第006話 試験と決闘!?
「剣を引いて下さいますか騎士さん?」
「いや、しかし今のは流石に見逃せんだろ」
「そうですね。明らかに勝負がついてからの見苦しくも卑怯な不意打ちをする騎士と言うのは確かに見逃せないでしょう」
「くっ、……それは確かにそうだが……」
その馬鹿騎士は上級貴族の3男で上級騎士とも太い繋がりがあり、傲慢だが手を出せずにいた厄介者だった。
「それにこの子はそちらの流儀に合わせただけですよ? 正式に勝負の終わりの合図がありませんでしたから油断する方が悪いのです」
何故勝負の最中に後ろを向いてしまったのでしょう? 不思議ですね? 本当に騎士なのかしら? ナージャさんはニコニコしながら次々と騎士達を煽っていく言葉を発していく。
「わっ、分かった。そちらの言い分は理解した。しかし学院がどう判断するかは分からんし騎士団としてもどう判断されるか分からん。そこは理解してもらうぞ?」
「ええ、構いませんよ。此方は何も悪くありませんし、今回の件は此方からも正式に抗議させて頂きますから」
「う、うむ」
そう返事した騎士は馬鹿騎士を運ばせて去って行った。手合わせは他の騎士達でスムーズに進めて行った。
「アイリスちゃん大丈夫だった? あの騎士様酷いよね?」
プンプンと頬を膨らませて抗議するホリー、あんな事があって皆んな遠巻きに見てるのに図太いな……いや体も図太いけど。
『おまっ、何ちゅう事を言うのじゃ! 気を使ってくれとるのが分からんのか!?』
言ってはないだろ? んんー、おっぱいが大きい? 顔も丸顔で小動物みたいな愛らしさ? があるかな?
『いやいや、いきなり何言っとるのじゃ??』
え? ……褒めたら相殺?
『されんわ! むしろ普通にセクハラなのじゃ! 口に出してたら怒られとるぞ!?』
むう、女の子って難しいな。て言うか何でお前がそんな事まで分かるのかが不思議だ。
「それにしてもアイリスちゃん強かったね。まさか騎士様に勝っちゃうなんて思わなかったよ」
「いえホリーさん、流石にあの騎士をこの国の騎士の標準とは思わないで下さい。アレはお金と権力で得た口でしょう」
「そうなんですか? そう言えば貴女も、アイリスちゃんのメイドさんも強そうでした。何時の間にかアイリスちゃんとの間に入っていて騎士様も驚いていましたよね?」
「侍女の嗜みです。大した事はありません」
「ホリー様? 私には無理ですからね?」
ナージャさんが侍女なら当たり前みたいに言ってホリーのメイドが慌てて否定してる。侍女とメイドの違いが良く分からないけど確かにこれが普通のメイドだったら色々おかしいよな。騎士より強くて当たり前のメイドとか。
次は魔法か、魔法は使えるかどうか聞かれて軽く発動させるだけのようだ。受験生500人の内50人程度か……、まあ20人に1人と言われている才能と考えれば多い方だけど。
「火の神ラーファンよ、大気より力を以て球となし敵を撃て、ファイヤーボール!」
………………何あれ?
『いやリリィも聞きたい、火の神ってなんじゃ? ラーファンって誰なのじゃ?』
えっ? 知らないの? いないのラーファン? じゃあ本当に何なのコレ? 皆んな真剣な顔して言ってるよ!?
「次っ、アイリス・フローディア!」
うわっ、呼ばれちゃったよ? えっ? あのセリフ言わなきゃいけないの? いもしない神に祈るとか思ったら余計恥ずかしくなって来たんだけど?
前に出る、3mくらい前にある石柱に魔法を当てれば良いだけだ。でもどうしよう、精霊魔法の呪文は悪目立ちしそうだし皆んなの真似を……。
「……ファイヤーボール」
恥ずかしいから何か適当に言っている振りで誤魔化し魔力を練って魔法を放った。魔法名を言うのは味方への注意喚起の為だ。
「「「………………」」」
あんな詠唱なんて言おうとしただけで顔が赤くなっちゃうよ。にしても魔法の発動また早くなったな。魔力も増えてきたし魔力操作の技術も良くなってきたかな。
『うむ、魔法使いとしての入り口には入れたかの。まだまだ順調に伸びてるから頑張るのじゃ』
「……速い……」
何か教師のおっさんが言ってるけど無視無視、さっさと帰ろう。
「おいソコの娘、貴様も俺様のハーレムに加えてやろう」
?? 振り返ると小太りのオークみたいなのが見目の良い少女2人を引き連れてこっちに向かって来ている。ハーレム? 少女達は顔面蒼白だったり顔を引き攣らせてるけど大丈夫か?
オーク君、何か俺と目が合ってるんだけど? 後ろに誰かいるのかと思ったけどいないし。
「お前だお前、桃色の髪と目の白いリボンをしてるお前だ」
桃色の髪と目は俺だ、けど白いリボン? ナージャさんに結って貰ったのを解いて見ると紐に大きな白いリボンが付いている。無言で地面に叩きつけてナージャさんをジト目で睨む。けど目を逸らされてしまった。確信犯じゃないか!
「おっ、おい、聞いているのか!?」
いきなりリボンを床に叩きつけて自分の侍女を睨み付けている俺を見て動揺したみたいだな。まあこんなリボンを付けていたら女と間違えても仕方ない、……訳ないな。スカート履いてないだろ。節穴かコイツ。
「このリボン、侍女の悪ふざけ、俺は男」
「なっ、何だと! 男っ!?」
「そう」コクリ
「……はっ! 貴様っ、紛らわしい格好しやがって! このオカマ野郎が!! 気持ち悪いんだよ! この学院から即刻失せろ! 2度と顔を見せるなよ!!」
ムカつく、何だこのガキ言いたい放題言いやがって。
「オーク君、見たくない。――君が、消えて?」
ん? 俺が言い返すと何故か後ろの少女達が顔を伏せた。
「なっ、何だと! 誰がオークだ!! 俺様はゼルアス侯爵家の人間だぞ!!」
「侯爵家、オーク飼ってるの?」コテ
「「くふぅっ」」
あれ、少女達は顔を赤くして口を押さえている。どうやら笑いを堪えていたようだ。
「なっ、なっ……」
『侯爵家か、不味そうじゃがナージャは止めんから平気なのかの?』
「この無礼者っ! そこになおれっ! 斬り捨ててやる!」
「えっ? やだ」
真っ赤になった侯爵家のオーク君が剣を抜いて向かって来た。けど俺もナージャさんから精霊剣リリィを受け取っている。オーク君の大振りの剣を躱して首筋に精霊剣リリィを突きつける。
今度はさっきの馬鹿騎士の時みたいな油断はしないぞ?
「ひっ! なっ、なっ……」
オーク君はびびって声も出ないようだがオーク君付きの騎士が剣を抜いて向かって来た。まあナージャさんに剣を弾かれて足を払われ転ばされ、同じく首筋に剣を突きつけられたけど。
「待て待て! 何をしている!!」
騒動に気付いた騎士や教師達が集まって来た。何か大事になって来たな、俺はただ試験を受けに来ただけなのに。
『大事にしたのはお主じゃろう。まあ此奴の暴言の所為ではあるが』
そうだよね? その後ナージャさんと相手騎士がお互い相手が悪いと譲らず物別れになった。
「貴様! 劣等国の伯爵家の家臣風情が侯爵家に喧嘩を売るのか!!」
「国賓として招かれている家を貶すとは貴方の仕える家は本当に貴族なのかしら?」
俺よりナージャさんの方が煽ってるなぁ。何かあるんだろうか。ああ、流石にホリーも離れたね。商家が貴族の喧嘩に巻き込まれたら堪らないか。でも心配そうに遠巻きに見てるし良い子なんだろう。
「うわっ、汚ったな!」
ぼうっとしてたらオーク君が手袋を投げ付けてきた! まだ懲りてないのかよコイツ!!
「貴様何故避ける!」
「いや、……汚い……」
何言ってんだコイツ。
「ぷふっ」
笑い声に振り返るとナージャさんが何時の間にか話しを終わらせて後ろにいた。
「手袋を投げつけるのは決闘を申し込むと言う事なんですよ」
「んっ? ――決闘??」コテリ
「そっ、そうだ! 分かったらさっさと拾え!!」
「えっ? やだ。……ばっちい」
「「「………………」」」
「きっ、貴様ぁっ! もう良い、剣を抜け!! 斬り捨ててやる!! グレイル殺るんだ!!」
えっ? そこで人任せ!? 顔を真っ赤にしたオーク君が騎士に命令して、グレイルとか言う騎士が前に出て来た。さっきナージャさんに転がされた奴とは違うようだな。
「そう言う事なら此方の決闘の代理は私が務めましょう」
「なっ、何!?」
「代理同士ですし、お貴族様がまさか侍女相手に逃げませんよね?」
「うぬぬ、当然だ! 殺れグレイル!!」
「はっ!!」
展開が早くてついてイケない。何時の間にかナージャさんが決闘する事になっていた。
鎧を身に付けた騎士? がナージャさんに向け油断なく剣を構えた。さっきもう1人の騎士が簡単に転がされたからな。
そこにナージャさんは無造作に近づいていくと、その無防備さに狼狽えながらも騎士は剣を振り降ろす。が、簡単に躱されて何時の間にか首筋に剣を突き付けられていた。
あれ? ……終わり??
「馬車の用意が出来ましたので帰りましょう」
「えっ? えっ??」
ナージャさんに何事も無かったかのように馬車に乗せられてしまった。
後ろから叫び声が聞こえる。我に帰ったらしいオーク君は騎士達を罵倒してるようだ。これからこんな子供達に混じって学院生活か、……思わず黄昏ちゃうよ。
最後に不安そうにしていたホリーにはこっそり微笑んでおいたから安心してくれれば良いけど。
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