第008話 大人の処世術?
「だいじょぶ……ソロ……やって、来た」
反対する2人を説得する為に頑張って喋る。やっぱり話すのは苦手だ。
「……ククッ、そうだったな。ソロのお前の方がずっと命懸けでやって来たんだよな」
『幼子が駄々を捏ねてるようにしか見えんがの』ボソッ
「エリック、本気か?」
「ああ、大丈夫だよ。信頼してやってくれ」
「――ふう……分かった。アイリスさん、よろしくお願いします。でも無理はしないで下さいね」
「しない……けど」
「? ……何でしょう」
「……女扱い、してる……」
「うっ! あっいえ、そんな事は……ありませんよ?」
そんだけドモって目を泳がせてバレバレなんだけど? 思わずジト目で見てしまう。――むしろ俺はどんな反応すれば良いんだよ?
「えっ、えーっと、この辺りには魔物が居ませんね。偶に鳥の声が聞こえるくらいです。……アイリスさんはこの状況、どう思います?」
チッ、露骨な話題逸らししやがって、けど仕方がない。俺は大人だからな、乗ってやるよ。――で? どうなんだ? 妹精霊。
『何が大人か分からなくなって来たのじゃが。……ううむ、何か空気が澱んでおるのじゃ。やはりこの先には何かありそうなのじゃ』
「…………危ない……」
「……成る、程?」
『もうちょっと何か無いのかの? 口下手が過ぎるじゃろ。見ろ、皆困惑しておるのじゃ』
五月蝿いな、充分だろ。
『命に関わる事じゃろ? 他の魔物がいないのがゴブリンの所為なら村が見られとったら危険なのじゃ』
「むう、……この先に……何かある」
精霊剣が五月蝿いから付け足してやった。これで良いんだろ?
『………………』呆れ顔
何か言え。
「ああ、成る程。この辺りの魔物が狩り尽くされているのは間違いない。それをした奴等は次の狩場を探すはず。洞窟の奴等はその先遣隊だったのかも知れないな」
おお、サージェスってのは分かってるな。植生調査の依頼を受けたって言ってたしそっち系の専門家か?
「となると此処の魔物を狩る時にゴブリン共は村まで追って行ってるだろうな」
「えっ、どう言う事!? 奴等は村を視認していたって言うのか?」
「あくまで可能性だが次の狩場が村である可能性は十分あると思うな」
「何て事だ。もしそうなら早く何か対処しないと不味いぞ!?」
「ああ、いや……しかし、確かにアイリスさんの言う通りかもしれない」
「そうだな。先ずはなるべく正確な情報を早く持って帰らないとな」
何故俺の名を出す? むしろサージェス達の言う通りだろ? しかしこのレイクって奴のチームは正義感が強そうだな。
『……こやつ等の方が精霊剣に相応しそうな気がするのじゃ』
ああ、良くこんなんで生き残って来れたもんだ。運が良いのかそれ以上の実力があるのか。
「さて、特にコレ以上話す事は無いようだな。思った以上に危険な状況かも知れない。……これからはより慎重に行こう」
俺がレイク達に付いて中央に、エリック達サージェス達を左右に進み出した。
って言うか当然のようにレイク達に守られてるみたいに囲われて歩かされる。狙い通りだけど何か釈然としない。――が、安全で楽出来るから敢えて何も言わないよ?
『難儀な性分じゃの。いや、ある意味逞しいのかの』
ふふん、これが大人の処世術と言うモノだよ妹精霊よ。
『そうかのう? ――んっ? 待つのじゃ。前方に集団の気配がする20、……30くらいかの』
多いな、ちょっと体が強ばる。此処からじゃまだ見えない。行きたくないけど、もう少し近づいてからじゃないと注意するのはおかしいか。
「どうしましたアイリスさん?」
「うえっ?」ビクッ
「いえ、何か緊張されたように感じたのですが……」
レイクめ、この気遣い……お前まだ俺を女扱いしてるな?
「何となく……」
「そうですか、少し慎重に行った方が良いですかね?」
「――んっ」コクッ
「分かりました。皆もそうしましょう」
「ああ」「了解」
はあ、行かないってのは無いか。……まあ無いだろうな。
『お主が頼めば先に帰してくれそうじゃがの』
それ精霊剣として言って良いセリフか?
『どうせお主は言えんじゃろ』上から目線
くっ、ぐうの音も出ないよ!?
レイクがエリックとサージェスに合図を送り2人も頷いて了承する。そこからそれぞれ身を屈め、木に隠れながら進んで行くと微かにゴブリンの声が聞こえて来た。
エリック達とサージェス達を呼び寄せ更に慎重に進んで行くとゴブリンの集落が見つかる。集落と言っても枝葉を屋根にしただけのモノで、そこに30匹近くのゴブリンがいた。
「何よ、あのくらいなら私達全員で行けば簡単じゃない」
「ああ、深刻になる程じゃなかったな。バカバカしい」
……はあ、バカはお前等だ。洞窟で先遣隊のゴブリン8匹倒したって言ってたろ。この集落の先遣隊としては規模が大き過ぎるだろうが。
「コイツ等は本隊じゃない。食い物が足らなくなって本隊からバラけただけだろう」
「此処まで行くと何時スタンピードが起きてもおかしくないんじゃないか?」
スタンピードとは魔物が集団で凶暴化して無差別に周囲を襲い出す事を言うんだけど、人里が近いからこのままだと多くの人間に被害が出てしまいそうだな。
「奴等かなり苛立ってるな。肉や果実を奪い合ってるし、確かに何時暴走してもおかしくないかもな」
このままだと何時共食いまで行くか分からない。そうなると一気に凶暴化して暴走するらしい。
「それでどうする? 此処は殲滅するしかないと思うけど」
「暴走する前に少しでも数を減らしておきたいしな」
「そうだな。それとクリスに町まで応援を呼びに行かせて良いか?」
「ちょっ、エリックさん!?」
「しっ!」
思わず声が大きくなってしまったみたいだな。けど幸いゴブリンも五月蝿くしていて気づかれなかったようだ。
「クリスは弓使いだ。短剣も使うけど乱戦には対応出来ない」
「分かった。彼女に連絡は頼もう」
「…………分かり……ました」
悔しそうにしながらも意見が覆らない事を理解して走って行った。羨ましい、代わって欲しかった。
『まあまあ、無理をする必要は無いのじゃ。己れの出来る事をすれば良いのじゃ』
幼い妹の姿をした精霊剣の精霊が偉そうに慰めてくる。……まあ無理する気は元から無いけど。
「さて、包囲殲滅して行く事になったけどなるべく逃がさないように。それと此処からは単なる調査ではなく敵の数を減らして行こうと思う」
「数を減らすには戦い続ける事が重要だ。怪我をしないように、そして逃げる余力を残して戦うように。いいな?」
「「「了解」」」
「俺達が先ず中央に斬り込んで行くからお前達はそのまま外側から包囲して行ってくれ。逃がさないようにな」
「「「了解」」」
流石に此処に来てはリズもラストも真剣で茶化す事はしない。
レイク達は相変わらず自ら危険な場所を選んで飛び込んで行く。何がそうさせるのか全く理解出来ん。まあ俺は俺で安全に気張って行きますかね。
「「「ギュアーー!!」」」「「「ぎゃっぎゃっぎーー!?」」」
レイク達3人がゴブリンを次々斬って行きながら突っ込んで行った。うえっ、あいつ等バラけてそれぞれゴブリンの集まってる所に行きやがった。マジかよ。
俺達も逃げないように囲みながら斬り込んで行く。レイク達に気を取られてるゴブリンの後ろに周りこんで首を切り裂いて行くだけで終わってしまった。
「上手く行ったな」
「ああ、逃げられたのも居なかったし良かったよ」
「3人がバラバラに攻めて行った時は驚いたぞ。先に言っておいてくれよ」
「ははっ、それはすまなかったな」
「あの程度の数じゃ俺達がまとまって攻めたら一瞬で終わっちまうからな。次の敵を追い掛ける時間が勿体ない」
「逃げ出す前になるべく多く倒しておけば包囲殲滅しやすいだろ?」
「まあ、乱戦になる前に倒しきれたからな」
レイク達にサージェス達が注意したけど上手くいったし、エリックも同意したからリズ達も不満そうだけど何も言わなかった。
「それで、この後はどうする?」
「同じような所が在ればどんどん潰して行きたいな」
「賛成〜、コレじゃ消化不良だしぃ」
「そうだよなぁ~、どんどん探して殺ってこうぜ」
「そうだな、スタンピードが起こった時に応援が間に合うか分からないしな」
「具体的にはどうする?」
「こういった小規模な集落を潰しながら本隊の規模と状況を確認しておきたい所だな」
「なんだよ、本隊は殺っちまわないのかよ」
「戦力で上回ってたとしても逃げられて他の小規模集落と合流されたら面倒だろ?」
「チッ」
本当いい年してんのに(20代半ば)クソガキだよな。エリックが居なきゃ3人共とっくに死んでるだろうに、エリックも良く見捨てないよ。俺ならコイツ等と組まされるくらいなら盾にしてでも逃げるのに。
『お主流石にそれは精霊剣として看過出来んぞ?』
自分の命には代えられん。と言うかコイツ等と組んだら俺だけ死にそうな気がする。
『むう、反論出来んのじゃ』
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