第013話 幕間 シラルの町の決着
アイリスの拠点だったシラルの町でも神聖教会の勢力が暗躍していた。
「ふむ、これで神兵200名程集りましたな」
「ぐふふ、傭兵など職員合わせても100人足らずらしいですし、包囲して聖女をさっさと回収しましょうぞ」
「噂で聞くと幼い上にとても見目が良いらしいですからな。私も祝福を与えてやるのが楽しみです」
「祝福を与えるのは私が先ですぞ? 何しろ私の町の聖女様ですからな」
「分かっていますとも、我々も見目の良い神官を連れて来ていますから皆で楽しみましょう」
「そうですな、ぐふふ」
まあ、端的に言ってクズの集まりである。
「ギルド長っ、教会が動きました! 神兵を引き連れて此方に向かってます!!」
「そう、では手筈通りに、傭兵には緊急依頼で下に集まって貰って、それと例の冒険者達に協力要請と商工ギルドにも動いて貰って頂戴」
「はい!」
副ギルド長からギルド長に昇格したレーナはアイリスに助けられた冒険者と協力関係を結んでいて、聖女様を守る為に動いて貰う約束をしていた。
町中にも神聖教会への不穏な噂を流して住民の不信感を煽っておいたから冒険者ギルドも表立って神聖教会を支持し辛い状況になっている。元々町での評判は良くないしね。
下に降りて行くと傭兵が入り口を押さえていて、神聖教会の人間が中に入れず騒ぎ立てていた。
「あらあら騒がしいわね。魔物でも出たのかと思ったわ」
「何だと! 我等神聖教会の信徒を魔物風情と一緒にするか!?」
太った神官が騒いでいる、アレはこの間来たデブ神官ね。……はあ、血を見ないで済むと良いんだけど、どうなるかしらね。
「それで、教会の人間が何故魔物のように騒ぎ立てているのですか?」
「まっ、きっ、きっ、貴様ぁあああーーーー!!」
あら煽ってしまったかしら? シャルロッテ様のようにと思っているとどうしてもこうなってしまうのよね。シャルロッテ様にバレたら私をどう思ってるのかしら? とか笑顔で言われそうで怖いけど。
「おっ、お前では話しにならん。ギルド長を呼んで来い!」
「あら? 今のギルド長は私ですよ?」
「なっ、何? それじゃ前のギルド長はどうした!!」
「さあ、どうしたのかしらね?」
「貴様! ふざけてるのか!!」
「いえまさか、――守秘義務がありますので」
「ええーいもういい!聖女を出せ!! 嫌だと言っても無理矢理探し出して神聖教会が救い出すからな!!」
「救い出す、とおっしゃられてもあの子は元々傭兵ですよ? 無理矢理働かせてる訳でもありませんし」
「黙れっ! 癒やしの祝福を使える者は神の信徒であり神聖教会に所属しなければならんのだ!!」
「なら勘違いですね、あの子が使うのは祝福ではなく紛れもない回復魔法です」
「回復魔法など存在せん! それ等は全て神より与えられた癒やしの祝福だ!! よって神の代理として神聖教会で人々に癒やしの祝福を与えていかねばならんのだ!」
「仮に祝福だとしてもあの子は自分で癒やす相手を見つける事を選んだのです。それこそが神のご意志なのでしょう」
「貴様如きが神を語るなっ! 未熟な信徒を導くのは神聖教会の任務なのだ!!」
顔を真っ赤にして床をダンダンと地団駄を踏んでいる、……あのまま血管が切れて死んでくれないかしら?
「ふふっ、あの子に神罰が下って無いのが神の意に添えている証拠でしょうに」
「もう良い! くだらん会話などしていられるか!!」
「ぐふふ、そうですよ。コチラは200名を超えているのです。相手は高々100人程度、いちいち不信心者に説得も必要ないでしょう」
ああ、結局こうなったか、私の合図と共に鍛練場から武器を携えた人間がぞろぞろと出て来た。
「ふん、誰が100人程度だって?」
「なっ、何だ貴様等っ」
「聖女様に救われた冒険者だよっ!!」「聖女様は渡さねーぞ、オラッ!!」「命要らねーならかかって来いや!!」
……威勢が良いのは良いけどガラが悪いわね。まあこれで引いてくれれば良いんだけど。
「きっ、貴様ら神聖教会に逆らう気か! 異端審問に掛けられたいか!!」
「くっ、このやろ〜」
「そうだ、逆らうなら異端審問に掛けてやる! 皆んな火炙りにしてやるぞ!!」
「わはは、分かったらさっさと退かんか卑しい奴等め! そして聖女様を連れて来い!!」
引かないわよねえ。馬鹿な神官共は優位に立ったと勘違いしてるけど傭兵は覚悟を決めて武器に手を掛けてるし、それを見て冒険者達も武器を手にしだしちゃった。
不味いわね、一触即発じゃない。こんな時シャルロッテ様ならどうするかしら。
「聖女様をアンタ等みたいなゴミと会わせる訳無いだろ。聖女様の目が腐っちまったらどうすんだよ」
1人の女性冒険者が大きな剣を抜いたまま前に出て来た。確か彼女は冒険者ギルドの最高戦力で……。
「――戦鬼だ」
「おお、アイツが戦鬼か。強そうだな」
「どうすんだ? コッチは殺し合う気満々だぜ?」
「貴様等ぁ、こんな真似してただで済むと思っているのか!?」
このままだと絶対血を見るわね、何とかしないと。シャルロッテ様を思い出して……。
「貴方こそどうなのかしら?」
「なっ、何!?」
「隣りのレンリート伯爵領では貴方達神官、神兵の大粛正があったそうよね?」
「そっ、それがどうした! 子爵領には関係ないだろ!?」
「伯爵はこの間のスタンピードの杜撰な対応にお怒りのようだし、あのお方に神聖教会は大分睨まれてるんでしょう? これを期にどんな圧力を掛けて来るのかしらねえ?」
神官神兵の顔が青くなってる、もうひと押しかしらね。
「スッ、スタンピードと我々は関係ないだろ!!」
「そうだったかしら? でもスタンピードで活躍した聖女様の事は報告済みですし、無理矢理連れ去られたなんて伯爵が聞いたら貴方達はどうなるかしら? 教会本部は守ってくれるかしら、首を切って終わりにしようとしないかしらね」
「…………ぐう……」「うぬぬ、……おのれぇ」
「あの異端者が動く前に貴様等を異端審問にかけて聖女様を手に入れれば」
「いや、それを口実にあの伯爵が動きかねませんぞ?」
「ふふっ。――で? どうするのかしら?」
「クソッ、この場は引いてやる! だがこのままで済むと思うなよ!」
はあ、何とかなったわね。血を見ずに済んだのは良かったけど、もうちょっと穏便に済ませたかったわ。
「皆んな良くやってくれたわ。お礼として冒険者の貴方達にも金銭を受け取って欲しいのだけどどうかしら」
「おお〜、太っ腹! ウチのギルドとは違うな!!」
「待ってくれ、アタシは聖女様への恩返しで参加したんだ。お金は受け取れない」
「うぐ、そっ、そうだな。俺もタダで命を救われた身だ! コレで金なんて受け取れねえよ」
「そう、なら依頼させてくれないかしら? 今回の顛末の噂を流して欲しいの、神聖教会を牽制する為にね? これはその酒代よ」
「そう言う事なら有り難く!」
「ひゃっほー、今日は飲むぞー!」
「いえ〜!結構入ってるぞ。早く行こうぜ! 仕事だ仕事だ!」
「こんな仕事なら毎日受けたいぜ!」
「はあ、ったくしょうがない奴等だ。で? 聖女様は大丈夫なのか?」
「貴女は戦鬼さんね。あの子は大丈夫よ」
「そうかい、まあ今何処にいるかは知らないけど元気なら良いさ」
思わず目を見開いて戦鬼さんを見てしまう。
「はっ、やっぱりそうかい。まあ安心したよ」
アイリスちゃんがもう町にいないと確信を持たれてしまいましたね。やっぱりシャルロッテ様のようには行きませんか。いえ、今はそれどころではないです。この女性は有望ですし何とか味方に引き込めないでしょうか。
「なるべく此方に引きつけておきたいのです。そうすればするほど聖女様が安全になりますから」
「ああ、アタシも出来る限り手伝うよ」
――後日タージレンの街で神聖教会絡みの惨劇が起きた。シラルの町の神聖教会もその噂に恐れをなして鳴りを潜め、この町での騒動は終わりを告げた。だがコレもシャルロッテ様の計算かとレーナを戦慄させたのだった。
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