第018話 母娘の再会
手数料で50万イェンも取られた。手数料で一般家庭の3ヶ月分の金が取られるってなんだよ。借金の利息だけで充分利益ある癖に、シャルロッテさん達が居なかったらどこまで釣り上げられたか、恐ろしい。
「アイリスちゃん、良いかしら?」
「んっ?」
「アイ……リス?」
「んっ、アイリス!」えっへん
流石ねぇね良く気付いた! 思わず胸を張って答えたよ。良く出来た妹だよ! って言うか家族なのに他の連中が気付かない方がおかしいんだよな? テンション爆上げだよ!!
「えっ? えっ?」
「アイリスちゃん落ち着いて。アネモネさん分かってないわよ?」
「そんな事ない、アイリスって言った!」
「えっ? えっ?」
――分かって無かったよこん畜生。実の妹にまで説明しないと分かってくれないなんて、……テンション爆下げだよ。
シャルロッテさんから説明を受けて何とか理解してくれたけど距離を感じる。まあ20年振りだし2年も奴隷商なんかに居たから仕方がないよね。
『そう言う問題か?むしろお主をアイリスだと信じ切れてないんじゃろ』
止めろ、これ以上俺の心を抉るな。恨みでもあるのか。
『……すまんのじゃ』
「アイリスちゃん、今の契約はリリスちゃんとして契約してるし、アネモネさんの借金が商業ギルドから貴方に移っただけでしょう? 軽犯罪奴隷としては商業ギルドの紐付きだから下手をするとお金を戻されて商業ギルドに引き戻される可能性があるのよ」
むむ、ねぇねが身体を強張らせた、でもねぇねは渡さないよ。
「これから商工ギルドに行って手続きをし直すわ。そうすれば完全に商業ギルドとは切れるんだけど、どう言う契約にする?」
「どう言う?」コテン
「借金をどう返すかとか、契約内容をどうするかとかよ。別にそのままで良いなら良いんだけど」
「んと、全部、無しに、――する」
流石に妹の借金をそのままに出来ないもんな。ほぼすっからかんになるけど仕方ない。
「そう、でもアネモネさんは軽犯罪奴隷だから借金が無くなっても3年は解放出来ないわ。それまでは奴隷に対する最低賃金、月5万イェンはアイリスちゃんがアネモネさんに支払わないとイケないの。だからその分くらいは残して返済しても良いんじゃない?」
ああー、そっか、全額返済すると俺の残金が70万イェンしか残らないしな。でも半年くらいは余裕でもつ……か。ここはお兄ちゃんらしく格好つけたい。また稼げば良いよな。
ねぇねの生活だって苦しいだろうし月5万イェンくらいあげるのだ。
「だいじょぶ、――返済、する」
今ねぇねには首輪がされている。隷属の首輪と言うヤツで主人に対して服従をさせるモノだ。その制限を無くしておきたい。って思ってたけどそれは奴隷商か神聖教会じゃないと出来ないそうだ。
女装を解いてアイリスとして商工ギルドで契約をし直して傭兵ギルドに戻った。そう、妹の前で女装してたんだったんだよ。忘れてたよ!
何でもない振りして着替えたけどちょっとだけ恥ずかしかったよ。
『これでちょっとか……、お主の羞恥心はどうなっとるんじゃ?』
ふん、良い大人がこんな事でいちいち動揺してられるか。
『寧ろ大人じゃからなのじゃが……。いや、もう良いのじゃ』諦め
「ママッ!」
「ユミルッ!」
「アネモネッ、良く戻って来た!」
「ランディ兄さん、うん、色々ありがとう……」
傭兵ギルドの中に何故か貴族が入るような豪華な部屋があって、今日はそこに泊まる事になった。……けどねぇねにユミルとラン兄が涙ながらに抱き合って、良い空気を出していて入り込めない。
何かモヤモヤする! 助けたの俺なのに何かモヤモヤする!! ――言わないけどな!?
「アイリスちゃん性奴隷契約だけでも残せば良かったのに、本当に良かったの?」
ミリアーナが後ろから抱き付きながらとんでもない事を言い出した。
「「「………」」」
ねぇねが誤解するじゃん! 一瞬部屋の中が凍りついたかと思ったよ!! ラン兄の目が今まで見た事も無い殺意のこもった目になってたし超怖い。
プルプル震えてるとミリアーナが大丈夫大丈夫と安心させるように抱き締めて来た、……けどお前の所為だからな!?
「アイリスちゃんはそんな事しないわよ。首輪の制限だって取り除けるだけ取り除く予定なのよ?」
シャルロッテさんが弁明してねぇねも追従してくれて何とか誤解が解けた。全く、ミリアーナめ。
「ママ、今日は一緒に寝よ!?」
「えっ?」
「「「えっ?」」」
あっ、ヤベッ声に出ちまった。
「なっ、何でもない」ぷいっ
20年振りだしいっつも後ろに付いて来て懐いてたからなあ。昔を思い出して俺もちょっとだけ、本当にちょっとだけだよ? 一緒に寝たいと思っちゃったんだけど仕方がないな。もう大人だし潔くユミルに譲るぞ。
『寧ろそれが当たり前じゃろ。何を良い大人の男女が兄妹とは言え共に寝ようと思えるのか』
五月蝿いリリィ! 俺もお前に会う前ならそう思ってたよ! でもお前に会ってから色んな女と寝てばっかじゃん!? もう慣れちゃってその辺の感情が麻痺してたんだよ!!
『お主はそうでも妹の方は慣れとらんからの。普通に引くんじゃないかの』
ギクッ!?
「アイリスちゃんもママと一緒に寝たかったの?」コテリ
ギクギクッ! ――ユミルが首を傾げながら聞いてきた。何故分かった!? て言うか人の心を読むんじゃない!!
「そっ、んな事ない……もん」
あっぶねえ、危うく妹に引かれるトコだった。兄妹の関係に致命的な亀裂が入ってたかもしれなかった。
「んふふぅ、動揺しちゃってえ。ママと一緒に寝たいなら言えば良いのに、それじゃあママを挟んで3人で寝ようよ。ねっ? それなら良いでしょ?」
「止めてっ! リリはもう大人なの! ねぇねと寝なくても平気なの!!」
「「「………………」」」
「アイリスちゃん……自分の事リリって呼んでるの? それにねぇねって」
っ!? ――ユミルがニヤニヤしながら俺を見てる。痛恨のミスだ! リリィ! こう言う時こそ精霊剣の出番だぞ。伝説級の力で何とかしてくれ!
『無茶言うでないのじゃ! 精霊剣の出番ではないしリリィには無理なのじゃ!』
無常ぉおおーーっ!! ちょっとは考えろよぉおおーーーーっ!!!
「リリちゃん顔真っ赤だよ?うわぁ、ほっぺ熱ぅーい。可愛いぃ」
「止め……、見ないで! ……ふええ」
ユミルが顔を隠させてくれない、もう泣きそうだよ。その後ユミルだけじゃなくミリアーナまで混ざって散々おもちゃにされてしまった。俺の大人の威厳が殺された。
『威厳? ――あったかの??』困惑
痴態を晒してしまった。けどそれが良かったのかねぇねとの距離が少し縮んだ気がする。こんな形では望んでなかったけどな!
明日早朝にはこの街を出ていよいよレンリート伯爵領に入る。ねぇねとユミルは急いで準備して貰っている。2人共一緒に行く事になったんだよな。まあねぇねは俺の奴隷になってるしユミルは母親と一緒が良いだろうから当然と言えば当然だけど。
ついでに2人共傭兵になって貰おうかな。お金を稼ぐにしても冒険者より良いし、寮があるから俺が養いやすいしな。ランディ兄さんは雑貨屋をやっていて上手くいっているから残るらしい、商業ギルド所属だけど大丈夫かね?
明日の為に夕方早めにシャワーを浴びた。何時も通りミリアーナに洗われたけどユミルまで混ざろうとしたのをねぇねに止められていた。
「昨日だって一緒に入ったんだから大丈夫だもん」
「えっ!?」
ユミルめ余計な事を……。うわ、ねぇねにゴミを見るような目で見られた。ミリアーナと2人掛かりでオモチャにされて大変だったのに。――その後涙目になりながらも皆んなでご飯を食べて就寝。ねぇねをユミルと挟んで寝たんだけどねぇねは俺と寝るのには抵抗ないのかね?
『色々と覚悟をしていたくらいじゃからのう。まあ単純に男として見られてない可能性の方がありそうなのじゃが』
だから何で俺の心を抉って来るの? 一言多いんだよ?
『……すまんのじゃ』
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