第019話 舞台裏と朝の様子
「シャルロッテ嬢、関所は押さえたぞ。神官長と傭兵ギルドのギルド長も引渡したそうだ」
「ご苦労様ですドルファン様」
「シャルロッテ様、教会が神兵を動かしました。関所側に向かって行きましたが、今更どう言うつもりなのでしょうかね」
「サージェス、貴方もご苦労様。神官長の事は既に理解してるでしょう。恐らく私かドルファン様を捕らえて何かしらの譲歩を考えているのではないかしらね」
「譲歩、ですか」
傭兵ギルドのギルド長室でシャルロッテ様と騎士団団長のドルファン様を交えて今後の対応を話し合っていたのだが、何故か俺まで巻き込まれたのだ。
「ふむ、神兵など数を集めても300も居ないだろう。弱兵ばかりだし騎士は50程街に潜り込ませている。充分対処出来るな」
「ドルファン様っ、失礼します! 街の衛兵が神兵と共に動き出しました!!」
「何っ!? 衛兵もか! 如何ほどの規模だ!!」
「はっ、70程は確認しました! 最終的には200程にはなりそうです!!」
「合わせて500か、少々面倒ですな」
「ふふ、そうですね。まあ此処を囲んで街中で戦闘しないだけの理性はあったようですけど」
ドルファン様は顔を顰めているのにシャルロッテ様は楽しそうにしてるな。それにしても今更衛兵かよ。昨日の襲撃では来なかった癖に。いや、俺等が神聖教会に反抗するとは思ってなかったから利益を独占しようとしたのか。
それが足元に火がついて協力を仰いだって所か。領を越えるまでの仕事だってのに最後の最後までコレかよ。
「ドルファン様は庁舎に行って貰えますか? 街の上層部かその身内を抑えて衛兵を引き戻しましょう」
「ふむ、敢えて兵を追わずに人質を取って教会と切り離す、と言う事ですか」
「人質を取るのは向こうがしようとしてる事でしょう? 先にやられても文句は言えないでしょう」
「はっはっはっ、確かに。では抑えるのは私が、交渉は任せてよろしいか?」
「ええ、勿論ですわ」
ああ聞きたくない聞きたくない。何で俺がこんな目に……。
――その後俺等は徹夜で神聖教会周辺の監視をさせられた。夜明け前に騎士から聞いた話しによると衛兵の切り離しは成功したらしい。まあシャルロッテ様だからな。
そして教会の神兵共はこの街に潜んでいた騎士達と関所を抑えていた騎士団とで挟み討ちにして蹴散らしたそうだ。怖い怖い、鍛えられた騎士団と武器を持っただけの素人集団、戦いにすらなってなかっただろうな。
「リリちゃん、もう朝だよ? ママに抱き付いてるとママが起きれないよ」
朝起きたらねぇねに抱き付いていてミリアーナに抱き付かれていた。暑い。けどまだ眠い、……寝よう。
「もう、ミリアーナさんは目ぇ覚めてるでしょ? ほら起きて起きて」
「んんー、もう仕方ないなぁ。あれ? シャルロッテさんとナージャがいないわね。徹夜したのかしら」
ああ、涼しくなったな……。これで、良く……寝れ、る……すぅ。
――良いベッドだったからか昨日寝っぱなしだったのに良く眠れた。寧ろまだ眠れそうだったのに無理矢理起こされて眠気が取れない。
「はいアイリスちゃん、あーん」
「んっ、もにゅもにゅ……んく」
「はい、次は私ね。あーん」
「あむ、あむ……んくっ、こくっ」
寝ぼけたままミリアーナとユミルに食べさせられる。んんー、頭が回らない。頭がゆらゆらする。
「うへへ、リリちゃん甘えん坊だね。ねえママ、リリちゃんって子供の頃もこうだったの?」
「えっ? うーん、……確かに甘えん坊だったけど、ここまでじゃ無かったような??」
「違う、……甘えん坊違う」
遺憾だ、断固抗議する。
「いやいやアイリスちゃん? 妹さんに抱き付きながら私達に食べさせて貰って、説得力ないよぉー?」
「――んゅ? ……何時の間に??」
ねぇねに抱き付きながらミリアーナとユミルにご飯を食べさせられていた。恐ろしい、これじゃまるで俺が皆んなに甘えてるみたいじゃないか。
『まごう事なく甘えとるの。これで違うと言えるお主の神経を疑うのじゃ』
「違う、……寝ぼけただけ。……無実」
「ええー、でもまだママに寄り掛かってるしぃ」
むむ、仕方がない。そんな疑惑を掛けられたら堪らない。お兄ちゃん子のねぇねには辛いだろうけど仕方がない。
「…………ほら、離れた」
「「渋々だね」」『渋々じゃの』
「でも妹と寝てる時点で言い訳出来ないよねリリちゃん?」
「…………むう」
姪っ子に甘えん坊扱いされた。けどまあ良い、子供じゃないんだから俺はそんな事気にしないぞ。
『大人になって言われる方が異常な気もするがの(まあ精霊剣としては関係ないし構わんが)』
気にしない気にしない、そのままご飯を終えて金髪を付けてリリスになる。女装姿もこれで最後か、そう思うと感慨深……くもないな。うん、早く解放されたいな。
「リリスちゃーん、今日が女の子の格好最後なんだし私にも手伝わせて」
「あっ、私もやりたーい」
ミリアーナとユミルが髪の毛をいじり出して服がどうとかリボンはこれとか言ってる。――嫌な予感しかしないぞ?
「そろそろ出るわ。準備は出来てるわね?」
30分程するとシャルロッテさんとナージャさんがラン兄を連れて来だ。ねぇねとユミルとの別れの挨拶をしてる。
シャルロッテさんが俺の所に来た。何だろ、小首を傾げると何故か目頭を抑えて難しい顔をしてる。徹夜でお疲れかな? ねぇね絡みだったろうから申し訳ない、後で回復魔法を掛けてあげよう。
『睡眠不足は寝るのが一番なのじゃ』
それは俺にもどうしようもないな。
「……今日は一段と可愛いらしい格好ね、アイリスちゃん」
「んっ、皆んながやった」
だから俺は無実だよ? ミリアーナとユミルだけじゃなく最後にはねぇねまで混じって来たんだよ? 皆んな悪ノリし過ぎだよね。
白にピンクのひらひらスカートにシャツ、髪も何か編み込んで大っきな赤いのリボンを付けられて何処のお嬢様だよってんだ。人の体で遊んでるとしか思えない。
怒るんならミリアーナを怒って欲しい。絶対アイツが主犯だから。
まあねぇねも俺との距離感が大分近付いて来たのは良い事だ。いずれ昔みたいにリリちゃんリリちゃんと言って来るに違いない。
『(度重なる失態を見てお主に対する警戒心が底辺を超えたのじゃろう。むしろユミルの妹くらいに思っとるかもしれん。いずれバレるじゃろうが残酷過ぎてリリィからは言えんのじゃ)』
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