第012話 幕間 タージレンの街の決着
「おいおい、お前等この人数差でやるつもりかよ? 冒険者も此処を取り囲んでるし傭兵共もコッチ側だぜ? 素直に聖女様を渡しとけや」
「もしかしたらお前等もおこぼれにあずかれるかもしれねえぞ?」
「ギャハハ! そん時はもうブッ壊れてんじゃねえかぁ?」
「駄目ですよ。今回の聖女様はかなりの祝福の使い手、壊す訳にはいきません。大事に大事に私達だけで祝福を与えていきます」
「うはは、そりゃ残念だったな。でもお前等も命には変えられないだろ。さっさとっヒュッ!?」
レイクが大きめの片手剣を両手で持ち、喋っていた神兵の首を斬り裂いて行った。更に突っ込んで2人3人と斬って行く。トマソンも両手剣でレイクの後ろをフォローしながら次々と敵を斬り裂いて行った。
「うわあーーーー!!」「ひいぃぃーー、人殺しぃいいいーーーーっ!!!」「にっ逃げっ、ぎゃっ!」
神兵達は狭い廊下で戦い辛いとか人数差を活かせないとかじゃなく、碌な抵抗も見せずに逃げ惑い足をすくませ情け無く命乞いをする。
「なぁーにアレ? なっさけな」
そう言いつつも私はレイク達の迷いの無さに驚愕していた。少なくともこのライハルト子爵領では神官や神兵と言うのはどれだけ傍若無人でも抵抗してはいけない恐怖と嫌悪の象徴なのだから。――それに手を掛けるなんて考えられない暴挙なのだ。
「権力を傘に着て、抵抗も出来ない相手に好き勝手やって来たんだ。まともな鍛練も実戦もした事無いんだろ」
リックの言葉にミリアーナも頷く。現にほとんど無抵抗なまま神兵達は斬り捨てられレイク達はズンズンと神官に近づいて行った。
「なっ、何をしておる! たっ、たかが2人だぞ! さっさと殺さんか!! 冒険者共はっ! 傭兵共はどうした!!」
「何時も通り相手が無抵抗になると思って前面に出て来てたのが間違いだったな」
「て言うか何で逃げないのアイツ?」
「足がすくんでるんだろ? 足元見ろ、漏らしてる」
「うわ、変なモノ見せないでよ。でも冒険者や傭兵が動いたら厳しくならない?」
「ああ、けどその前に……」
「動くな!!」
レイクが偉そうな神官の首に剣を突きつけた。
「兵を引かせろ! 冒険者と傭兵もだ!!」
「あひ、あひぃ……」
「聞こえないのか!!」
レイクが首に当てた剣を押し当て浅く斬りつける。
「おま、お前等、神聖教会に、……こんな真似して、ただで、……済むと思っているのか……」
「言葉が通じないなら死ね」
「ひっ、ひぃいいぃーーっ、まっ待て! やっ止め、引けぇーー! お前等引けぇぇえええーーーーっ!!」
レイクが大袈裟に剣を振り上げると神官は崩れ落ちて泣き喚くように叫んだ。神兵達も10人以上斬られ同じ階にいる奴等は戦意喪失しているようだ。
「そこまでだ貴様等! 私はレンリート伯爵領第3騎士団団長ドルファンである!! 双方剣を納めよ! 剣を納めよ!!」
そこに揃いの鎧を着た10数人の兵達が神兵を分け入って来た。その後ろにはシャルロッテさんとサージェス達も付いて来てる。
「きっ、騎士団っ! 騎士団!! 此奴等を殺せ! 教会の敵だ! 大罪人だ!!」
「黙れ」
ドスッ! 「グフッ!!」
騎士団を見て喚く神官をレイクが仰向けにして踏み付けた。
「あらあら、神聖教会ともあろうものが無様なものねえ。神罰でも下ったのかしら?」
シャルロッテさんが騎士団の前に出て神官、神兵を見下すような目で話していく。
「神罰だと! 神兵に手を掛けたんだぞ! 彼奴等こそ神罰が当たるべきだろ!!」
「「そうだそうだ!!」」「異端者を殺せ!」
「黙れ貴様等!! 話しが出来ん!!!」
騎士団が来た事で私達が攻撃出来ないと思ってるのかしらね? 神兵共が活気ついて騎士団長に一喝されたわ。て言うかシャルロッテさんを連れてる時点で此方の味方でしょ?
「聖女様のご意志こそが神の意思、碌な能力も持たない貴方達が神の寵愛を受ける聖女様より神の意思に近いなどと言う事はあり得ないでしょうに、何故聖女様の意に背くのかしら?」
「だっ、黙れ! 神聖教会の在り方に意を唱えるとは何という不信心者! 異端審問に掛けるまでもありません。殺ってしまいなさい!!」
「っこの異端者めっブフッ!!」
這いつくばったままの神官の声に応じてシャルロッテさんに斬り掛かった神兵を、レイクが剣を投擲して腹に突き刺さしそのまま吹き飛ばした。更に落ちていた剣2本を手に取りシャルロッテさんの所まで神兵を斬り捨てながら走り抜けていく。
「ぎゃっ!」「ひぐっ!!」「がふっ!!!」
一瞬で更に10人近くの神兵を斬り捨てるレイクの力に神官は再び言葉を無くしたみたい。味方の私でも思わず息を飲んでしまうくらいだから当然よね。
「シャルロッテ様、ご無事ですか」
「ええ、助かったわ」
シャルロッテさんは端正な顔立ちで怯えも見せずに微笑んで見せている。私でもちょっと引くのにやっぱりあの人の胆力は半端ないわね。
「シャルロッテ嬢、どうやって始末をつけるのだ?」
「今回の件はこちらのギルド長が画策したものですわ」
「何っ、何の事だ!!?」
サージェス達に引き摺られてるのが此処のギルド長かしらね。シャルロッテさんはギルド長を無視して下のロビーにいる傭兵達に顔を向ける。
「貴方達傭兵なら分かると思うけど、他の町の傭兵ギルドに比べて此処は待遇が悪いでしょ? それは別に街だからお金が掛かるとかではないのよ?」
突然話し掛けられた傭兵達は困惑しながらも話しを聞いている。
「冒険者に比べればそれでも高待遇だから文句は無かったのかも知れないけど、それがこのギルド長が私腹を肥やす為に使われた所為だとしたらどうかしら」
ざわざわ「どう言う事だよそれ?」「それ、マジなのか?」
「イヤでも、伯爵の騎士がいるし……」
「じゃあマジって事か? 立地が高いから金が足らないって聞いたのに」
「何だよそれ、どう言う事だよギルド長!」
「知らん! 俺は知らんぞ!!」
サージェス達に捕まってるギルド長がもがいているけどそんな言い訳通じないわよね。それを無視してシャルロッテさんは話しを続ける。
「それをレンリート伯爵に告発しようとした私達を殺害しようと神聖教会と手を組んだのが今回の顛末よ」
「でっ、出鱈目だ! 我が神聖教会は何も関係ない! 貴様ら神聖教会に手を出した事をそんな事で誤魔化せると思うなよ!!」
「此処のギルド長と神官の貴方にはレンリート伯爵領で裁判を受けて貰うわ。騎士団長」
「うむ、連行するぞ!」
「「「はっ!」」」
「私に触るな! 神聖教会が他の権力に屈する等あってはならんのだ!! おい貴様等っ、伯爵につけ込む隙を与えれば神聖教会でもタダでは済まんのだぞ! 奴等を皆殺しにするしか貴様等神兵共も生きる道は無いと分からんのか!!」
「黙らんか!! 言っておくがこの街に入ってるレンリート伯爵家の騎士団は此処にいるだけではないぞ! その全てを探し出して口封じするなど不可能だと思っておけ!!」
「「「………………」」」
「……誰も動かないわねー」
「神だ何だと言っても化けの皮が剥がれればこんなモンだろ」
「て言うかレイクが怖すぎるんでしょ。私でも無理よ」
その後、騎士団が指揮を取り場を終息させて行く。レイク達はそのままアイリスの部屋の警護に、ミリアーナも部屋に戻って行った。
レイク達の戦いに気圧されていたミリアーナだったが、何も知らずにスヤスヤ眠るアイリスを見てクスリと笑みが溢れる。
「人の気も知らないで、……って、まあ今回は私も見てただけだったし。他人の事は言えないか」
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