃうんだよ?
『床に着いても着かんても同じ事をするじゃろ』ボソッ
食事を終えた俺は大満足だ。獣人の皆さんもビアンカお嬢様もにこやかだから何か知らんが上手くいったんだろう。
『お主の食いっぷりに毒気を抜かれておったからの』ボソッ
機嫌が良さそうだったから隙をみて握手してみたらやっぱり肉球があった。ぷにぷにしたよ? そのままさりげなくハグに移って毛を撫でさせて貰った。
『さりげなく……、じゃと?』驚愕
何かリリィが狼狽えているけど今は獣人だ。耳や尻尾は自分の意思で動かせるよう鍛えるそうだ。それが出来ないと感情丸出しになって恥をかくらしい。
精霊の事を聞きたくて俺が同席させられたらしいけど、獣人なんて希少種族と仲良くなれたし俺にとっても有意義な時間だったな。でも何故か後でヒストロスさんにめっちゃ怒られた。良く分からないまま取り敢えず頷いておいたけど。
客人が帰った後ビアンカとヒストロスは今後について話し合っていた。
「全く、――獣人の方々に抱き付いた時はどうなる事かと思ったわ」
「ええ、これ程背筋の凍る思いをさせられるとは思いませんでした」
食事をして栄養を摂った筈のビアンカは逆に心労で若干やつれたように見えた。そしてヒストロスは食事が喉を通らず顔を強張らせていた。
学院で見かける事がある程度だったが持っている権力は王族並。そしてそれまで見た事もなかった異種族と言う事でどう言った思考を持つのか分からない。何が禁忌か分からない怖さがある相手なのだ。
出来れば関わらずにいたかったがこうなっては仕方がない。どうにか適切な距離を見極めて自領の利益になるように振る舞うしかない。
「明日、――他の方々に色々聞かれるわ。どう答えていけば良いのよ」
「ダールトン様を返すべきではありませんでしたな」
更にアリーニャ、ヴェルンも加えた4人の長い夜は続く。
「アイリスちゃん朝ですよぉ、起きましょうねー?」
「んみゅ……ぅ」
「アイリスちゃーん? 私の方がおっぱい大っきくて抱き心地良いですよー?」
「ふふ、死にたいのですかミリアーナさん?」
「いえ、すみません。調子に乗りました」
聞いた事もないナージャさんのドスの聞いた声に思わずキュッっとなって目を覚ましてしまった。
「あら起こしてしまいましたか。いえ、起こしたのですから良かったですね。おはようございますアイリスちゃん」
「んぅっ、……おはよう」
にっこり微笑んで頭を撫でてくるナージャさん。さっきのは聞き間違いかな? でもまだ眠い、抱き付いていたナージャさんにそのまま顔を埋めていく。
「あん、駄目ですよアイリスちゃん。ほら起きてしまいましょう? そろそろアリーニャさんに怒られてしまいます」
「ナージャ、貴女アイリスちゃんに甘くなってない?」
「はうっ! うぐぐ、私とした事が見目と言動に惑わされて子供扱いをしてしまうなんて」
「まあアイリスちゃんだからねえ。子供好きのナージャには堪らないか」
「くっ、しかしそれでは私の矜持が……」
「何のこだわりよ。別に無理して冷たくする事もないでしょ?」
「まあ、……それはそうですが……」
寝惚けている内にミリアーナに布団を剥がされナージャさんと2人に着替えさせられてしまった。昨日は大変だったからもうちょっと休んでても良いと思う。
『大変だったのはお主じゃなく寧ろ周りじゃったと思うがの』ボソッ
「寝坊したらせっかくアリーニャさんを説得して添い寝の権利を獲得したのに取り上げられちゃうからねぇ」
「名目上は護衛と言う事になってますから。一緒に寝坊しては駄目でしょう」
何故か昨日からミリアーナとナージャさんの2人と寝る事になった。まあ旅で慣れてたし実害も無いから良いんだけど。
それにしても学院生活か、合格しちゃったからなぁ。制服を作ったり色々準備期間があって始まるのは来週からだ。余り気乗りしないけど仕方がないかな。――て言うか結局学院って何やるんだろ??
『お主今更それか』
「主に試験でやった事の延長ね。でも学院生の殆どは将来の為の仕事や繋がりを作りに通うのよ?」
ビアンカお嬢様に聞いたらそんな答えが返ってきた。……俺には関係なくない?
「そんな顔しないでよ、貴方の身分作りの為なんだからね? ……まあそんな訳だから大人しく学院に通ってくれたらそれで良いわ。――くれぐれも余計な事はしないようにね?」
「ん」コクコク
何故か眼前に迫られて目力強めで言われたから頷いておいた。
制服の採寸は取って貰ったし後はどうするかな。食べ歩き? それも良いけど何かなぁ。学院が始まってからでも出来そうだし連休の今だから出来る事ってないかな。
『だったら迷宮はどうじゃ? 確かそこそこ近くにあるのじゃろ? 学院が始まったら中々行けんのじゃないか?』
「……迷宮……」
て言うかそれお前が剣を使われたいだけじゃないのか?
『うむ、その通りなのじゃ。リリィは精霊剣なのじゃからな』
……まあ良いけど、俺も迷宮なんて行った事無いから興味はあるし。
「んっ? 迷宮に行きたいの? アイリスちゃん」
「それは……、どうでしょう。難しいかも知れませんね」
ボソッと呟いたら俺が行きたい事になってビアンカお嬢様達に相談する事になってしまった。……まあ良いんだけど。
「迷宮、……ね。――王都に居られるよりはマシなのかしら?」
「確かに、まあヴェルンにナージャがいれば浅層なら問題ないかと、どの道移動に準備込みで考えればそう深くは行けないでしょう」
「そうですね。念の為精霊神社と商工ギルドに相談してからなら宜しいかと」
ビアンカお嬢様の考えにヒストロスさんが同意しアリーニャさんが付け加える。2人が同意した事でビアンカお嬢様も許可を出した。そのビアンカお嬢様は2年生なので昨日から学院が始まっていて直ぐに出て行ってしまった。
ううーむ、……初めての迷宮に行く事になっちゃったよ。
「アイリスちゃんの装備はどうするの?」
「取り敢えず今の防具は目立ちませんからそのままで良いとして、ただその剣は目立ちますね」
昼の太陽の如き黄色がかった刃に植物の蔦や葉に花をあしらわれた幼女向けの剣にしか見えない剣だ。アイリスの見た目的には似合っているが悪目立ちしそうでもある。
「この剣は必要」
リリィが無かったら魔物の探索も回復魔法もダメダメなんだぞ!? もう手放せないよ!!
『おお、ぬふふ、そうじゃろそうじゃろ、うんうん』ドヤ顔
リリィが俺の言葉が嬉しいのか小躍りしてる。――幼い頃のねぇねみたいで可愛いなクソ。
「まあ聖女がその剣を持っているのを知ってるのはコレットさん達くらいですから大丈夫でしょう」
「目立つからずっと隠してたもんねぇ」
それからナージャさんとミリアーナで買い物に出かけた。ヒストロスさんが帰って来るまで時間が掛かるからそれまでの暇潰しだ。
「あっ、アイリスちゃんこの文具はどう? 学院で使うのに良いんじゃない? 可愛いよ」
猫の絵が描いてあるペンだ、って言うかこの文具店ファンシーなモノばっかじゃん! 女の客だらけじゃん! 俺浮いてんだけど!?
『(ばっちり埋もれとるが自分では分からんのじゃな)』やれやれ
行きたくも無い学院の文具に金なんて使いたく無い、って思ってたらナージャさんに買って貰っちゃった。可愛い過ぎるけど使えればどうでも良いし得したな。
その後喫茶店とやらでヨーグルトにドライフルーツが入っている物を頂いた。掛けられた蜂蜜が少ないのか余り甘くなかったけど、板状のクッキーに乗せて食べるとドライフルーツとクッキーの甘さで緩和されて美味しかった。
ほくほく顔で屋敷に帰って迷宮探索についてヴェルンさんに話すと愕然とされてしまった…………何故??
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