第029話 知らない天井とステータス
「アネモネさんとユミルちゃん、あの2人ちょっと歳の離れた姉妹くらいに見えたわね」
「そうですね、アイリス様のお力でしょう。アネモネさんはもとより、ユミルさんも精神的に落ち着いたように見受けました」
「そうよねー、色々な問題もアイリスちゃんが解決してあげちゃったし、これからの生活の心配もなくなったしね。アイリスちゃんは良い子だねぇ」
『おい主よ、お主を元気付けようと話し掛けられとるぞ? 何時まで死んだような目をしとるのじゃ』
別に良いだろ、もうちょっと余韻に浸らせろよ。
『いやいや、お主一度泣き疲れて寝ておったのじゃぞ? いい加減にするのじゃ!!』
「あのデパートにも傭兵ギルドと同じように寮があるのよね? それなら2人共安心よね」チラッ
「ええ、それでなくともシャルロッテ様が気遣ってくれておりますから」チラッ
『ほれ、ミリアーナとナージャも気遣って話しとるのじゃ』
……はぁ、わかったよ。
馬車2台の旅で俺は2台目にビアンカ様ナージャさんミリアーナと一緒に乗っている。ヴェルンさん達男グループの方に乗ろうとしたのに何故かすぐに女グループに移動させられた。ビアンカお嬢様もいるのに不味くないのだろうか?
けど馬車の旅は思った以上に楽だった。揺れ辛い馬車に大きなクッション、主領道と呼ばれてる石畳みの道が更に揺れを無くしてぐっすりすやすやだった。
『揺れとっても寝とったじゃろう(まぁリリィの魔法でなのじゃが)』
村や町、街に泊まる度に外に出て鍛練出来るのも大きい。前の馬車にはヴェルンさんと護衛に傭兵3人が雇われていて手合わせして貰った。
流石に伯爵令嬢に雇われるだけあって皆んな高レベルで全く敵わなかった。細剣の木剣も先端に布を巻いて遠慮なく突きを放てるようになったのに。けど体を動かせたのはやっぱり大きくて、ストレス発散になったのは良かった。
馬車で移動中は相変わらず魔法の鍛練にナージャさんに楽器、リーフを習っている。けど何故かビアンカお嬢様の勉強にまで付き合わされて本を読まされているのは良く分からない。
そう言えばねぇねにリーフを聴かせる事が出来なかったな。
「1年みっちり練習すればもっと上達しますし、アネモネ様もお喜びになりますよ」
「むむ、頑張る」
『簡単じゃの』ボソッ
因みに途中までレイク達も一緒だったけど5日目に別れて別行動になった。近くの迷宮に潜るらしい。
「――迷宮」
「あら、迷宮に興味がおありなの? アイリスちゃん?」
「んっ」コクリ
さっきからビアンカ様にまでちゃん付けで呼ばれてんだけど良いのかコレ? ナージャさんは何も言わないけど俺は知らんぞ。
「そう。これから行く王都には無いけど、その近くの副都には迷宮があるから興味があるなら行ってみたらどうかしらね?」
迷宮は魔物の巣窟で迷宮核と言う物を破壊しない限り魔物を産み続ける。迷宮内の魔物の素材は様々な用途に有効活用されているそうだ。
「迷宮かぁー、私は行った事ないなぁ。アイリスちゃんもでしょ?」
「んっ」コクリ
ミリアーナは興味ありか、俺も最近魔物とは戦ってないからな。折角鍛練してるんだし候補には入れておくかな。
「迷宮の魔物は自我が薄く凶暴性が高いと言われています。自然の魔物とは違うので気を付けないとイケませんよ?」
「強い?」
「要は慣れでしょうね。ただ副都の迷宮は徹底した管理がされていて、学院生の訓練にも使われるくらいですからルールを守れば安全性は高いですよ」
「そうね、でも行く時はナージャとヴェルンを連れて行きなさい」
「私達は去年ビアンカ様を連れて行ってますから」
「ビアンカ様も?伯爵令嬢なのに?」
「学院の授業にあるのよ。いざと言う時にも動ける様に実戦を積ませる為にね」
「ふぅーん、お貴族様ってただ贅沢三昧してるだけじゃないのね」
「そう言うのもいるけどね」
ナージャさんヴェルンさんの2人とは良く一緒に鍛練してるけどかなり強い。レイク程じゃないけど上級者の入り口と言われる身体強化魔法を使い熟している。
ミリアーナも2人に教わって確実に上級者の道を突き進んでいる。俺だけだな、足踏みしてるのは。
『ミリアーナが伸び盛りで気付き辛いじゃろうがお主もちゃんと伸びとるのじゃ。少しは自信を持つのじゃ!』
馬車の中では前回と同じように無属性魔法の練習、魔力を操作して石ころを動かす念動魔法の練習をした。石ころくらいなら動かせるようになったけど魔力効率が悪い、悪過ぎる。
『無属性魔法と魔力操作のレベルが上がれば改善されるのじゃ。頑張るのじゃな』
今はすぐに魔力が空になるからその度にリリィの睡眠魔法で寝て、その間に外魔力循環で回復して貰う事になる。
「良く寝るわねこの子」
「シーラの町からのガタガタの道の中でも馬車の中で寝てましたから。この馬車に揺れ辛いこの道なら余裕でしょう」
「何でナージャが得意気なのよ。でも羨ましいわ、何の悩みも無さそうで。まるで赤ん坊みたいね」
「ふふ、見た目は愛らしいですよね」
「まあ……、そこは同意するわ。出来れば一緒の学院に連れて行きたかったけど、コレじゃ授業中にも寝てしまいそうね」
「ふふっ、そうですね」
馬車の中では魔法の鍛練、魔力が無くなればリリィに寝かされる。起きたらリーフの練習、偶にビアンカ様が色々な物語の本を読んでくれる。
いや、本くらい俺も読めるんだけど何故か世話を焼きたがるんだよな。俺の事歳下と思ってないか? まあ害がある訳じゃないから良いんだけど。
それと言葉使いも改めてさせられた。と言っても俺から私に変わっただけだけど、初めはヴェルンさんみたいな丁寧な口調って言われたんだけど人見知りの口下手には無理だった。
話せればカッコ良かったんだろうけど早々に諦められたんだよな。腑に落ちないけど、まあ楽だから良いか。
そんなこんなで色々暇つぶしをしながらもその後も順調に旅を続けて行って国を越えひと月経った。
「――知らない天井だ」
目を覚ますと見慣れない豪華な部屋にいた。起きるとベッドがデカい、4人部屋くらいあるな。――――って俺が縮んだのか!!!?
『何を言うとるのじゃお主は』呆れ顔
「ふあっ!?」
何だリリィか、っていきなり目の前に出て来るなよ! ってああ、ビアンカ様の屋敷か? 寝てる間に着いたのか?
ふかふかのベッドでもう一度寝てしまいたいけど我慢だ。何故かネグリジェを着てたので床に叩きつけた。どうせミリアーナ辺りだろう。下着姿になってしまったけど仕方ない。
荷物が無い……って精霊剣も無くなってる!?
『お主の荷物と精霊剣なら別の部屋に置かれておるのじゃ。此処はビアンカの屋敷なのじゃ。安心するのじゃ』
……そういや此処には高い給金と甘い物食べたさに釣られて来たけど、他には特に何も考えてなかったな。うーん、老後の為にお金は稼いでおきたい。とすると治癒院で回復魔法を使って小銭稼ぎでもするかな。
『いや戦わんでどうするのじゃ! 能力は上がっとるのじゃ。なんなら久しぶりにステータスを確認するからお主も見るのじゃ』
あぁー、前回から1ヵ月半くらいか? 確かに久しぶりだけど伸びてるのかね。
『本当はザイガスの街でもステータスチェックしようとしたのにお主が拒否するから』
だってあの時は全く体を動かせなかったじゃん。数値が落ちてるのなんて見たくないし。
『まあええ、ほれ』
アイリス シラルの町最終日→王都到着日
体力量 10→11
魔力量 20→24
筋力量 13→13
瞬発力 15→16
スキル
魔力操作レベル 016→019
火魔法レベル 014→014
回復魔法レベル 010→013
無属性魔法レベル 000→008
身体強化魔法レベル000→006
[精霊剣保有魔力レベル 300]
[精霊剣魔法レベル 100]
成人男性平均ー成人女性平均
体力量 20ー15
魔力量 05ー10
筋力量 20ー17
瞬発力 20ー18
スキル 魔法使い平均
魔力量 030
魔力操作レベル 025
各属性魔法レベル023
「伸びてはいる、な」
『何を言うか、たったひと月半でコレじゃぞ1年もすれば魔法使いとしては並以上、剣士としても強化魔法を使い熟せるようになるのじゃ』
と言うかお前が一番伸びてないか? 保有魔力100から300て。
『ふふん、なにせ精霊神様との邂逅があったからの!』ドヤァ
相変わらず一般女性にも劣る身体能力に気落ちしそうになるけど、まだ伸びると言うならまあ良いか。
次話からアイリスが去った後のライハルト子爵領の幕間が2話入ります。それから他者視点の詰め合わせの閑話が4話入って新天地での第3章が始まります。
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