第002話 今後の方針、学院編?
「成る程。それではアイリス、ミリアーナは客人ではなく家臣として扱うと言う事ですか」
「ええ、アイリスちゃんにはアデール王都第二学院に通って貰おうと思っているの。ミリアーナは主に護衛が仕事になるわね」
「んっ?」
学院? 食後大広間でまったりしてるとビアンカ様達が俺の事を話し合っている。でも学院て何? 食べ歩きが仕事じゃなかったっけ?
『騙されたんじゃないかの? そんな仕事ある訳ないと思っておったのじゃ』
くっ、リリィめ。わざわざ人より高い所から見下すように言いやがって、芸が細かいな!
「ふむ、第二学院ですか」
「本当は私と同じ第一に従者として連れて行きたかったんだけどねえ。シャルロッテやお父様に止められちゃったのよね」
「一応早馬で知らされた通り第一と第二の両方で入学試験の手続きを進めています。しかし第二学院の試験は5日後ですが大丈夫ですか?」
「大丈夫よ、このひと月何の為にアイリスちゃんに読み聞かせをしてきたと思っているのよ」
!!? 何それどう言う事!?
『ふぅーむ、暇つぶしで相手をしていた訳ではなかったようじゃの』
「読み書き計算は出来てたからね? 割と楽だったわ」
「そっちは傭兵としての教育ね。ランクを上げるのに必要なのよ。でもアイリスちゃんが起きてる時間、ナージャさんと楽器を弾かせたり読み聞かせばかりしてたから世話好きなんだと思ってたけどそんな裏があったのね」
「いえ、私は心からお世話させて頂きました。とてもアイリス様を堪能させて頂きました。それと楽器は試験に関係ありません」
楽器は関係無いの!? て言うか堪能って何!??
「まぁ、ナージャはそうよね」
ナージャはアイリスの年齢を知っていたが、その幼い見目と言動に重度の子供好きの本能が抗えなくなって来ていた。
「ナージャ、家臣として扱うと言う事は貴女の後輩になります。様付けはいりません。――しかし、となると学院に通いながら屋敷の手伝いをしていくと言う事ですか。そうなると私ではなくアリーニャに教育して頂く事になりますかな」
「ええ、そうですわね。……ただ」
「「「ただ?」」」
「アイリスが信じていた人に裏切られたような目をしてますけど、よろしいのですか?」
「あっ、ああ! アイリスちゃん、これはアイリスちゃんの為に必要な事なのよ!? 学院に通っていた方が身分をハッキリ出来るでしょ?」
ビアンカ様があわあわしながら説明して来る。でも嫌な予感がするんだよ?
「……通うって、……生徒?」
「ん? 当たり前じゃない、教師なんて出来ないでしょう?」
「(確かに出来ないけど)皆んなは、……何歳くらいで、通う?」
「私達と同じくらいよ。12歳から3年間ね。他に下の年代の学院もあるんだけど」
私達?
「アイリスちゃんは私の一個下、12歳って事で明日ギルドカード作るから早めに起きるのよ? 寝坊したらスイーツ食べちゃうからね?」
じゅ、12……、スイーツ……、寝坊……。
「あらあら、アイリスちゃん情報過多で混乱していますね。今のうちに入浴をさせてしまいましょう」
「待ちなさいナージャ、アイリスは立場的には下働きよ。貴女が世話を焼くのはおかしいわ」
「くっ、流石アリーニャさんですね。私とアイリスちゃんの間に立ち塞がるとは……」
「何を言ってるのですか貴女は……」
「それじゃ私がアイリスちゃんをお風呂に入れるわね。ビアンカ様お風呂って何処にあるの?」
「待ちなさいミリアーナ! 貴女は護衛でしょ!? 勝手な真似をしないの!!」
その後正気に戻った俺は1人でお風呂に、……入れる訳も無く何故かナージャさんとミリアーナに洗われて眠りについた。
翌日この国で傭兵ギルドのギルドカードを作る為に先ず精霊神社に馬車で向かった。
…………スイーツ? 食べられなかったよ!! だって起きたらお昼になってたんだもん! 悪くなっちゃうからってミリアーナに食べられてたんだよ!!
もうっ! もうっ!! 食べたかったのに!!
『精神的に疲れが溜まっておったんじゃろうの。それとまた幼児化しとるのじゃ。もう中身も幼児でいくのかの?』
「うう……」
王都にある精霊神社は王都中心から外れた所にあった。結構大きい、ザイガスの街の精霊神社より大きいな。
馬車で敷地内に入ると庭に精霊達が目に入った。アレ精霊だよな?
『うむ、巫女のいる精霊神社じゃからな。精霊くらい居るのじゃ』
巫女? ……でもザイガスの街の精霊神社じゃ精霊なんて見なかったぞ?
『あそこに巫女は居なかったしの。会わんかったじゃろ?』
まあ、会わなかったけど。偉い人ならそう簡単に会えるものでもないんじゃないか?
『居たのであればシャルロッテ達が会わせていたじゃろ』
成る程、――馬車専用の入り口で降りて精霊神社の建物に入って行くと更に沢山の精霊達が居た。……あれ? お祈りする場所に行くんじゃないの?
「ようこそいらっしゃいました。私は当精霊神社の宮司を務めさせて頂いておりますザイールと申します」
宿なら20人くらい入りそうな大部屋に入ると白い服を着た40代くらいのおっさんが挨拶してきた。
「フォシュレーグ王国レンリート伯爵家長女ビアンカ・レンリートよ」
ビアンカお嬢様が合図をするとナージャさんが手紙を渡した。何か俺とミリアーナもビアンカ様じゃなくビアンカお嬢様って呼ぶように言われたんだ。まあ別に害がある訳じゃないしどうでも良い事だけど。
「……成る程。これは、申し訳ありません。少々席を外させて頂きます」
宮司のザイールは慌てたように足早に部屋を出て行ってしまった。
「ビアンカお嬢様、あれ何の手紙だったの? 随分慌ててたみたいだけど、あの人偉い人なのよね?」
「ミリアーナさん、貴女は今ビアンカお嬢様に護衛として雇われているのです。距離感をわきまえて下さい」
「あれはザイガスの街の精霊神社からの手紙よ。シャルロッテが書かせた物ね。アイリスちゃんのギルドカードを作るのに必要とか言ってたわ」
ナージャさんにミリアーナがたしなめられてからビアンカお嬢様は答えていた。距離感って俺も考えないと駄目なのか、……分からんな。
コンコン
「失礼します、ビアンカ様アイリス様、畏れ入りますが聖堂へいらして頂けますか」
「ええ、構わないわ」
アイリス様?
案内されて聖堂とやらに行く、お祈りする場所の事みたい。けど正確には此処は2階、1階にある聖堂の一部ではあるみたいだけどそれ程広くない。
そこで待っていると暫くしてさっきのおっさん、……えっと、偉い人? が女の人を連れて来た。
「お待たせしてしまい申し訳ありません。此方はこの精霊神社の巫女様でございます」
「どうも、私は当精霊神社にて巫女を任されておりますオリビアと申します」
にっこりと頬んでる40前くらいかな? 赤みがかった黒髪と目をした物腰の柔らかそうな女性がおっさんの一つ前に来て挨拶して来た。
「私はフォシュレーグ王国レンリート伯爵家長女ビアンカ・レンリートよ」
「――んっ?」コテリ
何故か巫女様? は、俺に一際柔らかい笑みを向けてくる……、くる……よね?
『確かによう見とるの』
「手紙については承知致しました。此方をどうぞ。巫女、オリビア様と私の名で書かせて頂きました」
宮司、ザイールのおっさんがそう言って手紙をナージャさんに手渡した。何のやり取りだこれ?
「アイリスさん? 大丈夫かしら? 少し目と喉が腫れているようですけど」
そう言って巫女様が俺に手をかざして回復魔法を掛けてきた。
「……んっ」
人に回復魔法を掛けてもらうの初めてだ。何か気持ち良いな。皆んなが俺の回復魔法に夢中になる訳だ。――目を閉じてその心地良さに浸ってしまう。
「もう大丈夫ですよ。でもまるで泣き腫らしたような? 何かあったのですか?」
「何でもないわよ。朝寝坊してスイーツを食べ損なって泣き腫らしただけだから」
ビアンカお嬢様が何でもないくだらない事のように手をひらひらさせて話した。
「スイーツ、スイーツはくだらなくないのに……」
あ、いかん。思い出したらまた涙が出そう。
上を向いて何とか堪えていたらビアンカお嬢様が頭を撫でてきた。うん、お嬢様も納得したようだな。でも俺の方が年上なんだから頭を撫でるのは違うと思うぞ?
『何でそう言う考えになるのじゃ? 巫女にまで微笑ましそうに見られておるのじゃ』ボソッ
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