第023話 精霊神社にて
「でもアイリスちゃんの回復魔法の希少性を考えると、今まで通り傭兵でって訳にはイカないわよねえ?」
夕飯はサラダとパンにスープと言う一般的な食事だった。でもサラダにかかってるタレが美味しい。パンは硬いけどスープもなんて言うか濃厚でスパイスが効いていて美味し過ぎる。
「伯爵領で回復魔法が使える人は大抵傭兵ギルドか精霊神社の治癒院に所属しているわ。先ずアイリスちゃんにはそこで一般的な回復魔法のレベルを知って貰いたいのよね」
ミリアーナとシャルロッテさん、それにヴェルンさんナージャさんとで今後の俺の事を話し合っている、……俺抜きで。
『なら参加すれば良かろう』
何言えば良いか分からないんだよ!
「シミやシワを消したり見た目が若返るなんてあり得ないのよ、本来はね」
「そうですね。アイリス様には騒ぎにならない回復魔法の使い方を学んで頂くべきでしょう」
「その精霊神社ってのは大丈夫なの?」
「伯爵領では神聖教会はそこまで力を持ってなくて、そのかわり精霊神社の力が強いの。だけどそこは商工ギルド系の組織だから問題無いわね」
俺は精霊神社の下部組織である治癒院で仕事をする事になった。まあお金を稼がないとイケないし? 一般的なレベルの回復魔法なら俺自身が自分の魔力で回復魔法を使えば負担はないから問題無いしな。
――と言う事で治癒院に行ってボランティアと言う体で回復魔法を使う。初めはやらかした時の為にリリスとしてシャルロッテさんを伴って行く事になった。……どんだけ信用無いんだよ。
初心者って事にしたからか程度の軽い患者しか回されなかった。だから精霊剣リリィの力を使わず俺の覚えたての回復魔法のみでやってみた。と言ってもリリィの診断と指導を受けながらだけど。
「そうですね、丁寧ですし理解度も素晴らしいです。見習いとしての技量はあるでしょう。後は魔力と経験を上げていけばいずれ自分で診察して適切な回復魔法を掛けられるようになって一人前になれるでしょう」
結果見習いとしては合格を貰った。評価としてはリリィの助言以外の補助が無ければそんなモンだろう。
「もうちょっと強い魔法を使っても大丈夫よアイリスちゃん」
「加減、……難しい」
シャルロッテさんがこそっと注文してきたけど目立たないようにするなら丁度良いだろ。シャルロッテさんもそんな弊害が、って言って考え込んでいたから誤魔化せたと思う。
軽度の相手なら1人500イェン、休み休みで10人に手当てしたとして5000イェンか、午前午後2回やるとしたら良い稼ぎになる、俺の魔力が保てば、だけど。
『そこは仮眠をとってるウチにリリィが外部魔力循環で回復させてしまえば良いのじゃ』
まあね。でもこれでアイリスとして回復魔法を使える事になったから遂に男物の服を買った。まあそもそもねぇねの服を買いに行った時に安く済んだんだから一緒に買えば良かったんだけどな。
忘れてたんだよ? 何で誰も気付かないかな。
『男物が似合わんから着せたくなかったのじゃろ』ボソッ
服屋にはミリアーナとヴェルンさんナージャさんとだけで行った。レイク達の護衛は無しだ。危険度が下がったって事かな? けど結局服は可愛い感じの服をナージャさんに買って貰った。女物ではないって言ってるから大丈夫だろう。……タダには勝てなかったよ。
『確かに言い張っておったの。スカートでないとは言え女児服にしか見えんが』ボソッ
最後に精霊神社だ。シャルロッテさんから神聖教会への牽制になるからって行かされた。
「でも本当に大丈夫なの? その、精霊神社っての」
「ふふっ、気持ちは分かるけど心配しなくても大丈夫よ」
ミリアーナが不信感を隠さず聞いてくる。俺も神聖教会やねぇねの事もあって不信感バリバリだよ。でも今日はシャルロッテさんも一緒だからな。何があっても大丈夫だろ。
精霊神社は木造5階建ての建物で廊下が外側に剥き出しになっていたり、屋根は何かの植物の枝の束っぽいのが敷き詰められていて、とても変わった建物だ。
神聖教会は全部白塗りで嘘っぽい神聖さを出している感があるけど精霊神社の方も独特の雰囲気を感じるな。
中に入ると長いベンチが並べられていて奥にある子供の像に信者が祈っている。俺には全く分からん感情だな。いるかどうかもわからんモンに祈るとか本当に意味が分からん。
手前の方は治癒院と同じようになっていて神官? に手当てを受けている人達がいた。こう言う事をして信者を獲得してるんだろうな。
冷めた感情のまま神像? の前まで来て形だけのお祈りをする。バカバカしいがこれで神聖教会への牽制になるなら安いもんだろう。願わくば此処が少しはまともだと良いな。
『………………………』
? ……神像の前で跪いて祈るフリをしていると精霊剣リリィとの繋がりが切れた事に気がついた。今までそんな事なかったのに。怒らせたか?
おいリリィ、どうした?
動揺を隠しながら精霊剣リリィに話し掛けるけど返答がない。どうしたモノかな。
『――――おお、ありがとうございます精霊神様!!』
?? リリィが戻ったけど、……精霊神様ってなんだ?
『む? うむ、主よ。精霊神様からの啓示があったのじゃ。新たな能力も授かったのじゃ!』
リリィから喜びの感情を感じる。けどちょっと待て、神ってなんだ!? マジでいるのか!!?
『当たり前なのじゃ。精霊神社の神様は最上位の精霊から神格を得た神様なのじゃ。そしてリリィを創ったのもその精霊神様なのじゃ』
色々突っ込みどころが多いけどお前を創った!? そう言う事は先に言っとけよ!!?
『言ったらお主は面倒事を嫌って此処には来なかったかも知れんじゃろ』
うぐ、確かに……でもシャルロッテさんに言われたら断れないよ?
っていやっ、それよりちょっと待て! って事は神聖教会にも別の神様がいるってのか!? あんな教会に!!?
『知らん。が、いたとしても悪神か神のなり損ないではないかの』
成る程、いや待て。それ精霊剣の所有者だから俺に倒せとか無いよな!?
『いたとしても滅するべきと判断すれば精霊神様自ら滅するじゃろ。安心せい、使命も何もないのじゃ』
ホッ、そうか、まあこの精霊剣の持つ清浄な魔力を考えればこの神社の神様が善神と言われれば疑いようがないしな。ならそれはもう良いや。で? 新しい能力ってなんだ?
『うむ、精霊剣リリィの保有魔力が100から300に上がったのじゃ』
保有魔力、って何だっけ??
『リリィが持てる魔力量の事じゃな。リリィは元々外魔力循環させずに魔法を発動出来るのじゃが、これだけの保有魔力が有れば戦闘でいざと言う時にリリィが魔法で盾を創って敵の攻撃を防いだり短距離転移を使って回避する事も出来るのじゃ!』
マジかよ! 凄いじゃないか!?
『魔力消費が大きいからそう連発は出来んがの』
マジかよ、……いやまあ、そりゃそうか。
『魔力の回復には時間が掛かるのじゃ。0からだと自然回復で20日程じゃな』
……マジかよ、気軽に使えねえな。
『因みにお主の体を使って外部魔力循環で回復すれば1日で済むのじゃ』
…………マジかよ、負担がデカいな。
『寝ている時にやれば良かろう。魔力の盾も短距離転移も回復魔法のようにお主との相性もあるじゃろうしの』
回復魔法みたく洗脳になるのか!? 怖っ!
『洗脳では無いのじゃ! 不敬なのじゃ!!』
ブックマークや何らかの評価を頂けると励みになるので大変嬉しいです。
これからも宜しくお願い致します。




