第008話 幕間 問題、解決へ向けて ビアンカ視点
「どうなっているのよコレは!?」
「ビアンカお嬢様落ち着いて下さい。取り敢えず商工ギルドと精霊神社に行って話しをしませんと、精霊の愛し子とやらの事は分かりませんが何れかが発信源でしょうから」
「――っ、そうね。知ってるのはその2つだけよね?」
商工ギルドに着いたけどギルド長が不在で一悶着あった。けど副ギルド長によれば私の屋敷に精霊神社の人間と来ているそうだった。
「精霊の愛し子関連かしらね」
「恐らく、何れかが漏らしたのかリアースレイ精霊王国への報告義務がある程の事なのか」
「ああ、それで知られていた可能性もあるわね。下手に扱うと痛い目に遭いそう」
「……そうですな、しかし多少は有利に話しを進めたい所です」
やっぱりそうよねえ? でも荷が重いのよ。ヒストロスに任せるしかないかぁ。
屋敷に戻るとアイリスちゃんが丸太に向かって剣を振っていた。
「あれ、何か意味があるのかしら?」
「さあ、他の者が聞いた所、要領を得ず不思議そうな顔で見返されたそうで」
「ふうん、まあ良いわ。特に害も無いでしょうし」
油断。――ええ、油断したわ。シャルロッテに大変だろうけど頑張ってって言われていたのに、その時は意味が分からなかったのよ。
でもっ! こんなの予見出来る訳ないじゃない! 入学初日どころか入学試験でコレなんて!!
屋敷に戻って挨拶もそこそこに商工ギルド長のダールトン様と精霊神社の宮司ザイールの話しを聞くとアイリスちゃんが試験でやらかしたらしい。
「ゼルアス侯爵家の3男ダントルと伯爵家と繋がりがある騎士ですか」
騎士は兎も角3男とは言え侯爵家、……アイリスちゃん、貴方って子は。
「ナージャ、貴女には後でお話しがあります」
「何でしょう、何かありましたか?」
「何かじゃありません! 貴女がアイリスにそんなリボンを付けるから相手方が勘違いしたのでしょう!!」
ああ〜、アリーニャが怒ってるねぇ。まあ侍女長としてはそうよね。ナージャは澄ました顔してるけど殴っても良いかしら?
「それにしてもその馬鹿騎士も何で第2学院何かに来たのかしら?」
「本来ならそう言う手合いは第1学院に行ってコネ作りに精を出すものなのですけど、女生徒狙いの輩が毎年何名かいるのです。貴族は兎も角、商人の少女達では拒否し辛いですから」
「……屑ね」
「アイリスに負けたままでは恥ずかしくて少女達に声をかけられないと考えて暴挙に出たのでしょう。粗暴な所を見せれば少女達は尚更怯えて断れないでしょうし」
「ゴミ屑ね」
それでヴェルンがこの2人、ザイールとダールトン様に協力を要請したと。ヒストロスも頭を抱えているわ。有利に話しをとか言ってる場合じゃないじゃない!
でもそれはそれとして此方の話しもしておかないとイケないのよね。
「ああ、精霊の愛し子ですか。確かに本国へ報告する為に彼等にも話しましたが、まさかそこまで短絡的な行動に出るとは……」
ザイールとダールトン様がガックリと頭を垂れている。其方は其方で大変そうね。でもそれで被害を被っているのは主に私なんだけど!?
「分かりました、彼等については我々で対処しましょう」
「お待ち下さい、それだけではお嬢様の学院での立場が立ち行きません。どうかご配慮をお願い致します」
「どう言う事でしょう?」
「ああ……、成る程。そうですよね、確かに」
精霊神社のザイールは分からなかったみたいだけど商工ギルドのダールトン様は私の立場を理解しているようだった。
「飛空艇を我が国に就航させて頂けないでしょうか」
「はあっ!?」
ああっ、思わず声が出ちゃったわ! 貴族令嬢としても会談としても失格ね。分かってるからそんな睨まないでよヒストロス。
て言うか何ぶっ込んでんの!? 飛空艇なんて無理に決まってるじゃない!!
「ふうむ、……飛空艇ですか……」
えっ!? イケんの?? 嘘でしょ!? 精霊の愛し子ってどんだけなの? 怖いんだけど??
「飛空艇を就航させるのは基本的に王都でしか認められていません。フォシュレーグ王国の王都に就航許可を取れますか?」
「それは……難しいでしょう」
王都に飛空艇を入れると言う事は精霊神社、商工ギルドを王都に入れるのと同義、それを王族が許可したと言う事になるのだから私達の国でそんな事を商業ギルドや神聖教会が許す訳がないわね。
「良く分かりませんが、飛空艇を就航させる事がビアンカ様の助けになるのですか?」
「ええ、商工ギルドとの蜜月をアピール出来ますからね。この国の王族に釘を刺しておけば後は誰も表向きはちょっかいは掛けられないでしょう」
(と言うか商工ギルドを引き込めればこんな国にビアンカお嬢様を残しておく理由は無いのですがね)
「成る程」
ザイールは理解していなかったようだけどヒストロスの説明で理解出来たみたいね。
「では精霊の愛し子、アイリス様を本国リアースレイ精霊王国に招かせて下さい。代わりに巫女のオリビア様に飛空艇の話しを頼んでみましょう」
アイリスちゃんを? 精霊王国に? 行くかしら、……甘い物で釣れば行きそうね。
ってそれよりどんだけアイリスちゃんを欲しいのよ!! ヤバいヤバい、アイリスちゃん連れて来なければ良かったよ! 私の手には余るわよ!!
ああ、あの時の私をブン殴りたいわ! シャルロッテもちゃんと止めなさいよね! 絶対ワザとでしょう!!
「アイリスは家族を大事にしています。頷かないでしょう」
「大丈夫ですよ? ご家族ごと招待致しますから」
「……私の一存で判断出来る事ではありません」
ザイールはニコニコしながら推してくる、ヒストロスも苦しそうだ。
「ザイールさん。余り困らせてはいけませんよ? 今回の件は私達が原因なのですから謝罪が脅迫になるような真似は止めて下さい」
「おや、私はそんなつもりでは無いのですがね?」
「それは受け取る側が判断する事ですよ?」
「……成る程、それは申し訳ありませんでした」
「はい、謝罪を受け取りました。宜しいですね? ビアンカお嬢様」
「ええ、かまわないわ」
後で聞いたのだけど此処で謝罪を受け取ったとハッキリ言った事でアイリスちゃんの勧誘=悪い事と言う形にしたらしいわ。流石ヒストロスね。
「ふう、さて商工ギルドの長としては其方の、フォシュレーグ王国に飛空艇を就航出来る環境が整うのは望むべくもないのですが、其方はそうはイカないのでしょう」
「――そうですね」
「と言う事で飛空艇の話しは置いておいて、取り敢えず対処すべき事を話し合い致しましょう」
その後の話し合いで商工ギルドのダールトン様がアデール王家に飛空艇を盾にお話しをする事になった。
後は明日第1学院に来てダールトン様が私と商談をする。商工ギルドの学院での商談はこれまでアデール王国では王族としかしていない為、充分蜜月をアピール出来るだろうと言う話しだ。私の機嫌を損ねて飛空艇が飛ばなくなったらと思えば短絡的な事は出来なくなるだろうと言う事だ。
悪くはない、のかしらね。……けどアデール王国の王都に入って数日でこの騒ぎか。――アイリスちゃん、本当に恐ろしい子ね。
明日から07時10分と13時10分に投稿します。
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