第016話 街に住む家族達
「ふあぁ……、んゅ」
「んっ、起きたのリリスちゃん」
目を覚まして起きると夕方になっていた。何時も通りミリアーナを引き剥がして起き上がる。……2人だけか。
「シャルロッテさんは仕事よ」
女物の服の中からひらひらのついた白シャツに、明るい茶色に黒のチェックのパンツとベストに着替える。パンツだけど女物だから男っぽさのカケラも感じ無い。早く男物の服が欲しい。
『男物を履いても男っぽさは出ないと思うのじゃがの』ボソッ
1人で外に出るなって言われてるし、仕方ないからストレッチでもして身体を動かしていくかな。多少はストレスが軽減されるのだ。
「私も手伝ってあげる」
2人でストレッチをしていくとじんわり汗をかいてきた。
「リリスちゃん身体柔らかくなったわねえ」
「んっ、ミリアーナも、柔らかい」
「ふふっ、身体の柔らかさは自慢だからねー」
それから体幹トレーニングに入る。これは苦手だ。すぐに身体が悲鳴をあげる。幾つかのレベルに分けると俺は子供レベルは出来るけど一般女性レベルが既にキツい。
あっと言う間に筋肉がプルプルいって撃沈した。素人の女の人より力が無いってどう言う事なんだか。ストレス発散の為に身体を動かしたいのにこれじゃ逆に鬱憤溜まるな。
「ストレス溜まってるの? 発散させてあげよっか?」
?? ……何?
「さあおいで、私の体で発散させてあげるから♡」
満面の笑みで両手を広げるミリアーナ、……まあそんなもんだろうと思ってたよ。
「…………はあ」
「ちょっ、それは流石のお姉ちゃんも傷ついちゃうよリリスちゃん!?」
「んべっ!」
ミリアーナの奴背中に乗っかって来やがった。何のつもりだ!?
「ほらほら、早く謝らないとくすぐっちゃうよー、リリスちゃん」
「うはっ、あははっやめっ、あはっ、あはは、やめてぇー!!」
「止めて欲しければミリアお姉ちゃんの身体で発散したいですって言いなさい。こちょこちょこちょー」
「あっ、ダメッ、……んあっ……」
何を言わそうと……ヤバ、もう息が……。
「おお、何かエロ可愛い声」
コンコン「入るわよ。……随分楽しそうね、2人共」
「あらシャルロッテさん、もう仕事は終わったの?」
やっと……止まった……。死ぬかと、思ったぞ。
「まだよ、それよりリリスちゃん。いえ、今はアイリスちゃんと言っておきましょうか。ちょっと会って貰いたい人がいるんだけど良いかしら?」
顔を上げふらつきながらミリアーナに寄りかかって前を見ると、桃色髪と瞳のおっさんと少女が入って来た。顔立ちがシュミル兄さんと姪のマリエルに似てる、――って言う事は。
「……ラン兄?」
「うん? ……誰だ?」
やっぱり長男のランディ兄さんか、でもランディ兄さん、なんか困惑してるな? ――あっ、そうか。
「これ、……カツラ」
俺は金髪のカツラを取って見せた。髪の色が違ったから分からなかったんだね。
「……マリエル? か? いや、なんか幼くなってないか? どうしてこんな所に? 皆んなはどうしたんだ?」
何でだよ! マリエルは姪だろ! て言うか10歳のマリエルより幼く見えるってどう言う事だよ!? 背だって俺の方が10cmも高いんだぞ! 10cmもだぞ!?
シャルロッテさんを半眼で見るとコホンと一息ついてから説明してくれた。
「――そうか、本当にアイリスなのか……」
「んっ、…………疲れてる?」
「ああ、まあちょっとな。アイリスは実家に寄ってから来たんだって? 皆んな元気にしてたか?」
「んっ、……してた」
「そっか、そりゃ良かった」
優しい目つきで頭を撫でて来る。俺もう大人なんだけど? ランディ兄さんもシュミル兄さんも170cm近くあって普通の成人男性並みなのに何故俺だけちびっ子なのか。
「……ねぇねは?」キョロキョロ
この街に居るんでしょ? 元気にしてるのかな? 早く会いたいな。
「ああ、居るよ。……それで、コイツはアネモネの娘でユミルって言うんだ」
「おお、ねぇねの娘」キラキラした瞳
ランディ兄さんの隣りの少女、俺達と同じく桃色の髪と瞳でマリエルより5cmくらい低いかな? どことなく勝気なイメージの娘だな。
130cmの俺に追い付くには後数年は掛かるだろう。ふふん!
この娘がユミル、今9歳らしい。ねぇねもこんな娘が出来る歳になったんだなぁ。て言うか俺実家に行った時ユミルって間違われたんだよな。此処でもランディ兄さんにマリエルに間違われるしどう言う事??
『そんな事よりこの姿のモデルになったオリジナルと会えるのじゃな。ちょっとワクワクするのじゃ』
リリィが好奇心丸出しでフラフラ飛び回っている。けどそんな事ってなんだよ。――まあ俺も妹とは会いたいけどさ。
「貴方が、アイリス伯父さん?」
「っ! そう! アイリス伯父さん! えへへ、そうなんだよね? 今まで少女扱いされるのが可笑しいんだよ? 伯父さんだよ伯父さん!」
久々にちゃんと大人の男として扱われて嬉しくなってユミルの手を握って頭を撫でてしまうな! ああ、このまま踊りだしたい気分だ、うはははは。
『落ち着くのじゃ、急に流暢になりおって全く、周りの人間が付いて行けてないのじゃ』
周りを見ると何か微妙な空気が流れてる気がするけど気にしない。なんたって大人として見られたんだぞ!?
「アイリス、……アネモネは、今奴隷になって奴隷商にいるんだ」
「………………………ふぁっ!!?」
ランディ兄さんがいきなりとんでもない事を言ってきた。
理解するのに時間が掛かったよ! て言うか何で妹が奴隷になんかになってんだよ! ランディ兄さん何やってんだよ!! どうなって、いや待て、奴隷商にいるって事は取り敢えずまだ買われて無いって事だな!?
「………………いくら?」
「……2570万イェンだ」
高っ、金貨257枚かよ! 何でそんな値が。
「2年前にアネモネの旦那が病にあってな。教会の祝福を受けたんだが、結局助からなくてな。それでも大金が請求されて。やっていた宿も人手不足になって人を雇える金も無くて、手放した時には借金漬けだ」
神聖教会め、助けられなかった癖に大金請求したのかよ。ムカつくが、でも今は多過ぎる借金の事だ。
「それで軽犯罪奴隷にされちまった。返す当てが無いのに借りたって、詐欺罪にもされて」
思わず唇を噛み締める。軽犯罪奴隷だと借金を返しても何年かは奴隷のままじゃないか。
「俺も何とかしたかったんだけど、ユミルを守るだけで精一杯だったんだ」
「貴方は良くやったわ。本当はこの娘も一緒に奴隷堕ちになる所だったんだし」
ランディ兄さんが悔やんでも悔やみきれないって表情をしてる。それをシャルロッテさんがフォローする。て言うか娘のユミルまで奴隷に堕とそうとしやがったのかよ! 許せない!!
「ランディ叔父さんは悪くないよ! 私が冒険者で稼いで買い取るから大丈夫だよ!!」
ユミル! 良い娘だなぁ。そんな状況でランディ兄さんを気遣って。
「んっ、……後は、任せる」
「アイリスが? どうやって?」
「買い取る」
そのくらいの蓄えはあるしな、まあ殆どが回復魔法で稼いだ金だけど。今程リリィに感謝した事はないぜ。
『うむ、我も使い手に喜ばれるのは精霊剣冥利に尽きるのじゃ』えっへん
「本当!? ママを助けてくれる?」
「んっ、お金ある」コクコク
ねぇねは、妹は俺が助けるぞ!
「アイリスちゃんありがとう!!」
ユミルが泣きながら抱き付いてきた、けどちょっと待て。ちゃ、ちゃん? さっきは伯父さんって呼んでたじゃん!
「伯父さん、だよ?」
「えっ? ……伯父さんって呼ぶの?」
「んっ!」コクコク
「ええ、……いや、無理だよ?」
ぽろぽろと嬉し涙を流しながらも真顔で言われたぁーー!! 何で!!? 目の前が真っ暗になって崩れ落ちる。
「アイリスちゃん、ユミルちゃんに伯父さんって呼ばれた時すっごく可愛い笑顔振りまいてたよ? あんな可愛い笑顔を見ちゃったら伯父さんなんて呼べないものよ」
ミリアーナが何か言っているけど恐る恐るユミルを見ると目を逸らされた。
「ああ、死んだ目になってるアイリスちゃんも可愛いわぁ。ね? ユミルちゃん?」
「あっ、えっと、ごめんね? アイリスちゃん?」
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