第005話 鍛練をするのじゃ!
翌朝早朝に目覚める。流石に寝てばかりだから目も覚めるか。体の調子を確かめる為に柔軟をしていく。
『うむ、良いぞ。柔軟体操は重要なのじゃ。もっと足を広げて身を屈めるのじゃ。まだまだ、そのままの姿勢を維持するのじゃ』
妹精霊の精霊剣が周りを飛び回りながら偉そうに指図してくる。ねぇねじゃないと分かっているけど微笑ましく思ってしまう。五月蝿いと思いつつも言われるままにやっていく、けど何か体が柔らかくなってるな。コレもコイツの調整ってヤツの成果か?
そうやってちょっと面白くなって続けてるけど…………長くない? 何時までやるんだよこれ? 大分疲れて来たぞ?
『まだ半分程じゃ。こうやって自分でも柔軟しておくと我の調整も早く進むのじゃ』
まあ、仕方ないか。実際体の調子も良くなってるしな。何より目が良くなったのは感謝するしかない。このくらいなら付き合ってやるさ。柔軟を終えるとじんわりと汗をかいていたからお湯を貰って体を拭いていく。
まだ夜が明けたばかりだ。早ければ昼前には応援が来るのかな。
「ふう、……寝よう」
『いやいや今起きたばかりじゃろ! これから剣の鍛練をするのじゃ!」
空中で地団駄を踏む妹精霊……器用だな。けど細剣に慣れる為にも仕方ないか。体の調子を確かめる為に少し走り込んでから剣を振るかな。
「ふふっ」
本格的に鍛練するなんて何年振りか、思わず笑みが出てしまった。村人に迷惑をかけないように足音に気を付けて村の外周を走って行く。
『ダッシュじゃ、止めなのじゃ、次は反復横跳びじゃ』
精霊剣に言われるがままに体を動かしていくけど、結構キツい。
「はあっ、はあっ、――コレ、本当に、意味があるのか?」
『当たり前なのじゃ。無意味な事をさせてどうするのじゃ。瞬発力と柔軟性、バランス感覚は戦闘において必須じゃぞ?』
1時間程走った後また妹精霊にガミガミ言われながら剣を振っていく。それにしても妹精霊とか精霊剣って言うのもな、お前名前無いのかよ。
『我は使い手次第で形を変えるからの。形状に合わない名前と言うのもあるでな?故に決まった名は無いのじゃ。そうじゃの、お主が名を付けるのが良かろう』
「俺が付けて良いのかよ」
『うむ、良いのじゃ』ワクワク
「………………………………思いつかない……」
『はあ!? いやお主っ、もうちょっと考えんか!!』がびーん!?
ぷんぷん怒る妹精霊。つまらない事言っちゃったな。変なプレッシャーを感じるぞ。
また汗だくになるまで剣を振って汗を拭う。汗をかくのが気持ち良いなんて感じるのは10代の頃以来だ。しかしこの精霊は突きに対してかなり厳しい。半分近く突きの練習に取られてしまった。
『それは今まで殆どやってこなかったからなのじゃ。突きは特に全くダメダメじゃったのじゃ』
細剣なんて初めて扱うからな。まあ誰かに指導を受けるってのも新鮮だし成長を実感出来るのも良いかな。それに剣相手なら気も使わんし。
「アイリスさん、また鍛練ですか? 本当に熱心ですね」
振り返ると村長が歩いて来た。探させたかな?
「以前冒険者の方が来た時は狩りに行く前から酒を飲んで騒いでいたのでどうしたものかと思っていましたが、人それぞれなのでしょうかね」
「……んっ」コクリ
まあ……そうだろうな。ただ冒険者ギルドは結果を残せば基本冒険者に不干渉だ。だから個人の評判を気にしない奴等が多い。結果トラブルを起こす奴等も多くなるんだけど。
傭兵ギルドは経過も重視する。過程でギルドの評判を落とすような事をすれば評価が落ちて良い仕事が貰えなくなるから真面目なのが多い、と思う。
「依頼するなら傭兵ギルドにって事ですかねえ?」
「どう……、かな?」コテン
俺が勧めて仕事が増えればギルドから評価されるかもだけど、後々トラブルになっても困るし言質は取らせられないな。
『………………小さいのう、考え過ぎじゃないかのう』
いやいや、それだけじゃないぞ? 傭兵ギルドはこの領に出来てまだ10年程度、大きな依頼を熟すには規模が小さ過ぎると言うのもあるんだよ。
汗をかいたから朝食の前に浴場で汗を流した。村長が着替えを置いてくれてたが明らかに大きい、これ村長のだろ。他に着替えが無いから仕方なく着て行くけど親の服を借りた子供みたいだ。
『正確に言うと父親の服を着た幼い娘なのじゃ』
――捨ててやろうかこの駄剣。
「どうぞ、朝食の用意が出来てますよ?」
今朝は早いからか夫婦で迎えられた。
「……服……大っきい」
「えっ? あっ、あの、アレは……実は妻の物でして……。その……女物なので、その……」
村長はあわあわしたように答える。俺に怒られると思ってるのか? 首を捻っていると奥さんの方は俺の表情を見て怒ってないって分かってるのかニコニコ微笑んでくる。
「んっ、これじゃ……戦えない」
手をパタパタさせるとまくった袖が伸びて手が完全に隠れてしまう。服がデカいアピールをしてたら何故か2人共顔を緩めてだらしない顔をした。
『萌えじゃな、……しかしだらしない顔って、他に表現ないんかの?』
駄剣が良く分からない事言ってる。
今日は場合によってはゴブリン狩りに出る事になるしサイズの合わない服じゃ防具が付け辛い、動きに支障が出るかもしれない。借りておいて不満を言うのは言い辛いけどな。
『そうでなくとも言葉足らずじゃろ』
「なっ、成る程。分かりました」
改めて奥さん、ユリカさんの服を借りて着替えてから朝食を貰う。まあそれでも大きいから捲って調整する必要があるけど。
けどユリカさん、俺に馴れ馴れし過ぎないか? 着替えくらい自分で出来るぞ? 娘が出来たみたいって誰がだよ。多分あんたと年そう変わらんぞ。
お茶を貰ってゆっくりしてると傭兵ギルドから人が来たと呼ばれた。村の中央、人集りの中に武器防具を身に纏ったのが10人くらい居た。その中に見知った顔の奴等も居る。ちゃんと傭兵ギルドに行けたみたいだ。
「…………エリック」
「……アイリス……か?」
「?」コテン
エリックは5年前に傭兵ギルドに誘ってくれた奴で、赤髪で190cmもあるガタイの良い優男だ。顔を知ってる筈なのに何故か疑問系で返して来た。
「いや、顔……って言うか、若返ってないか?」
「ん?」コテン
若返った? ……んん〜、ずっと寝てたからか? 町じゃ人間不信でずっと寝れずに寝不足だったし、見違える程疲れも溜まってたんだな。
「寝てたから……、万全?」コテリ
「……そう、か?」
「ん、……採取、依頼……」
「あっ、ああ、ちゃんと達成になってるぞ」
「そう」ニッコリ
良かった。
『………………』
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