第004話 学院へ向けて
その後商工ギルドのギルドカードをランク2で作り直して貰ってから傭兵ギルドに行って、同じくランク2で傭兵ギルドのギルドカードを作って貰った。
因みに傭兵ギルドは精霊神社の近くにあった。大きさは商工ギルドと同じくらいだ。
「先に傭兵ギルドに行けば良かったんじゃないの? ビアンカお嬢様?」
「ミリアーナ、言葉使いはお嬢様を付ければ良いと言う事ではありませんよ?」
「良いのよナージャ、ここには口うるさいアリーニャもいないんだから」
「……ふう、そう言う事でしたらミリアーナは家臣としてではなく傭兵のまま護衛として雇う方が宜しいかと思います」
「傭兵に仕事として雇うなら言葉使いも多少は許容出来るわね。分かったわ。それとミリアーナの疑問だけど傭兵ギルドも精霊神社も商工ギルドからの資金で運営されているから商工ギルドで認められれば後がスムーズなのよ」
「ふーん、成る程ねえ。にしても精霊神社は手紙に何を書いたのかしらね? いきなりランク8を与えようなんて」
「さあ? 私だって知りたかったけど怖くて聞けなかったもの」
ギルドカードはどっちもランク2になってるけど今までとは別人として作り直したから本来ならランク1なんだよな。それを伯爵に雇われているって事でランク2にして貰ったんだけど。――ランク1だと王都を出れないとか色々あって使い勝手が悪いからな。
「…………12歳……」
「大丈夫よ、アイリスちゃんなら絶対バレないから」
「そうですね、ビアンカお嬢様より見目も言動も幼いですからバレようがありません」
「何か引っかかる言い方だけどまあ良いわ。アイリスちゃんはこれから試験に集中してね? 絶対に合格するのよ」
ビアンカお嬢様よりも年下にされて黄昏てるとミリアーナ、ナージャさんビアンカお嬢様が寝ぼけた事を言ってくる。慰めてるつもりか? それともおちょくってるのか?
『ただの本音じゃろ』ボソッ
翌日から剣や魔法の鍛錬を屋敷の庭でやらせて貰い、ミリアーナだけじゃなくナージャさんやヴェルンさんにも相手をして貰った。久々に広い場所で思いっきり体を動かせて楽しかったのは良いが、……負け癖付いてないよな?
それとは別に庭の角に丸太を立てて貰って精霊剣リリィで斬りつける。
『丸太に衝撃がいかないようにゆっくり撫でるように斬りつけるのじゃ。精霊剣の長さや重さ、それに自身の体の動かし方を完全に把握するのじゃ』
ガッ、スカッ、ガリリッ
撫でるようにって言われても難しい。ゆっくりでも普通に丸太を斬ってしまったり空を切ったりする。この鍛錬に何の意味があるか分からん。
とか思ってたらアリーニャさんに勉強もさせられた。子供達に混ざって学院に通う為の試験勉強、……やる気がおきない。
いや俺の為って事は分かってはいるんだよ? でも商工ギルドと傭兵ギルドのギルドカードで充分じゃない? って思っちゃうんだよ? 言わないけど、…………怖いんだよアリーニャさん。
そうこうしてる内に試験日当日、ヴェルンさんの操る馬車に乗ってミリアーナとナージャさんとアデール王都第二学院に向かう。
はぁ、……マジで来ちゃったよ。もうヤダ、何で俺がこんな目に。意気消沈しているとミリアーナとナージャさんが抱き締めて来たりたり撫でて来たりと甘えてくる。全く……、俺はそれどころじゃないんと言うのに。
でもアリーニャさんの監視が厳しくて最近甘えさせてやれなかったからなぁ。大人として受け入れてやるしかない。
『この意識のズレは一生治らんのかの?』遠い目
馬車で30分程か、結構遠いな。このアデール王都第二学院には低位の貴族の子息子女、継承権の低い貴族や商人の子息子女が主に通うらしい。
その為この第二学院は貴族区に近い商業区に建っている。学院は3m程の柵に植物を這わせてあって通気性はあるけど中が見えないようにされている。
「結構大きいわね。王都なんて土地も高そうだからこんなに広いとは思わなかったわ」
「そうですね。昔は校舎だけで3分の1もなかったようです。現在は王都の側に副都を造って人を移した為に余裕が出来たそうです」
「へぇー、でも結構遠いし毎日馬車で通うなんて大変ね。大丈夫? アイリスちゃん」
「……ダメ」
と言っても拒否権はない。学院の中に入ると馬車が止まってヴェルンさんに降ろされる。
周りを見ると馬車の出入りが激しい。皆んな試験の為に来てるのか。大抵は子供1人に付き人1人が付いていて良さげな服を着ている。今日俺はナージャさんを付き人にしている。
学院は1階部分は石造りでその上は木造りの3階建てだ。それだけで商業ギルド系の建物と分かる。商工ギルドなら木造5階建てにするだろうしな。ナージャさんが試験の手続き? をしてから教室に入っていく。教室は50人くらいの受験生がいて付き人も数人いた。
「アイリスちゃん、アイリスちゃんの席は此方ですよ。この受験票はここに置いておいて下さい。試験はもうすぐ始まります。用が無ければ動かないで下さいね? 私は教室の外で待機していますから安心して下さい。何時も通りにやれば問題無いですからね?」
そう言って頭を撫でてから教室を出て行った。他の付き人達も生徒と言葉を交わしてから出て行っている。
これ皆んな12歳なのか、でも女子の方が多めかな? それでも男子は皆んな俺より背が高い。女子の中ですら埋もれてしまうぞこれ?
女子が多いのには理由がある、商人の女子が多いのだ。商人の男子は基本的に長男は学院に通わせるけど次男以降は店を継がせる訳じゃないから学院に通わせずさっさと店員として働かせたり外に働きに出る。
そして女子は有力な繋がりを求めて積極的に学院に送り込まれるそうなのだ。
『男子はスカートを履かんから女子に間違われる事は無いから安心するのじゃ』
そんな心配はしてないよ!? 俺としては静かに過ごせればそれで良いんだからな?
『(それは無理じゃろ、何だかんだ言って此奴には騒動が付いて周りそうなのじゃ)』
ビアンカは筆頭執事のヒストロスとメイドの1人マリアと共に馬車に乗ってアデール王都第一学院に向かっていた。
「ふぅ、後2年も此処の学院に通わないといけないなんて憂鬱だわ」
「ビアンカお嬢様、アイリスのお陰でリアースレイ精霊王国との繋がりが強くなりました。学院での社交に関してはそれを活かして下されば」
「簡単に言うわね、そもそもそれは私の手柄じゃないでしょう」
「ビアンカお嬢様が雇われているのですからビアンカお嬢様の手柄です。アイリスに対しては成果に見合った褒美を与えておけば良いのです」
ビアンカはそう不貞腐れるように言うけどヒストロスには効かない。貴族とはそう言うモノであり、寧ろそれが出来なければ貴族とは言えないからだ。
「……そう言う考え方が嫌なのよ。それにその手柄だって私が雇う前の功績じゃない」
ビアンカにも貴族的な考えが出来ない訳じゃない。配下の手柄は主のモノ、そう言う考えも出来る。だだ雇う前の成果を奪うような事には抵抗があるのだ。
アイリスの見た目と言動から何も知らない子供を騙したような罪悪感を感じてしまっているのも大きかったりする。
「アイリスちゃん大丈夫かしらね」
ヒストロスが折れないのは分かっているのでこれ以上不毛な会話はしたくないと感じ話題を変えた。
(ヒストロスは有能だけど融通が効かないのよね。分かっている事でも愚痴をこぼしたくなる時だってあるのよ? いちいち真に受けて返さないでよ。余計疲れるんだから)
ブックマークや何らかの評価を頂けると励みになるので大変嬉しいです。
これからも宜しくお願い致します。




